【産経主張】安保法衆院通過 日本の守り向上へ前進だ

【産経主張】安保法衆院通過 日本の守り向上へ前進だ 国民の理解深める努力尽くせ

2015年7月17日産経新聞

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【編集長の一言】

我々は安全保障関連法案の通過を歓迎する。

これは日本が東アジアの安全を守る第一歩であり、責任ある国としての当然な責務である。

 「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)

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 日本の安全と国民の平穏な暮らしを守るには、同盟国である米国や他の友好国との協力が以前にも増して必要な時代になった。

 その態勢を早急に整えることは国政の最重要課題であり、集団的自衛権の限定行使容認を柱とする安全保障関連法案の衆院通過は、大きな前進といえる。

 戦争を未然に防ぎ、国や国民を守り抜くための審議を参院でも重ね、今国会で確実に法案を成立させる必要がある。

 衆院本会議で与党の自民、公明両党に加えて次世代の党も法案に賛成した。衆院の3分の2超を占めた意味は大きい。

 ≪無為無策は平和損なう≫

 野党側では民主、維新、共産など5党が抵抗戦術の一環で採決に加わらなかった。参院での審議を拒むなどの行動はとらず、論戦を通じて安保法制のあるべき姿を追求してもらいたい。

 安倍晋三首相は衆院通過を受け「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。絶対に必要な法案だ」と語った。

 法案に対し、野党側は当初から「憲法9条に反する」「戦争を招き寄せる」など的外れな激しい批判を浴びせてきた。日本の領土、主権を中国が脅かしている現実を正視せず、なぜ日本が抑止力を高める必要があるかを重視しない姿勢が垣間見える。

 安全保障は人気取りの政策ではなく、むしろ国民の反発も受けやすいテーマだ。それでも政府与党が法案成立を図ろうとするのは、それが国民に対する責務だと位置付けているからだ。「戦争法案」などレッテル貼りに力点を置く野党との決定的な違いといえる。

 戦後日本の平和は、憲法9条があったから守られたのでは決してない。自衛隊と、日米安保条約に基づく米軍の存在が抑止力となり、戦争を遠ざけてきた。

 だが、この平和をもたらした基本構造が、近年の安全保障環境の悪化で揺らいでいる。日本が無為無策のままでは、危機が到来する恐れが出てきたのである。

 最も大きな悪化要因は中国の軍事力拡張、軍事的台頭だ。周辺国との領土問題を抱える南シナ海で岩礁を埋め立て、軍事基地の建設を一方的に進めている。国際ルール無視の「力による現状変更」の典型である。

 中国は眼前の脅威でもある。東シナ海で尖閣諸島を狙っている。日中中間線付近のガス田では、日本の抗議を無視して海洋プラットホームを急造しており、軍事使用の懸念がある。南シナ海の二の舞いになりかねない。

 もう一つは、米国の相対的な衰退と内向き志向だ。オバマ大統領はアジア太平洋重視のリバランス(再均衡)政策を掲げ、尖閣諸島は日米安保条約の適用対象だと明言している。だが、米国が「世界の警察官」であることを否定し、国防費を削減するなど不安定さがある。

 ≪眼前の脅威を直視せよ≫

 このような情勢にどう対応すべきか。軍事大国化を意味する日本単独の防衛政策をとらない以上、答えは一つしかない。

 法案を成立させ、集団的自衛権の限定行使容認や重要影響事態における後方支援、国際平和協力活動の充実により、日米同盟や友好国との絆を強める方策である。4月の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定もその一環だ。

 審議の舞台が参院に移ってからも、政府与党はなぜ安保関連法制の整備が必要かについて、国会の内外で国民への丁寧な説明を尽くす必要がある。

 衆院段階で、その努力が足りなかった点は否めない。審議の足を引っ張る与党議員の発言などが繰り返されてはならない。

 とりわけ、現実の危機とそれへの対応を具体的に説くことが欠かせない。北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威を語るのと同程度に、中国の問題を指摘しなければ、世論の理解は深まるまい。

 野党側の議論は、数十年も前の安保環境の下での憲法解釈にかなり拘泥している。自衛隊の行動にいかに「歯止め」をかけるかが最大の論点となり、政府もその土俵で議論している。日本への挑発を重ねる国や勢力を喜ばせるだけではないか。

 衆院での野党議員の質問で、法案はミサイル防衛の強化にうまく対応していないとの問題提起があった。実際に日本の守りに資する議論をもっと聞きたい。


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