S.A.(東京在住読者)
「AC通信」の賛否両論は、これからのアジアの将来の方向性を決める上で、大切な考え方を提示していると思います。
自身の考えの結論から先に言うと、基本的にはアンディ論に賛成です。
台湾を「現状維持」という常態にしておくというのは、明日・明後日という近未来には台湾人にとって安心材料かもしれませんが、それをいつまで続けるのか?という質問をしたら何と答えるのでしょうか。半永久的にとでも言うのですか?
「現状維持」は、台・中どちらにとっても同じ状態を維持するという前提条件の上でしか成り立たないのではありませんか?
中国は数年前と同じですか?昨日とまったく同じですか?それに対して台湾は手をこまねいて何の対策も講じなくてもいいのですか?
両者のバランスが崩れた時、現状維持は機能しなくなる。
私はその時期にすでに入っていると思います。ですから、まず台湾の「現状維持」という考え方には反対です。
アンディ論には賛成ですが、無条件に諸手をあげてというわけではありません。
氏の第四番目に掲げられている「台湾独立」は、急速にこの方向に動けば必ず台中間で戦争が起きるでしょう。
戦争を避けるための第一の防御が「外交」であるのは周知の通りです。最終的な目的は独立だったとしても、”外堀を埋めるようなやり方”をしないと、中国は武力に訴えるでしょう。
「三つの中国コミュニケ」をアメリカに捨てさせるという意見も、今は理想論の域かと思います。トランプという人物は、恐らく自分が気に入らないと思うこととか、それに代わるもっと素晴らしい「アメリカファースト」となるような条件を手に入れない限り、たとえアメリカがこれまで失敗したと思われる政策であっても「捨てる」という選択はしないかと思うからです。そうした深慮のできる大統領ではないと踏んでいます。
全面的にではなく、一部という条件つきで、「沖縄の米軍基地を台湾へ移設する」には賛成です。
南シナ海・東シナ海の問題の一番の骨子は、「中国を太平洋に進出させない」ことだと考えます。
島嶼に軍事基地をつくらせない、台湾〜沖縄にかけて自由に中国の軍船を航海させないという最終的な目的は、中国海軍を太平洋に出さないことかと思います。
その最前線にあって最も地政学上重要な国は台湾と日本です。
有事があれば、標的になるのは台湾だけでなく日本も同じです。
そして両国ともにアメリカの軍事力を当てにしなければならないとしたら、両国にアメリカの基地を設営しておくというのは有効な手段かと私は思います。
目下中国はスリランカやインドやパキスタンの海岸に盛んに「租借地」と称し、軍事拠点を設けようとしています。
「一帯一路」政策の一貫かと思いますが、もし、日本や台湾がこれからの近未来に「太平洋を舞台」として経済活動をしましょうという戦略をもったら、どうなるでしょう。落ち込む中東、ロシア、中国は蚊帳の外となり、太平洋の海洋諸国家はアメリカ〜西欧諸国を視野に入れた経済活動を展開できるでしょう。
そうすれば、自ずからTPPなどをつくらなくても中国を囲い込む(正しくは”囲いから追い出す”)こととなりましょう。
アンディ論と同じではありませんが、着想は似ているかもしれません。
しかるに現状維持を変えていくのは、中国の手法を見習わせていただくのがいいかと思います。その手法とは、トランプの言から発した言葉を一大チャンスとして、「少しづつ、少しづつ」ぬるま湯につかった蛙のように。いつか茹で上がるように。