【尖閣海域「中国船拿捕」問題】台湾は冷静―メディアでは「日本支持」論も

【尖閣海域「中国船拿捕」問題】台湾は冷静―メディアでは「日本支持」論も

               
 永山英樹

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■尖閣に関する中国人の嘘が自由時報で明らかに 

中国人から見れば尖閣諸島は「中国台湾省」に属するとなるが、日本が同諸島海域で海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長を逮捕した問題に関し、台湾の無関心ぶりに不満を示す中国メディアの報道が見られた。

「台湾のグリーン陣営(本土派)の新聞は本当に小さな扱いだ。国民党系の新聞は大きく取り上げているが第三者の立場。メディアが民意を左右すると言うのがよくわかる。「去中国化」(非中国化政策)の賜物だろう」と。

本土派の新聞とは自由時報のことだろうか。最大発行部数を誇る同紙だが、たしかに九月十三日には「釣魚台地図には中華民国の嘘が描かれている」との投書をも掲載している。

そこにはこうある。

―――李登輝元総統が「釣魚台は日本の領土だ」と言うたびに統一派は非難するが、こうした話は政治的な嘘を明らかにしているものに過ぎない。

それはいったいどう言うことだろうか。

■一九七二年以前の地図では「日本尖閣群島」と

―――中国国民党が政権握っていた時代の一九七二年以前、国防研究院が出版していた「中華民国地図集」第一巻は一九七二年の第四版以前は中華民国の領土には釣魚台は含まれておらず、釣魚台は同じく「世界地図集」第一巻に日本の「尖閣群島」として表記されていた。

―――また一九七〇年に国立編訳館が発行した「国民中学地理」第四巻を見ても、当時は「尖閣群島」を「中華民国」との間に境界線を引き分けていた。

――― 一九六八年、国連が釣魚台海域で石油資源を発見したことを受け、中華民国政府は六九年から釣魚台に関する主権を宣伝し始め、七〇年には日本に対し、それを声明した。

―――そして突然、政府の教科書、メディア報道では日本の尖閣群島は中華民国釣魚台に変わった。それはまるで国共両党が長きにわたって「台湾は(日本から)独立すべし」と主張しながら、第二次大戦後に「台湾は中国不可分の一部」に変わったのと同じだ。

「中華民国の嘘」の嘘とはこう言うものだ。尖閣諸島を「中国台湾省」に属すると主張し始めたのが、中国人である蒋介石の時代のこの政権だったのだ。そしてそれに呼応し、同様の主張を行ったのが中華人民共和国である。

■台湾の保釣は在台中国人の反米反日の口実

このようにこの投書は事実を重視する台湾人の立場から、中国人の虚構宣伝を批判するものなのだが、文章はまだ続く。台湾で尖閣問題を巡って反日を煽ってきたのは在台中国人勢力だったことが明らかにされている。

―――七一年、各地で反日保釣デモが行われた。馬英九も当時は保釣学生だった。七八年、米国のグリーンカードを取得していた馬英九は、ニューヨークの中国国連代表団事務所前で中国が釣魚台を日本に渡そうとしているなどと抗議している。

―――民主化が行われる李登輝時代まで、保釣は統一派が台湾派政府の親米友日を攻撃する口実になってきた。

―――二〇〇五年六月、国民党主席選挙のとき、馬英九は国際司法裁判所では無報酬で弁護に立ちたいと言い、さらには日本との一戦も惜しまないと強調しながら、(日本との争いを好まない)陳水扁総統を「なかなか見られない軟弱な総統」とまで非難している。

■保釣運動をコマとしてきた中国政府

そして今回の騒動だ。投書はこう言う。

―――二〇〇八年、政治的空気が大きく変わり、日中両国は東海での共同開発で合意し、〇九年五月には友好気分継続のため、保釣行動を封殺した。昨年五月上旬には台湾と香港の保釣団体が釣魚台の主権宣揚のために出航しようとしたが、香港の保釣リーダー梁国雄は「台湾・香港・中国政府が共同で封殺した」と批判している。

―――ところが今、日中で争議が再発し、中国は一方的に共同開発協議を延期した。

―――昨年、梁国雄は「中国は保釣をコマとして使い、かつては資金を援助して出航させようとしたものだが、民間の保釣を好まないときは何もさせようとしない」と批判していた。それでは今、中国はどうするか。台湾の馬英九政権はそれにどう合わせるのか。

■台湾政府は保釣団体の船出にどう対処する

馬英九の国民党政権はどうするのか。少なくとも上述のように、「第三者」の立場に立って日中の動向を眺めているかのように見える。

同政権にしても尖閣問題において、自国の漁民の漁業権問題は重要視しているが、この問題で中国と歩調を合わせ、そのペースに乗って「友日」政策を後退させ、日本との関係を損なおうなどとは考えていない。

十三日正午(日本時間午後一時)、香港の「保釣行動委員会」は保釣パフォーマンスを目的に、台北県野柳から台湾の団体と二隻の漁船に乗り込み、尖閣諸島に向けて出航する計画だが、これに対しても台湾政府の許可は下りていない。

尖閣海域への出航を宣言した保釣グループ。12日、台北県内の集会で

台湾の海巡署は、保釣活動家たちの行動に干渉はしないが、釣船は二十四海里を越えてはならないとの「娯楽漁業管理法」に従うべきだとしている。

ちなみに同日午前の段階で、団体が確保できたのは二、三人乗りの小船だけだ。

一方中国の福建省アモイでは、この行動に合流予定の保釣活動家たちが当局から出航を阻止されている。メンバーによると当局は「出航の阻止はしていないが、待てと言っている」。

これを受け梁国雄氏は「胡錦濤も馬英九も強く出ろ。ともに釣魚台の領土を防衛し、日本に寸土も踏ませるな」と強く訴えている。

■東支那海戦略で台湾との連携が必要だ

以上を見てもわかるのは、尖閣問題は一般に日本と台湾、中国との領有権争いだと言われるが、台湾では自国に領有権はないとの正論がマスコミにも堂々と報じられ、しかも「親米友日」の観点から、保釣運動出身の馬英九の政権ですら反日を叫ぶのに躊躇しているとの状況にあることだ。

また香港や台湾のごく少数の中国人たちは、保釣運動華やかなりしころの青春時代を忘れられないためか、中国政府の支援を訴えながら反日保釣のパフォーマンスを繰り返すが、これらはいつでも中国のコマになり得ると言うことだ。

少なくともすでに台湾と中国が反日で連帯するとの虚像を、日本に対して見せ付けてきた。つまり日台分断のための情報操作工作のコマとして十分の威力を発揮しているのである。

尖閣を巡る日中間の対立を機に、日本側は「友台」の立場に立ち、「尖閣諸島は日本の領土であり、台湾人は中国人の築いた政治的虚構に惑わされるな。日台離間策に乗って東支那海の要衝である尖閣は日台にとっても生命線。これを中国に渡すな」と訴えて行かなくてはならないはずだ。

話せば、台湾人なら理解できるはずだ。もちろん漁業権問題も絡んでくるが、領土を巡る不必要な対立が解消されれば、逆にその解決も容易になると言うことも台湾側がわかっていないはずがない。

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