ブログ「台湾は日本の生命線」より転載
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■中国は単なる日台「文化交流」とは見ていない
日本と台湾の相互理解を深めようと、NHK交響楽団の台湾公演が六月三日から二日間の日程で始まった。
台湾でもN響は、NHKの衛星放送を通じてよく知られ、ファンも多い。NHKによれば「この公演は日本と台湾の相互理解を深めるとともに、東日本大震災のあと、被災地に多額の義援金を送った台湾の人たちへの感謝の気持ちを表そうと企画されたもの」で、「先月就任した台湾の蔡英文総統も鑑賞に訪れ、日本との文化交流への関心の高さを伺わせ」たそうだ。
さぞや感動的な演奏会となったことだろう。
ただ、中国はこれをどう見ただろうか。単なる「文化交流」というより、「文化交流」の名を借りた「政治交流」、つまり高度に警戒すべき日台連帯の反中陰謀の蠢きと映ったはずだ。
■中国はどう見る―安倍首相の母親も台湾訪問
今回に関して日台メディアが挙って強調するのは、「台湾での公演は1971年以来45年ぶりで、日本と台湾が断交してからは初めて」(NHK)との一点だ。つまり日中国交樹立後、日本側が中国への配慮で台湾との交流を差し控えるようになって以来初めてというわけだ。
要するに日本にこうした状況を中国が面白いわけがない。ましてや今や台湾は民進党政権下だ。中国の傀儡の様相を呈した国民党政権には、ある程度の台日交流を黙認して来たが、敵性の民進党が日本に接近するとなると話は別。そのことはかつての陳水扁総統の民進党政権と日本との交流に、過剰なまでに神経を尖らせていたことからも明らかだ。
中国覇権主義にとり、自らの拡張の野心の妨げとなる「日本右翼」勢力と「台湾独立」勢力との結託こそ、厄介極まりないものなのだ。
この日は安倍晋三首相の母親の洋子氏も訪台。沼田幹夫・交協流會台北事務所長(駐台大使)とともに会場に姿を見せ、蔡総統と仲良く演奏を楽しんだ。李大維外交部長(外相)、邱義仁亜東関係協会会長(同協会は外交部所管の対日窓口機関)、謝長廷駐日代表(駐日大使)ら、錚々たる対日関係の責任者たちも同席している。
中国がこれを、母親を名代とした安倍首相の日台政府間交流の蠢きであると受け取らなかったはずがない。
■日台信頼関係の再構築を図る安倍首相
実際にこの日、蔡英文氏を招待したのは安倍首相らしい。
台湾紙自由時報によると、今回の公演は、日台双方から「台湾新政権が新局面を開くことを祝うための文化イベントと見られており、日本側からは外交ルートを通じ、蔡英文総統に招待状を送付していた」という。
つまり「蔡政権発足後、日本の安倍政権は両国関係の深化に対し高度な期待を寄せており、特に政治的敏感性の名文化交流面で意識的にレベルアップや推進を図ろうとしている」というのだ。
同紙は更に、馬英九総統の前政権も「友日」政策を打ち出してはいたが、しかし「これまでの八年間の台日関係の実質については説明を要さない。安倍政権は蔡英文と積極的に交流し、双方の『真の友好』に基づく相互信頼、理解を再構築することに充分自信がある」とも伝えている。
今回の出来事について台湾の一般の人々は「安倍政権の台湾に対する善意、蔡政権に対する重視ぶりを示している」と見ていると自由時報は報じる。
中国には警戒心を与えたが、台湾の人々には激励となったということだろう。
これはとても好い結果ではないのか。少なくとも、その反対であっては断じてならない。