書名:日本と中国はまったく違います
台湾人記者の駐日40年
著者:張茂森/著
価格:1400円+税
発行日:2019年12月31日
ISBN:9784819113793
発行:産経新聞出版
著者の張茂森(ちょう・もしん)氏は、1948年生まれ。「中国時報」記者を経て、79年に妻と子を連れて京都大学へ留学。いったん帰国した後で再来日し、「台湾日報」、「自由時報」のそれぞれ初代駐日特派員を務め、2018年からは「民視(フォルモサ・テレビ)」の初代駐日特派員を務めている。日本を最も深く報道する第一人者である。
この本は現場主義を貫いた著者の半生伝でもあり、日本の心と台湾の心が触れあい、響きあう現場からの証言でもある。災害時における両国民の助け合いの循環。紆余曲折を経て実現した李登輝元総統の来日。台湾少年工が60年待ち続けた名誉を取り戻した経緯が詳細にレポートされている。
また台湾の今とm在日台湾人および台湾をサポートする日本人の動きを伝える、他に例を見ない書籍でもある。蒋介石父子による独裁から民主化に至る実態。中国政府の影響に晒されている現在の台湾メディアの課題について明らかにしている。
著者は世界の中における日本と台湾の特別な絆についても具体例を通じて考察し、台湾人が日本が好きで中国が嫌いな理由を明らかにしている。また台湾人にとっての靖国神社とは何であるのか、元総統・李登輝氏と立法委員・高金素梅氏の例を通じて浮き彫りにした。
著者は単に出来事を伝えるのみならず、両国民の心の中にある思いを表現する手助けもした。総統の地位にのぼりつめた李登輝氏と、旧制台北(たいほく)高校の同窓である日本人たちの再会。当時103歳だった、きんさん・ぎんさんの訪台。令和元年の即位の礼にあたって台湾国民から、昭和天皇ゆかりの桜・竹・ガジュマルが送られることになった背景には、著者の地道な取材による知識と人脈、そしてアイデアがある。
著者の留学生活は必ずしも順調ではなかったが、著者を助ける日本人もいた。著者がその後、日本と台湾の架け橋となったのは、そんな経験があったからであろう。
日本の海外修学旅行先として台湾は首位に立ち、日本人の年間訪台旅客数も200万人を突破したが、この本なしの台湾理解はありえない。この本の台湾版、『採訪者之眼:目撃台日近代關係史』(前衛出版社)も読んでみたい。
ひたむきな著者の生きざまに敬意を持つとともに、日本人として台湾人のために何が出来るのか考えさせられた。
評者:多田 恵(メールマガジン『台湾の声』編集部)
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