2014.10.25 産経新聞
中国共産党は、北京での中央委員会第4回総会(4中総会)で、「法に基づく統治(法治)の強化」などを盛り込んだ決定を採択し閉幕した。
中国独特の法体系の下でも、13億人の国民に法が平等に適用されるならば、一歩前進だ。これまでは有力者の影響で法が恣意(しい)的に用いられ、社会をゆがめてきたからだ。
しかし、そもそも中国が抱える根本的な問題は、党が法の上にあることだ。
中国では、法の支配に名を借りた強権支配が一段と強まっている。新疆ウイグル自治区の人権状況改善を訴えた穏健派のウイグル族学者に「国家分裂罪」で無期懲役の判決が下された。インターネットで体制を批判した知識人は、81歳の高齢者まで容赦なく逮捕されるなど弾圧が目立っている。
中国市場に進出した外国企業も新たな独占禁止法の運用で巨額の罰金を徴収されている。優位に立つ外資に対する締め付けとみられるが、これも法律の名の下で正当化されている。
中国は三権分立による権力の相互チェックを認めていない。大会後のコミュニケは「党の指導が法治の最も根源的な保証となる」とし、党の指導の重要性を繰り返し強調した。これでは、一党独裁を続けるために法治を掲げていると言わざるを得ない。
香港の「一国二制度」のあり方をめぐって民主化デモを続ける学生たちと当局の対立も、まさに同じところに問題の根がある。
コミュニケは、「法律に基づき『一国二制度』を保証し、香港の長期の繁栄と安定を維持する」としているが、香港当局と中国の行動は、これに反している。
中国が1997年の香港返還で約束した「一国二制度」では、「高度な自治」が保証されなければならない。
「市民指名」による候補者擁立を求めてデモを続ける学生たちと香港政府の対話も実現したが、政府側は「香港基本法」を盾に歩み寄りを拒否した。中国流の法治を口実に歩み寄りを拒否するなら、最初から対話の意味はない。
中国は国際的な公約を反故(ほご)にしようとしていると非難されてもやむを得ないだろう。
中国では天安門事件から政治改革が先送りされてきた。このままでは中国での法治は強権支配を補強するだけに終わってしまう。