【格差拡大と主権喪失】馬英九総統が就任3周年
台湾の声
5月20日、台湾の馬英九総統(大統領)が就任3周年を迎え、任期が残り1年
をきった。馬総統は就任後、「中華民国」の主権が台湾と“大陸”(中国)に及
ぶという虚構を復活させ、自らが“中華民族”であることを強調して中国に擦り
寄り、関係強化に取り組んだ。その結果、中国との定期直行便が実現したほか、
貿易自由化を進める両岸経済協力枠組協定(ECFA)が締結され、中国の同意をと
りつけて世界保健機関(WHO)にオブザーバー参加が一応実現した。
これまで台湾は外交面で「台湾は中国の一部」と主張する中国に妨害され続け
、国連に加盟できず、国際会議等からも排除されることが多かった。民進党前政
権は、「台湾」名義で国連加盟申請するなど台湾が中国でないことを明確に主張
することで国際社会の理解を求めたが、中国の妨害が続く中、道半ばで政権交代
した。
これに対して馬総統の国民党現政権は、先に中国“大陸”と取引して、国かど
うかを曖昧にする形で国際機関にオブザーバー参加する手法をとった。台湾側が
「中華台北」と翻訳する「Chinese
Taipei」(実際の英語の意味は“中国領台北”)の名義でWHO総会に参加したが、
その後WHOの内部文書で「Taiwan Province
of China」(中国台湾省)と表記するようになっていたことが発覚し、馬政権が
今月慌てて抗議したように、根本的な解決には程遠い状況である。
民進党の世論調査によると、馬総統の施政満足度が39.3%であるのに対し、不
満は53.5%に達した。馬政権への不満は、台湾→中華台北→中国台湾省へとなり
かねない対中政策のほかにも、経済政策の面で、中国進出している大企業優遇政
策で経済成長の成果が中小企業に行き渡らず、失業率の高止まり、中下層の所得
低下、貧富の格差の拡大などの不満が高まっている。また、建設中の第4原発な
どエネルギー政策の方向性なども争点となっている。再選を目指す馬総統から民
進党が政権を取り返すには、総統候補となった蔡英文主席が馬政権の問題点を改
善する対案を打ち出せるかどうかがカギとなりどうだ。