時局心話会代表 山本善心
06年10月、安倍元首相による「氷を割る」と銘打つ電撃訪問が行われ、
日中首脳の交流関係が復活した。そして08年6月、中国の胡錦涛国家主
席が来日、日中関係改善に向けて動き出したのである。胡主席は「日中友
好協会」での挨拶で「戦略的互恵関係を発展させたい」「中国の経済発展に
日本からODAと借款による協力をいただき、中国国民を代表して心から感
謝します」と述べた。
中曽根元首相が訪中した際にも、胡主席は「戦略的互恵関係を発展させ
たい」と発言、訪日前の08年5月には日本人記者団との会見で同内容を
強調した。胡主席は「国と国との関係でさまざまな問題、食い違いが生じる
のは正常であり、重要なのは関係発展の大局を守っていくことだ」と述べた。
これは江沢民前国家主席による「反日と感情的対立」の時代からの決別で
あり転換だ、と思わせるものだ。
中国が一番変化しつつあるのは、日中間の懸案事項である歴史認識問
題や靖国神社参拝問題に言及しなくなったことだ。それより「戦後の日本が
平和国家として歩んできた道を評価する」と述べている。中国の対日戦略
の変化の裏には国内事情があり、日本とのさらなる協調、共生関係が問わ
れていよう。
中国の経済発展に尽くした日本
今、中国人口の90%以上を占める貧困層にスポットが当たっている。彼
らの不平と不満は、年間85000件以上の暴動に表れていよう。これらを抑
制するための矛先が靖国であり反日だったとすれば、我が国にとってはな
はだ迷惑な話であった。中国はいつまでも政治的な小手先で日本を敵視す
る態度を改め、日本から受けた恩に報いるべきではなかろうか。
これまで、中国の経済建設やインフラなどの発展で最大に貢献したのは
日本であった。対中投資、技術協力、ODAによる援助が「世界の工場」とな
り、大量生産を成功させている。この30余年で日中貿易額は40倍超となり、
中国は米国を抜いて第1位の貿易相手国になった。
1978年10月、訪日した当時のケ小平副首相は、新幹線の車窓から見
る農村ののどかさと豊かさに驚いた。各農家のアンテナと車を見て「あれは
なんだ」と聞き、通訳は「各農家にはテレビと自動車がある」と答えた。この
訪日をきっかけに、ケ氏は日本に学び日本の農村をモデルとする「改革・開
放百年の大計」を打ち出し、経済改革を断行した。
窮地に立つ現実
この30年間で急激な成長を遂げた中国だが、外国から受ける援助金の
67%が日本からであった。一方、日本企業は安い労働力を求めて中国に
進出したが、一部がトラブルに巻き込まれて投資資金や技術、ノウハウを
吸い取られるケースもあった。今では人件費の高騰と物価高でビジネスメ
リットが少なく、中国からの撤退・移動が始まっている。
ここに来て中国では「世界の工場」神話が崩れ、2億人前後の農民工が
職場を奪われつつある。外資系企業も倒産・撤退が相次ぎ、至るところで
数千人規模の騒動が発生する始末である。しかも株価は3分の1に下落、
不動産市況も半分近い値下がり率だと聞く。
その後、中国は空気と水の汚染、環境破壊、農村の疲弊、官僚腐敗の蔓
延など、多くの問題を抱えている。中国は経済発展したものの、人間の暮ら
せる社会環境を破壊した。
中国は調和社会を目指す
1978年12月の中国共産党中央委員会総会で改革・開放政策が打ち出
されて以来、平均年9.8%前後の経済成長を遂げた。08年はGDPでドイ
ツを抜き、日米に次いで世界第3位となる。さらに外貨準備高も30年前の
1億ドルから2兆ドルに上昇した。そのツケが、中国全土に広がる環境汚染
である。
今後、経済発展にともなう格差拡大の矛盾は国民の根強い不満を生み、
民主化要求が高まるだろう。しかも中国は米国グローバル化の中にどっぷ
り浸かっており、そこから抜け出すのは容易ではない。ロシアのプーチン首
相も米国グローバル化に抵抗したが、海外投資資金の流出と株式市場の
一時停止を余儀なくされている。
現在の中国は、毛沢東やケ小平が理想とした「共通の平等」とは反対の
格差社会が加速している。とはいえ世界との協調や民主化ルールから離
脱して生きてはいけない。
日中間は一衣帯水
中国が当初から日本型国家運営に学び改革・開放のモデルとしたのは、
正しい選択といえよう。戦前の朝鮮や台湾は日本に統治されることで、イン
フラ、法治、規律、配給米などの社会基盤が確立した。韓国は日本なしで
も独自に発展できたというが、それなら今の方向とはまったく違ったものに
なったであろう。
国難の時代を迎えた胡主席が中国のリーダーとして、日本との関係を見
直すことが賢明だと考えるのは当たり前のことだ。胡主席は米国発グロー
バルから距離を置き、互恵と共存共栄を基軸とする日中関係に重きを置く
というものだ。
しかし日中間には2つの問題がある。1つは中国解放軍の動向だ。微笑
外交の裏で、10月から日中領海線上に中国軍艦艇が待機し、日本に向け
たミサイル基地を東ガス田区域に建設したとされている。山東省の沿海地
区では、OF−3A中距離弾道ミサイルが日本に向けて配備された。もう1つ
