ブログ「台湾は日本の生命線」より。
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■「台湾は中国の一部」という虚構に立つ報道
台湾の国営通信社、中央社の日本語サイト「中央社フォーカス台湾」は、日本人には有用な台湾情報の収集源になっているが、その報道をどこまで信頼していいのか、時々不安になる。
その配信記事が中国を、「中国」との国名ではなく、「中国大陸」と呼んでいるからだ。要するに「一つの中国」(台湾は中国の一部)との虚構のプロパガンダに立脚しているのである。
この呼称を見て違和感を思えない日本人は少なくあるまい(いや、もしかしたら、ほとんどがそうかも知れない)。それは日本人がみな多かれ少なかれ、こうしたプロパガンダで洗脳されているからである。
国際法的に見て、台湾は中国に帰属しないし、今後も帰属しなければならない理由などない。それであるのに民主国家の国営通信社である中央社は、なぜこのような誤った表現を繰り返すのだろう。
それは国民党政権の指示を受けているからだ。
二〇〇八年、国民党政権がに発足すると、総統府や行政院はただちに、プレスリリースや公文書において、中国を「中国大陸」「大陸」と呼称することを決めたのである。
■「中国大陸」の呼称は中国との妥協の産物
それ以前の民進党政権は、台湾と中国は「一辺一国」(それぞれ異なる主権国家)だと主張し、「一つの中国」(台湾は中国の一部)なる虚構を掲げる中国との間で緊張を高めながらも、中国を「中国」と国名で呼んで来たのだが、が国民党は「一つの中国」を受け入れ、「中国と和解するため」などとして、このように呼称を改めてしまったのである。
それについて当時の欧鴻錬・外交部長(外相)は次のように説明していた。
「中華民国側が対岸を『中華人民共和国』と呼んでしまえば『一辺一国』になってしまう。『中国大陸』と呼べば、対岸も受け入れることができる」
つまり台湾側が中国を国名で呼べば、中国を別の国扱いすることになり、中国の機嫌を損ねるからよろしくないというわけだ。そもそも台湾にとって中国との「和解」など、暴力団の威圧に屈した市民が行う「妥協」「譲歩」のようなものなのである。
もちろん国民党自身も、もともと中国を自分たちが統治すべき領土とする建前を持ち、「中国大陸」の呼称は都合が好い。
このように、実に馬鹿げた話である。
「大陸」に改めよとの通達を受けた中央社は、当初はそれに従わず、馬英九総統が「大陸」と発言しても、あえて「中国」と書き換えるなどの抵抗を見せていたのだが…。
■中国に脅える日本メディアも「中国大陸」と
ところで日本のメディアでも、台湾に対して中国を「中国大陸」「中国本土」と呼ぶケースが、一昔前に比べれば大きく減少はしたが、しかしいまだときどき見られるのだ。
理由はもちろん、中国から「一つの中国・一つの台湾」の謀略に加担するのか、と批判されるのを恐れているからだろう。
しかしこうした誤報が、「台湾は中国の一部」という国共両党の虚構宣伝を、日本人に押し付けることになるのだから、事は深刻である。
私がよく憶えている一つに、二〇一二年六月に放送されたBS朝日の報道番組「世界は今」のケースがある。
台湾を話題にする際にキャスター二人が、出演者が台湾を国家と位置付ける発言をしないよう過剰に注意を払う一方で、本人たちは中国を「中国大陸」「中国本土」と連呼していた。
まるで番組が中国の審査を受けているかのように。
■BS朝日は反省したが産経はいまも「中国大陸」
それを見ていた私は、ただちに番組に電話で抗議を行い、また全国にもそれを呼び掛けた。
その結果、BS朝日は社の見解として「台湾を中国の一部とは考えていない」と表明した。
そして翌週の同番組で二人は、台湾に対して中国を「中国」と呼び変えた。番組審査部長によれば、「プロデューサーに注意した。それでそう呼ぶのを控えたのだろう」とのことだった。
このようにBS朝日は潔く反省し、自ら報道の改善を図ったのだが、もう一つ、しばしば「中国大陸」を用い続けるのが産経新聞だ。
最近では、本ブログ既報の通り、九月二十一日に配信した「台胞証」(中国が台湾人に交付する中国国内への通行証。台湾を香港と同列視するのが問題)に関する報道で、その呼称が使われたが、それに引き続き十月十日配信の台湾総統選挙関連の報道(「民進党、政権奪回へ着々布石」)でも再び、下記のように用いられた。
「国民党は30日、中国大陸で経済活動に従事する台湾人約800人を集め、洪氏や立法委員(国会議員に相当)の候補者を支援する後援会の結成式典を開催。馬英九総統(65)や朱主席が相次いで支持を訴えた」
「馬総統と王院長の対立が、遠く離れた中国大陸にいる支持者にまで深い溝を生んでいることを如実に示す一面となった」
なぜ「中国」に、このようにわざわざ「大陸」と付けなくてはならないのか。
■国内では信頼される産経の「台湾報道」だが
以前私が産経の読者サービスセンターに、同紙が使用した「中国大陸」との呼称が誤りであることを指摘した時、先方は即座にそれを認め、「きっと記者の筆が滑ったのだろう。担当者に伝えておく」と言っていたが、ここまで来ると、もはや筆が滑る滑らないの問題ではないようだ。
これはあくまで私の印象だが、産経が近年になり、こうした呼称を多用するようになったのは、国民党政権発足以降のことではないだろうか。
少なくとも民進党政権時代は、そうした書き方をほとんどしていなかったように記憶する。
つまり産経の場合、中国ではなく国民党への配慮で、まるでその指示を受けたかのように、「中国大陸」と連呼している感じなのだ。
産経が反共独裁時代の国民党と良好な関係を維持していたのは有名だが、同党が媚中傀儡路線に転じた今でもタッグを組み、その宣伝代行を務めているとなると、その台湾報道も怪しいものになってきそうだ。
中国から「日本右翼媒体」と批判されるなど、中国に媚びぬ姿勢で知られる産経新聞。国内ではだからこそ、その台湾報道には信頼が集まっているのだが…。