なおブログでは読売が掲載した地図の写真が掲載されている。
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「誤報」訂正を拒否した読売は中国統制下
―ウイグル報道での「台湾入り中国地図」が意味するもの
■無批判に報じてはならない中国の主張
読売新聞(七月八日)は国際面で「民族分裂行動」と非難”と題する記事を掲載、人民日報が七日、ウイグルでの騒乱を「民族分裂行動」と位置付け、徹底鎮圧する方針を宣言したと報じた。
人民日報の狙いは一目瞭然。騒乱をウイグル人の民族分裂主義者、つまり中国からの分離独立を目指して国内の治安を著しく乱す悪勢力の仕業とし、それを鎮圧する政府の正当性、そしてその鎮圧が国際社会の介入を許してはならない中国の国内問題だと強調宣伝することにある。
だから海外のメディアは、こうした宣伝工作を取り上げる際は細心の注意が必要なのだ。
もし無批判にそれを引用してしまえば(論評抜きの客観報道を行えば)、世界の人々は多かれ少なかれ中国の印象操作を被ることになってしまう。つまりそれだけで、あの国の対外宣伝工作の代行を行うことになってしまうと言う仕組みになっているのだ。
ではこの読売の記事はどうなのか。たしかに中国政府のウイグル人に対する強圧姿勢を伝えてはいるが、問題はその背景の説明だ。次のようにも書いている。
―――胡政権はウルムチ暴動を昨年3月のチベット族によるラサ暴動と同様に、「民族分裂行動」と位置づけ、国内を「分裂反対」一色でまとめる狙いだ。背景には「複雑な民族問題を抱え、全国的な波及を恐れる胡政権の危機感がある」(中国筋)という。
―――中国の55の少数民族人口は全体の約8%だが、民族自治地域の面積は国土の約64%を占める。地下資源が豊富だが、発展から取り残された地域が多い。政権は「民族自治」地域を設け、チベット、新疆ウイグル、内モンゴル、寧夏回族、広西チワン族の五つが省レベルの自治区を持つ。チベットとウイグルが最も不安定だが、他の地域でも摩擦の火ダネはくすぶっている。
まるでウイグル人の騒乱の原因が「発展から取り残された」ことへの不満あるかのような書き方だ。NHKテレビニュースも同様の解説をしていたが、こうした表面的な問題分析にとどめては、かえって「中共の喉と舌」である中国メディア報道のフォローとなりはしないか。
どうも読売は中国に遠慮をしているらしい。
■中国への遠慮は情報統制下にあるを意味する
読売が取り上げた人民日報の記事には「これは民族問題でもなければ宗教問題でもない。我々の前に横たわるのは祖国統一を守り、民族の団結を維持し、社会の安定を維持するための異常激烈な闘争なのだ」とあるが、ここにこそ、中国政府の本音が表れている。
実はこの問題の本質は、おぞましき「民族問題」(ウイグル民族の尊厳、生存の危機と言う問題)であり、「宗教問題」(ウイグル人の信仰の自由弾圧の問題)なのである。中国政府がそれを否定するのは、国際社会の干渉を招きたくないからに他ならない。
もし読売(あるいはNHK)に、半世紀以上にもわたって迫害されるウイグル人に涙するだけの心があれば、これらに触れないわけはないのだが、中国への遠慮でそれをしないと言うなら、読売はすでに中国の情報統制下にあると言うことになるのではないか。
それならばとても真実報道など望みようもない。
■これは中国の対外宣伝への加担だ
中国の統制下に入ると言うことは、中国の対外宣伝工作への加担を意味するが、この記事は完全に加担をしている。
その証拠は記事の傍らに掲げられる「漢族と少数民族の分布図」なる中国地図だ。下の写真がそれである。
漢族、ウイグル族、チベット族、モンゴル族等々の居住地域が色分けされ、漢族地域は緑色で塗られているのだが、台湾の島も緑色が付されて載っている。
ウイグル、チベット、南モンゴルの地がそこに含まれるのは、すでに中国に併呑されているから止むを得ないとしても、台湾はいまのところそれを免れている。だから中国が何と宣伝しようと、日本のメディアがそこを中国の一部と描けば、それは断じて許されない「誤報」となるはずである。
そこで八日午前、私はそれを指摘し、訂正を求めるため、読売東京本社の読者センターに電話をかけた。
■「朝日とは違う」と抗弁する読売だが
