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【ニュース】台湾を守った斎藤大使の「台湾地位未定論」に中国が抗議
2009.5.6
馬英九総統(大統領)が先日、1952年の「中日和約」(日華平和条約)で日本が台湾の主権を中華民国に返還したと述べたことに対し、日本交流協会台北事務所(日本駐台湾大使館に相当)の斎藤正樹代表(駐台大使)が「台湾の主権は未定」と反論し、日本が中華民国に台湾を返還した事実を否定した(後に個人的発言とトーンダウン)。
これに対し、馬政権の台湾外交部は斎藤大使を呼びつけ厳重注意し、与党の中国国民党が斎藤大使を「歓迎せざる人物」として日本政府に召還を求める決議を党内で採択するなど過敏に反応した。
一方で、中華人民共和国(中国)外交部の馬朝旭・報道官は、斎藤大使の台湾主権未定発言に対し中国が日本に強い不満を表明したことを明らかにした。馬報道官は、1972年の日中共同声明で日本政府の立場が「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという立場を十分理解し尊重する」というものであると指摘し、斎藤正樹氏の個人的発言は日本政府の立場を代表していないと非難した。
実際の日本政府の立場は、中国の立場を「理解し、尊重する」というもので、台湾が中華人民共和国領と承認したわけではない。そして、台湾を中華民国領と認めたわけでもない。日本政府は台湾の主権を放棄しただけであり、返還先などは指定していない。
中国が斎藤大使に抗議したことからもわかるように、斎藤大使の発言は「台湾は中国領」という中国の主張から台湾を守るものだった。
台湾の林永楽・外交部次長は「中華民国は主権独立国であり、台湾は中華人民共和国の一部ではない」と強調したが、問題は台湾の馬総統が「一つの中国」を認め、「一つの中国=中華民国」と主張し、台湾国民に選ばれた元首なのに中国の大統領(総統)気取りでいることだ。
馬総統の論理(中華民国=唯一の中国)に従えば、日本が台湾を「中国」に返還したことになってしまう。しかし、日本は1972年以降、「中華人民共和国」を「中国」の唯一の合法政府として承認しており、日本は「中華民国」を「中国」とは認めていない。
台湾の帰属は、日本がすでに放棄した以上、台湾人自身によって決められるべきである。但し、台湾の馬政権が「中国」政府を自称し始めたからといって、日本政府が馬政権を「中国」政府と認めるわけがない。馬政権の論理は中華人民共和国(中国)の存在と矛盾するものであるから、中華人民共和国と国交のある国の多くは、「中華民国」を「中国」とは認めず、「台湾」を中華人民共和国とは別の独立国家・地域とみなすことが多い。
馬政権が先月に突然、外交部のホームページの「駐台使館」「駐台代表機構」を「駐華使館」「駐華代表機構」に変更した。台湾の政府見解は時代や政権によって変わるものであるが、斎藤氏は日本の駐台代表(台湾と国交がないので形式上は大使ではなく代表)であり、駐華大使ではない。日本の駐華大使は中華人民共和国の北京に駐在している。
そもそも、台湾の帰属が未定であるのは、日華平和条約を結ぶ際、中国の領土を失って台湾に逃れた蒋介石政権が「中国」を代表する政府であると自称しており、日本としては「返還」はなじまず、認定できないからだった。今後も台湾政府が「中国」政府を自称する限り、日本にとっても国際社会にとっても台湾の帰属は未定とせざるを得ないのだ。
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