【鄭南榕氏歿後35年の台湾の移行期正義】
台湾独立建国聯盟日本本部 中央委員 林省吾
4月7日は台湾独立建国運動家、鄭南榕(てい
なんよう)氏の命日である。
35年前のこの日、当時、台北市中山警察局刑事課のトップであった侯友宜(こう
ゆうぎ)氏は、鄭氏を「反乱犯」として強制逮捕するために、機動隊を鄭氏の出版社に突入させた。
鄭氏は自身をオフィス内に閉じ込め、ガソリンに火をつけ、焼身自殺し、中華民国独裁政権に対抗する犠牲者となった。
一方、ドイツは今でもナチスの犯行の追及が続いている。
2022年、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツの強制収容所で司令官の秘書だった97歳の女性に対し、ドイツの裁判所は一万人以上の殺人に関わった罪で有罪判決を言い渡した。
被告は組織の中の歯車のような役割にすぎない。
それでも法で裁かなければならないというのが、移行期正義のあるべき姿である。
侯友宜氏は鄭南榕氏の強制逮捕に関して、あくまで当時の法律に基づいた公務執行と主張している。
しかし、鄭氏が逮捕されないように焼身自殺を図るという情報を事前に把握していたにも関わらず、侯氏が機動隊を突入させたことは、公権力で一般市民を殺害したことに等しい。
ドイツの判決から見ると、間違いなく犯罪行為である。
しかも侯氏は幾度も公の場で「やり直しができても、同じ手段を取る」と断言し、反省するどころか、罪悪感のかけらも感じていない。
このような犯罪者が総統候補として出馬できるのは、台湾の司法制度の汚点である。
このように加害者の存在から目を逸らし、正義を無視し政治的な判断で犯罪者を逃すことは被害者への「二次犯罪」とさえ言える。
このケースのように、台湾の移行期正義は被害者の名誉回復などを行なったが、加害者への追及はしなかった。
これは逆に遺恨を残してしまうこととなり、台湾を二分化した溝の修復に大変多くの社会資源を導入せざるを得なくなる。
現政権がもし本当に台湾人アイデンティティを強化し、台湾を祖国と認める全ての人を真の台湾人としてまとめ、強固な台湾民族を実現したいのであれば、歴史から目を逸すことなく、政府の立場から加害者の存在を明記し、彼らの責任を追及しなければならない。
そうして初めて台湾にいる全ての民族が平等な立場で共存共栄を実現できるようになる。
台湾人アイデンティティを確立することは、実は中国の侵略に直面する際にも、台湾人が団結できるか否かの鍵になる。
2028年、台湾人は台湾人の候補者の中から総統を選ぶのか、それとも台湾人候補と中国人候補の対決になるのか。
選挙の観点からだけ見ても、移行期正義の完全実施は台湾の未来を左右する。
「残りはあなた達がやるべきことだ」鄭南榕氏が言い残したこの言葉を、台湾人は真剣に受け止めるべきである。
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