私がそこでした話は、何年か前に台湾は中国の一部と受け取られかねない記事を書いた記者が、「私も社自体も、台湾を中国の一部などとはまったく考えていない」と断言、謝罪を行ったということ。
また先日、朝日新聞が台湾入りの中国地図を掲載し、訂正文(いい加減なものだったが)を掲載し、ニュースサイトからも地図を削除した例も伝えた。
「台湾入り中国地図だ」との私の指摘に対して読者センターは、「民族分布図と書いてあり、中国地図ではない」と答える。「台湾を中国の一部とは考えていない」とも。
しかしどう見ても「中国地図」だ。なぜならそこには�「中国」との国名はあっても「台湾」との国名(地域名)は記載されていないし、�台湾は入れても、同じく中国と隣接する朝鮮半島や印度支那半島は除外されている。
「朝日の真似をするのか」と言う私に、「それは違う。これまでの(中国報道の)記事を読んでくれればわかる」と話す読者センター。記事を書いた国際部に「この誤報にどう対処するか」との質問を伝えてくれることになった。
■中国に媚びるが故の国民への背信行為
読者センターが国際部の回答を伝えてきたのはそれから二時間後。こう言う詭弁が弄された。
―――これは「民族分布図」であって「中国地図」ではない。訂正の必要はない。
そこで私は「これを見て、台湾を中国の一部と誤解する読者がいたら、読売新聞国際部はどう責任を取るのか」と再質問。これを「国際部に伝えて」と要請したのだが、「それはできない」と。
「今後、同じような地図を制作する場合、あなたの意見を参考にする」と言って話を打ち切ろうとするばかり。これで完全に国際部を庇っているのがわかった。「誤報」と認識している証拠である。
中国地図を描くに際し、「台湾入り」は誤りと知りながらもそれをするのは、「台湾抜き」にすれば中国からのクレームが恐ろしいからに違いない。
要するに日本人を洗脳し、「台湾は中国の一部」と誤認識させるとの中国の宣伝工作に配慮しているのだ。これが宣伝工作への加担でなくて何であろう。
読者センターは結局、私の再質問を国際部に伝達することになった。しかし国際部からの回答は「ないと思う」とのことだ。
こうしたあたりは朝日とそっくり。中国に媚びるためには平然と国民への背信行為に出るなど、読売・朝日は実際には中国の前では同質なのだ。
その日の午後、ウイグル人の中国大使館前での抗議活動に参加した際、読売記者の取材を受けたのだが、上のやり取りを話したところ、彼は私からスッと離れて行った。
■読売にウイグル問題を報じる資格がない理由
中国政府はウイグル人の「民族分裂行動」なるものを非難するが、これは読売の記事にもあるように、中国支配に不満を抱くチベット人に対してもしばしば用いられる言葉である。
言い換えれば中華膨張主義による自らの侵略行為を正当化するための言葉だと言える。我々はこのような認識を持たなければ、今回のような問題の本質を見抜くことなどできはしないのだが、読売はそのような観点から報道をしているだろうか。
中国による併呑を嫌う台湾人もまた、中国政府から「民族分裂」主義者と罵倒されているが、いかに中華膨張主義なるものが身勝手、横暴、悪質、好戦的であるかがわかるだろう。
しかし読売はチベットやウイグルなどとは違い、いまだ中国には占領もされていない台湾を、あえて数百万読者の前で「中国の一部」と報道したのだ。
これではとうてい読売には、ウイグル問題などを報道する資格などないと言わざるを得ない。その問題は中華膨張主義による侵略・殖民地支配の問題なのだが、中華膨張主義への批判能力を失っている新聞社のウイグル報道など信用できるかと言うことだ。
ウイグル問題も台湾問題も、すべて根っこは一緒、つまり中華膨張主義問題なのである。「台湾」の「取り扱い方」ひとつを見れば、マスコミが中国の情報統制下に陥っているか否かなどすぐに判明する。真実を優先するか、中国の政治宣伝を優先するかですべてが明らかになるのである。
読売は、真実追及のために中国を恐れることなく、誤報を誤報と認めてしかるべき措置を取るべきだ。ただそれを行うだけで、読売は中国の統制下から抜け出すきっかけを得ることになるだろう。
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