政府は十二月十一日、十四日来日する中国の習近平国家副主席が、十五日に天
皇陛下に会見すると発表した。外国要人が天皇陛下との会見を望む場合には、一ヵ月前
までに文書で正式に申し込むという確立した「一ヵ月ルール」が存在する。それを破っ
て行われようとする今回の会見は、鳩山首相自らこのルールを破り、中国側の強い要請
を受けて現政府が政治主導で実現しようとする異例な措置である。
この特例措置について、鳩山首相は、「一ヵ月ルール」を「しゃくし定規で駄
目だというようなことで国際親善の意味で正しいのか」と疑問を呈し、今回は「政治利
用という言葉は当たらない」と発言した。はたして今回の措置は、そう断言できるのか
。
中国からの要請は十一月二十六日とされており、日本外務省は「一ヵ月ルール
」を理由に会見を断った。しかし中国側は納得せず「習副主席訪日の成否がかかってい
る」となおも会見を要求し、首相は、会見の実現に向け平野官房長官を通じて、宮内庁
側に「日中関係の重要性」の一点張りで会見を求めたとされる(羽毛田長官の発言)。
国際親善のみが目的なら、常識的に考えてこのような要求を強引にするであろうか。「
訪日の成否がかかっている」とまでいうのは、何らかの政治的意図があるからこその中
国の強引な要求であり、それを敢えて官邸が受け入れた「政治判断」もまた、天皇会見
の「政治利用」にほかならない。
従来、現実の国際政治を超えたところで行われる皇室の友好親善は、国の大小に
関わらず、公平平等に行われてきた。また、この「一ヵ月ルール」は、ご多忙な中で準
備をなされなければならない天皇陛下の健康面を配慮して、前立腺がんの摘出手術を受
けられた後の平成十六年以降、世界の国々の理解のもと、厳格に運用してきたものであ
る。一度でも、中国のみへの特例を認めることになれば、他の国々から同様の要求がな
された場合、政府はどのように対応するのか。その度に、陛下にご負担をおかけするの
か。
天皇陛下は、外国ご訪問や外国要人とのご会見にあたっては、細心の準備で臨
まれ、相手国との友好親善を図ってこられた。こうしたご努力を通して世界各国の友好
親善が大きく進展してきたことは周知の事実である。
今回の政府の行為は、強引な中国政府の要求をルールを破って唯々諾々と受け入
れ、陛下のご健康を顧みず、これまでの天皇陛下の国際親善へのご努力を軽んじ、天皇
陛下を「政治利用」しようとする以外のなにものでもないと断ぜざるを得ない。
ここに我々は、政府に強く抗議するとともに、直ちに会見の白紙撤回を求める
ものである。
平成二十一年十二月十四日
日本会議国会議員懇談会 会長 平沼赳夫
日 本 会 議 会長 三好 達