「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
ドイツの自動車メーカー「メルセデス・ベンツ」がインスタグラムに「Look
at situations from all angles,and you will become more
open.」(あらゆる角度から状況を見れば、よりオープンになる)という言葉を車の写真とともに投稿した。言葉にしろ、写真にしろ、実にセンスの良い広告だ。ところが中国はこの言葉にヒステリックにかみついた。「中国人の感情を傷つけた」と。中国人がこれほど脆い民族であれば、まことに人類の幸いというほかないが、これは中国が因縁をつけるときの常套用語に過ぎない。分かりやすい言葉に訳せば、「俺は怒っているぞ」という意味だ。
この知恵に富む、穏やかな言葉の、一体、どこが中国人の感情を害したのか。実は中国がかみついたのは、言葉そのものではなく、それを言ったダライ・ラマである。ダライ・ラマの言葉を引用することはけしからんということだ。言葉の内容に問題があるというならまだわかるが、言った人間がだめだからそれを使うなというのは孔子の教えに反するのではないか。
論語・衛霊公篇二十三に「不以人廃言」(人を以て言を廃せず)という孔子の言葉がある。人物が良くないからと言ってその人の言葉を捨ててはいけないという意味で、人物ではなく、言葉に真理があるかどうかを重視する姿勢である。地球のいたるところに孔子学院を作り、孔子の思想を全世界に広めようとする中国の指導者が論語を本当に読んだことがあるなら、この広告にかみつくことはないはずだ。
結局、この騒ぎによって、中国がいかに狭量な国であるかを世界に晒し、一方、ダライ・ラマがますます尊敬を集めたのである。さらに、一般の中国人がアクセスできないインスタグラムに出されたこの広告が、中国当局のお陰で世界中で有名になっただけでなく、中国の消費者にも広く知れ渡り、抜群の宣伝効果を得た。なぜ、中国は自分だけが損するような愚挙に出たのか、それは、中国が巨大チンピラ集団であるからだ。
チンピラは普通の人間と全く違う心理構造をもっている。彼らは自分より強い存在に媚び、自分より弱い存在に因縁をつけたり威嚇したりして利益を得る。さらにチンピラは例外なくコンプレックスの塊だから、人一倍メンツを重んじる。だから中国の指導者を理解するために、論語などの中国の経典を読んではだめなのだ。そもそも彼らは読まないし、理解もしていないからだ。もっと分かりやすく言えば、エリートコースを歩んできた学者や外交官僚は中国の指導者を理解できないということだ。
だから、日本が本気で中国とまともに渡り合いたいなら、まずチンピラの心理を研究することから始めた方がいいのではないか。
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