産経新聞2015.12.29より転載
台湾行政院の毛治国院長
日本が交渉参加12カ国の一員として参加した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が10月5日、大筋合意したことに対し、まずお祝いを申し上げたい。
台湾と日本は歴史的に緊密で友好関係も深く、馬英九総統は就任以来、台日関係を「特別パートナーシップ」と位置づけてきた。7年間に「投資」「漁業」をはじめ28項目の取り決めおよび覚書に調印したのもその一環だ。
2014年の統計によると日本は台湾にとって第3の貿易パートナー、台湾は日本にとって第4の貿易パートナーである。
日本との経済関係を含め貿易自由化を加速させた台湾は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)を通しアジア太平洋地域の発展に積極的に参加してきた。世界27位の経済体として、産業技術力や海外投資の面でも重要な役割を果たしてきたと自負している。
この10年間で台湾とアジア太平洋諸国の貿易額は2倍に成長し、TPP参加12カ国との貿易総額は2千億ドルに達した。TPP参加国はいずれも、台湾の対外直接投資の重要な投資先である。
一方、年間3千億ドル近い輸入市場を持つ台湾は輸出拡大を目指すTPP参加国にとって、市場開拓の対象となる。
TPP参加国と緊密な協力関係が形成されている台湾が正式にTPPに参加できれば、日本との共通利益を守るパートナーとなることが可能だ。
日本の製品やサービスの質の高さは台湾でも十分認知されており、台湾のTPP参加は産業協力や経済・貿易関係をさらに拡大し、双方のイノベーションを促す。台日間の交流はさらに拡大し、地域内の各国へ広げていくこともできるだろう。
アジア太平洋地域の一段の発展には、緊密な経済・貿易関係が土台となるのはいうまでもない。台湾のTPP参加は、平和的な安定と発展の共通利益にも合致する。
日本企業にとって台湾はアジア太平洋地域をつなぐ「サプライチェーン」の拠点となっている。仮に不幸にも台湾がTPPに参加できない場合、この構図にマイナスの影響をもたらす恐れもある。
これから行われるTPP参加メンバーの第2次拡大交渉において、日本各界の方々が台湾のTPP参加を支持していただけるよう心より願っている。
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【プロフィル】毛治国氏
もう・ちこく 台湾・成功大卒後、タイのアジア工科大、米国マサチューセッツ工科大で学ぶ。交通大学院長(学部長に相当)、行政院副院長などを経て2014年12月から行政院長(首相に相当)。