【日本人も知るべき台湾の現状と未来】李登輝氏が語る台湾(下)

【日本人も知るべき台湾の現状と未来】李登輝氏が語る台湾(下)

ブログ「台湾は日本の生命線」より。ブログでは関連写真も↓
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六月十七日に台北教育大学台湾文化研究所が主催した人権関連の講演会で講演を行った李登輝元総統。前半では今回、外来政権が続いた台湾で、国民党支配にピリオドを打った蔡英文総統の就任の意義が語られたが、後半は今後の台湾の在り方についてだ。これまで外来支配下での「台湾人に生まれた悲哀」を強調して来た李登輝氏。「悲哀」を「幸福」に変えるべき時代が到来したと語っている。

中国の脅威に曝されながら、台湾はいかなる道を歩むべきなのか。

台湾人の間では国民党政権下で扶植された中国人意識が克服され、台湾人意識が広がりを見せているわけだが、しかし、次のようにも話すのである。

―――最近の各種の世論調査によれば、台湾人との自覚を持つ者や、台湾人であると否定しない者の数がどんどん増えているのがわかる。だが残念なことに、多くの有権者によって淘汰された政治家達は、政治的手段によって社会のまとまりを切り裂き、国家アイデンティティの問題で混乱を生じさせようとしてきた。

―――彼らは独裁時代と同様の大中国意識の政権を利用し、すでに民主化、台湾本土化された現代台湾を転覆させようとした。最近でも、たとえば一部の政治家、学者、メディアは、もともと存在もしない九二年合意を蔡英文に強要したがる中国と歩調を合わせ、「一つの中国」の枠組みの中に台湾の民主主義を閉じ込めようとしている。

これはいうまでもなく、馬英九前総統に代表される在台中国人主導の国民党勢力のことだ。台湾の民主化(台湾の民を主とする)とは台湾本土化を意味するが、それを阻止し、中国と提携してでも台湾を再び中国化しようと狂奔したのが、二〇〇〇年に李登輝氏が党主席を退いた後の国民党だった。

―――中国人の特色は「一つの中国」という歴史概念を持つこと。五千年来、一定の空間、時間に封鎖され中の王朝の連結体で、歴代皇帝の大部分が力を入れたのは権力の確保と国土の拡大、そして財産の搾取だけで、政治改革に努力することは稀だった。

―――これが所謂「アジアの価値観」だ。帝王統治を全体的にみると、疑いなくドの王朝も託古改制という遊びを楽しんできた。

―――この「託古改制」とは、実際には「託古不改制」。そこで私は「脱古改新」という新しい考えを提唱し、それを改革の指針として来た。その目的は「託古改制」の余毒であるアジアの価値観を断ち切り、「一つの中国」「中国法統」というものから脱却することにある。

以上のように李登輝氏が訴えるのは、国民党が台湾へ持ち込んだ中国の腐敗、停滞の政治文化からの台湾人の脱却である。

―――現在八割の国民は台湾と中国との現状維持を望んでいるとされるが、それではその台湾の現状とは何なのか。それは台湾が中国に隷属せず独立した状態であるということ。台湾の中華民国が中華人民共和国とは別個の存在であるということだ。

―――台湾という名で存在できることこそ、唯一の重点だ。更に言えば、実際に私は「台湾独立」を主張したことがない。なぜなら台湾はすでに実質的には独立しているからだ。わざわざ「独立」と発言して国際社会で論争を惹き起す必要はない。独立か否かは神学論争であって、意味がないばかりか、人々を二分し、対立を激化させるだけだ。

台湾と中国を別個の存在であるとの現実を強調して来た李登輝氏は、中国からは「台独の広告塔」などと痛罵されてきたが、実際には上述の理由で「台独」を口にしたことがないと言っている。李登輝氏が「台独」の代わりに主張して来たのは「国家正常化」だ。外来の中華民国憲法を捨てて台湾独自の台湾国憲法を作り、台湾国という台湾人国家を樹立するとの正名制憲の主張である。

―――台湾人民が先ず行うべきは台湾へのアイデンティティを強化することだ。そうした新しい基礎の上で初めて、民主主義でエスニックグループ間の対立を解消させることができる。反民主の政治家たちも好き勝手に煽情することができなくなり、覇権志向の大中国主義にも付け入る隙を与えることがなくなる。

―――将来、台湾は正常な民主国家になり、一流国家の仲間入りを果たせるかどうかの鍵は、新時代の台湾人の意識を強化する工作が成功するかどうかだ。それはまた、台湾というこの土地を愛する人、台湾を優先する人、民主台湾の価値を認める人こそが新時代の台湾人であり、これからの台湾が必要とする人々だと言うことでもある。

―――そして国家の改革を成功させるには、若者の参与が必要だ。若者の未来が国家の希望であり、若者が困難に見舞われることは国家社会の危機を意味する。

―――私の生命の歩みにおける目標意識は明確であり、目標に向かって前進しているところだ。台湾が外来政権の統治から解放され、自由な国へと邁進してほしい。台湾人に生まれた悲哀」を「台湾人に生まれた幸福」に変えることが私の人生の目標である。

台湾のためにひたすら力を尽くし続ける李登輝氏の姿には感銘を受けざるを得ない。思わず台湾に幸あれと祈りたくなる。

これまで李登輝氏の日本に向けた著書や講演で激励され、日本人としての自信と誇りを取り戻したものは少なくないはずだ。そのような得難き学恩に報いるためにも、日本人は台湾の新たな国家作りをも応援して行くべきではないかと思うのだ。


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