西村眞悟
このごろ、首相補佐官が「法的安定性」に関して何か言ったと野党が五月蠅い(七
月蠅い)。
何を言ったのか、と思っていたら、
おおよそ、国を守ることの方が法的安定性を守ることより大事だ、と言ったよう
だ。
あたりまえではないか。その通り。
そやけどなあ、もう少し、アホに分かるように言っておればよかったなあ、と
言っておこうか。
従来の社会党的な法的安定性を守れば、
国家と国民を守ることができなくなる、とか。
しかし、当たり前のことを言ったのだから、堂々と弁明するべきは当然である。
幸い、参議院の特別委員会でその機会が与えられるようではないか。
鴻池委員長、その際は、果敢な采配を頼むよ。
委員会は、アホの質問者によるプロパガンダの場ではないのだから。
従来の社会党的な法的安定性が、この先、守られ続ければ大変である。国が滅ぼ
される。
社会党的な法的安定性とは、
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼すれば」(憲法前文)平和だという安
定性。
「憲法九条があるから平和が続く」という安定性。
この安定性のなかで、北朝鮮はやりたい放題、日本人を拉致した。
この安定性のなかで、今の野党の幹部連中は、拉致された日本人の救出問題に蓋
をしていた。
この安定性を守るために、拉致被害者救出と尖閣防衛が、国防問題であるという
本質が無視された。
さて、前回、言い残したことを言っておく。
(1)我が国は自衛権を保有している。従って、それを行使し得る。
(2)その自衛権には、個別的自衛権と集団的自衛権がある。
(3)自衛隊は自衛権を行使する組織であり、内閣総理大臣がその最高指揮官であ
る。
(4)自衛権を行使する自衛隊は、国際の法規および慣例に従ってそれを行使す
る。
以上の四つの項目の内、(4)についてもう少し述べたい。
つまり、自衛権を行使する自衛隊は、国際の法規および慣例に従うのであるが、
国内法との関係は如何にということである。
それは、ネガリストの関係に立つ。
つまり、自衛隊は、法律で明確に禁止されていること以外は、総て行使し得るの
が原則となる。
これに対して、警察はポジリストで動く。
つまり、警察は法律で規定されていることだけができて、規定されていないこと
はできない。
我が国の国防に関する議論の錯綜は、
ネガリストで運用すべき自衛隊を、
警察と同じポジリストで運用しようとしているところからもたらされる。
「国家と国家」もしくは「国家と非国家組織(例えば国際テロ組織)」の間に
は、
法律はないのである。
かろうじてあるのは、国際の法規及び慣例だけである。
テロ組織との間にはこれもない。
そして、自衛隊が運用される国防という事態は、まさにこの分野である。
従って、自衛隊はネガリストで運用されることになる。
領土を奪いにくる国家に対して、
国民を奪いにくる国家に対して、
国民を殺そうとするテロ組織に対して、
彼らを撃退して国家と国民を守るのが国防つまり自衛権発動の分野であり、
この分野に両者を律する法律はなく、自衛隊はネガリストで運用される。
従って、この分野には法的安定性の概念自体がないのである。