台湾独立建国聯盟日本本部委員長 王明理
昨日(2012年10月17日)付の産経新聞「正論」の「日本軍と戦わない屈折が反日に」と題する論のなかで古田博司筑波大学大学院教授が述べている「台湾人の親日感情」について、一言申し上げたい。読者に台湾人に対してまちがった認識を持っていただきたくないからである。
古田教授は「日本が敗戦したのは国民党の中華民国であって、共産党の中華人民共和国ではない。私は東京裁判自体は正しいものだとは思わないが、戦勝国として戦犯たちに臨んだことは、台湾住民に勝利の記憶を残したことであろう。この記憶が、台湾人の心をすっきりさせている。だから、彼らは反日である必要性を持たない。今日に至るまで親日だ。」と述べているが、
忘れてならないのは、台湾住民は戦争中、日本兵として中国軍と戦い、戦後、日本兵として裁判にかけられ、B・C級戦犯として173人が長期刑に服したという事実である。(特に軍の最末端にいたが為に多くの俘虜と関わった彼らは、告発を受けやすい立場にあった。)
戦勝国となった中国国民党と台湾住民を同一に考えるのは間違いである。
台湾人は、戦争中の日本国籍を理由に戦犯として裁かれる一方で、戦後、日本国籍を剥奪されたために、日本から、遺族年金や恩給などの補償の対象にはならないと切り捨てられた。(「台湾人元日本兵の補償問題を考える会」の活動の結果、1987年「台湾住民である戦没者遺族等に対する弔慰金に関する法律」が成立し、一人200万円の弔慰金が支給された)
戦後、台湾を支配した中国国民党(中華民国)は戦争中は敵国であったわけで、台湾人は処世術として、日本兵であったことを隠すように生きてきたのである。38年続いた言論の自由のない戒厳令下で、不平を言うこともできなかった。
二重、三重の悲劇を背負った台湾人の心は、今もってすっきりしているとは言えない。それでもなお親日でありつづける台湾人、その心の悲哀を理解しなければ、本当の台湾は見えてこないだろう。