は自国の国益を考えず、弱腰交渉しかできない日本の政治・外交である。
中国の友人は「中国は賄賂政治家が横行するが、日本は売国政治家ばか
りだ」と言った。
日中の「戦略的互恵」関係
日中両国間には、食品の安全や反日デモ、歴史認識、東ガス田、尖閣諸
島などの問題が山積みしている。このような事態を招いたのは、日本の政
治と外交がすべてをあいまいにしてきたからだ。日本人はいつもあいまいだ
から、中国人は脅し・騙し・軽蔑の態度を取ってきたといえよう。
江沢民時代は歴史認識問題を再三持ち出し、日本が一方的に悪いと断
罪、謝罪と反省を繰り返し求めた。1998年に江氏が来日した際、当時の
小渕首相が共同宣言の中に歴任認識における謝罪文を明記せず、中国
側が反発した。
ところが先にあげた安倍首相の電撃訪中では、両首脳は一切この問題に
触れていない。胡主席は日本の世論や日中の未来志向に配慮し、建設的
な「戦略的互恵関係」にすべきだとの姿勢を示した。
手強さを増す中国外交
2006年の安倍・胡対談では、日中間に横たわる当面の具体的かつ実質
的な問題解決に向け、激しい議論のやりとりがあったという。しかし靖国問
題に関しては、双方の国内事情もあり、よい意味であいまいに決着した。
この会談を契機に、日中は関係修復に動きだした。しかし中国の微笑外
交が喧伝される一方、軍拡やチベット、ウイグル民族を抑圧する独裁体制
が変わることはなく、江沢民時代の反日歴史教科書もそのまま学校で使わ
れている。日本の世論は、中国の微笑外交が周辺諸国の警戒心を解こうと
するしたたかな戦略だと読み取っているようだ。一方、胡主席は台湾問題
で統一に触れず、経済拡大と安全保障相互不可侵協約の提案を行ってい
る。
何より大きく変わったのは、中国メディアによる報道姿勢である。「日本が
なければ改革・開放は大きく異なっていた」「1978年にケ小平氏は日本か
ら何を学んだか」(08.12.26 共産党機関紙)をはじめ、「日本は最大
の
援助国」「農村開発で日本が貢献」などと賛美する記事が目立ちはじめてい
るが、今までまったくなかったことだ。
中国の変革に目が離せない
しかしながら、戦略的な視点から長期的に見て、米中対決は不可欠だと
いう分析がある。中国の覇権主義、東アジア支配戦略には日本と台湾を取
り込む必要が生じる。しかし日本は戦略的に日米同盟を解消できないし、日
米関係は日本の生命線であり、より深い絆となっていこう。
日本は米国とともに、中国の民主化や経済発展に寄与してきたが、中国
国内でも民主化運動が活発になっている。度重なる暴動の矛先が、中国の
民主化、自由と人権、法治国家の方向に向かう可能性に期待したい。
胡主席は、食品や玩具などあらゆる不祥事に対し、改善と法規制を加え
ている。貧しい農村への補助金や法治重視に転換する政策も、強引に取ら
れているようだ。中国共産党によるメディア統制は厳しいが、一方でほころ
びつつあるのも確かといえよう。変わりゆく中国の「国際社会の基本的か
つ普遍的価値」の尊重に向けた変革から、目が離せない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◆◆◆◆◆平成21年2月4日「政民合同會議」ご案内◆◆◆◆◆◆
「かつての戦争は自衛か侵略か」
講師/田母神 俊雄氏 前航空幕僚長
2008年10月31日、民間の懸賞論文に応募した田母神氏の論文「日本
は侵略国家であったのか」が、政府見解と対立する内容であるとして問
題視され、幕僚長を更迭となった。田母神氏が参考人招致されるなど
異例の事態も招いたが、日本の「侵略」の実態を解き明かす上で大きな
一石を投じたことは間違いない。
今回、渦中の田母神氏に緊急講演をいただき、論文の真意や思うと
ころを存分に語っていただくことになった。絶対にお見逃しなく。
日 時/平成21年2月4日(水)
AM 11:50〜PM 1:30
会 場/参議院議員会館 1F「第2・3会議室」
参加費/4,000円(お弁当代含む)
お申込み先/�03-5832-7231またはメールshinwa@fides.dti.ne.jp
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【協力を】台湾正名・署名活動(第2期)を開始! [締切:3月31日]
1月23日に外国人登録証明書(外登証)正名の第二期署名を開始しました。
台湾人の国籍は「中国」ではなく「台湾」です! 法務省に外国人登録における国籍記載の修正を求めます。引き続きご協力ください!また運動の輪の拡大も!
■署名用紙のダウンロード
http://www.ritouki.jp/pdf/2008syomei.pdf
■オンライン署名にも
http://www.shomei.tv/project-670.html
↑第一期とは異なります。
〒102-0075 東京都千代田区三番町7-5-104 号 TEL: 03-5211-8838
E-mail:info@ritouki.jp HP:http://www.ritouki.jp/