産経新聞 2009.8.21
【台北=山本勲】台風8号により50年ぶりの大災害に見舞われた台湾で、飼い主を洪水から守ろうとして犠牲となった忠犬の話がメディアに紹介され、市民を感動させている。
台湾紙「聯合報(21日付)」は体の不自由な飼い主夫婦を押し寄せる洪水から守ろうとして道連れになったハスキー犬たちの話を中面トップで報じた。
台南県大内郷で、水害のため張漢勲(59)さん夫婦が行方不明となった。2人を捜索していた陸軍救助隊は、張さんの果樹園付近で吠え続ける1匹のハスキー犬を発見。あたりを調べると、30メートル離れた草むらから張さんと5匹のハスキー犬、1匹のラブラドール犬が遺体で見つかった。
犬はいずれも、張さんを輪になって囲むように横たわっていた。怒涛のように押し寄せる洪水を前に、犬たちは体が不自由な張さんを守ろうとしたのではないか、と救助隊はみている。夫人の邱梅冠さんはもう1匹の犬と寄り添うように亡くなっている姿で発見された。
張さん夫婦は洪水の氾濫前、救命ボートに乗るのを拒んだという。人命最優先で救助隊が犬を後に回すよう求めたためだ。夫婦はすべての飼い犬と後のボートに乗ろうとしたが間に合わなかった。唯一生き残った犬が飼い主と仲間の亡きがらを守り、その場所を知らせる役割を果たした。
心温まるドラマもあった。村全体が土石流に飲み込まれた高雄県甲仙郷小林村では、2匹の子犬が危機を事前に察知し、飼い主と40数人の村人を安全な高地に導いた。救助隊は飼い主の李錦栄さんに犬をヘリコプターに乗せないよう指示したが、李さんは人を乗せ終えた最後のヘリで犬と一緒に避難。愛犬ともども助かったという。