台湾TPP参加へ日本の支持を  毛 治国(台湾・行政院長)

昨日(12月29日)、台湾の行政院長(首相に相当)をつとめる毛治国氏が産経新聞に「台湾TP
P参加へ日本の支持を」と題して寄稿した。

 台北駐大阪経済文化弁事処の代表(駐日台湾大使に相当)ならよく日本の新聞に寄稿することが
あり、去る10月11日にも沈斯淳代表が毎日新聞に「平和と安定 継続を」と題して寄稿していた。
しかし、これまで行政院長が寄稿した例は寡聞にして知らない。

 台湾では与党政権のみならず、民進党などの野党も経済浮揚策の一環として環太平洋戦略的経済
連携協定(TPP)に入ることを重要視している。日本にとっても、台湾の加盟は重要なファク
ターとなってくる。問題は中国だが、その前に日本はなすべきことがある。

 毛院長が指摘するように、国交がない日本と台湾はこれまで様々な協定や覚書を結んで「非政府
間の実務関係」を充実させてきた。

 2011年9月には投資企業の活動や資産は外貨規制を受けない無差別待遇にすることなどを決めた
「日台民間投資取決め(日台投資協定)」を結び、同年11月には定期便を運航する航空会社数を制
限しないことなどを定めた「オープンスカイ協定」を締結。また、2012年4月には知的財産の特許
出願に関する「日台特許審査ハイウェイに関する覚書」も締結している。

 さらに、最大の難題といわれ、10年越しの交渉が続いていた二重課税回避問題などを解決する
「租税協定」(日台民間租税取決め)が11月26日に結ばれている。これは、2013年4月の「日台漁
業協定」と同様、安倍総理の強い政治主導で締結されたという。

 しかし、現在、日台間の実務関係を保障する法的裏づけは一切ない。日台関係はこの不安定な中
で辛うじて実務関係を維持しているのが現実で、この無法状態は法治国家として異常だ。

 日本が今後、国益を損なわずにアジア・太平洋地域の平和と安定を維持しようとするなら、「台
湾関係法」を有するアメリカの政策との整合性を有する台湾政策を策定して推進する必要がある。

 そこで、日本が台湾との緊密な関係を維持しようとするなら、まず「日本版・台湾関係法」を制
定することが喫緊の課題と言える。台湾のTPP参加を支持することも重要ではあるが、国内法と
して「日本版・台湾関係法」を制定して基盤を固めるのが先だ。


台湾TPP参加へ日本の支持を 台湾・行政院長、毛治国氏寄稿
【産経新聞:2015年12月29日】

 日本が交渉参加12カ国の一員として参加した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が10月5
日、大筋合意したことに対し、まずお祝いを申し上げたい。

 台湾と日本は歴史的に緊密で友好関係も深く、馬英九総統は就任以来、台日関係を「特別パート
ナーシップ」と位置づけてきた。7年間に「投資」「漁業」をはじめ28項目の取り決めおよび覚書
に調印したのもその一環だ。

 2014年の統計によると日本は台湾にとって第3の貿易パートナー、台湾は日本にとって第4の貿易
パートナーである。

 日本との経済関係を含め貿易自由化を加速させた台湾は、アジア太平洋経済協力会議(APE
C)を通しアジア太平洋地域の発展に積極的に参加してきた。世界27位の経済体として、産業技術
力や海外投資の面でも重要な役割を果たしてきたと自負している。

 この10年間で台湾とアジア太平洋諸国の貿易額は2倍に成長し、TPP参加12カ国との貿易総額
は2千億ドルに達した。TPP参加国はいずれも、台湾の対外直接投資の重要な投資先である。

 一方、年間3千億ドル近い輸入市場を持つ台湾は輸出拡大を目指すTPP参加国にとって、市場
開拓の対象となる。

 TPP参加国と緊密な協力関係が形成されている台湾が正式にTPPに参加できれば、日本との
共通利益を守るパートナーとなることが可能だ。

 日本の製品やサービスの質の高さは台湾でも十分認知されており、台湾のTPP参加は産業協力
や経済・貿易関係をさらに拡大し、双方のイノベーションを促す。台日間の交流はさらに拡大し、
地域内の各国へ広げていくこともできるだろう。

 アジア太平洋地域の一段の発展には、緊密な経済・貿易関係が土台となるのはいうまでもない。
台湾のTPP参加は、平和的な安定と発展の共通利益にも合致する。

 日本企業にとって台湾はアジア太平洋地域をつなぐ「サプライチェーン」の拠点となっている。
仮に不幸にも台湾がTPPに参加できない場合、この構図にマイナスの影響をもたらす恐れもあ
る。

 これから行われるTPP参加メンバーの第2次拡大交渉において、日本各界の方々が台湾のTP
P参加を支持していただけるよう心より願っている。

                      ◇

毛治国氏(もう・ちこく) 台湾・成功大卒後、タイのアジア工科大、米国マサチューセッツ工科
大で学ぶ。交通大学院長(学部長に相当)、行政院副院長などを経て2014年12月から行政院長(首
相に相当)。


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