【良書紹介】浅野和生編著『日台関係と日中関係 日中国交正常化を見直す』
(展転社)
宮崎正弘
平成国際大学教授の浅野さんは数少ない台湾ウォッチャーである。その浅野教授が研究会の成果として世に問うのが本書だが、尾崎萼堂のシナ征伐論の分析がなされていたり、独自で新鮮な論文が五つ詰まっている。
なかでも白眉は台湾監察院の研究である。
中華民国というのは五権体制。日本は三権分立が建前だが、司法の左傾化は蔽いがたい、立法府と行政府は必ずしも独立関係ではなく、官僚支配が存在する。
この中華民国独特のシステムである「監察院」にメスを入れた珍しい研究論文が最後に含まれていて興味深い。
浅野教授は言う。
「中華民国憲法は本来、大陸と台湾を包含する大中国を統治するために制定されてものである。しかし、国共内戦の結果として、中華民国の実態は大幅に縮小され、憲法と現実とに大きなずれが生じることになり、その後の民主改革とともに憲法修正が繰り返された。」
それゆえに「監察院に焦点を当てながら、中華民国憲法の変遷を説明し、その意味での中華民国の台湾化の過程」(浅野教授)を独自な視点から紹介している。
台湾研究者には欠かせない書物となった。