永山英樹
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■中国の軍拡に理解示してしまった新駐中国大使
昨年三月二十日、中国の梁光烈国防相は訪中した浜田靖一防衛相(当時)との会
談で、「永遠に空母を持たないと言うわけには行かない」と話したことがある。
その理由は、「中国は広い海域があり、海を守る責任も重い。中国海軍は力が弱
く、発展する必要がある。大国で空母を持っていないのは中国だけだ」だった。
周辺諸国が中国の脅威増大を懸念しているなか、堂々と「大国だから空母を持つ
」と言い放ったわけだが、このことを思い出させたのが新駐中国大使の丹羽宇一
郎の発言だ。
赴任に先立つ七月二十六日、都内で開かれた歓送迎会での挨拶で、中国の軍事費
が〇九年まで二十一年連続で二桁の伸びを見せたことに触れ、軍事力増強は「大
国としては当然のことと言えば当然のことかも知れない」と述べたのだ。
まるで中国側の代弁ではないか。
■「中国の嫌がることは言わない」の鉄則に基づき
これについて共同は「国防費の大幅な増加に対しては、中国脅威論の象徴として
日本や米国などで警戒感が根強いだけに…丹羽氏の発言は波紋を広げる可能性が
ある」と報じているが、国民はこの人物の今後の動向を注視する必要があるだろ
う。
実は丹羽氏は二十三日のメディアとの会見で、増大する中国の軍事費について「
透明性を高めていくように、引き続き日本としても要望していく必要がある」「
世界の平和と安定のために、大国としての言動の重みをもう少し自覚し、行動す
ることを期待している」と語っていた。ところがいつの間にか、中国の軍拡擁護
の姿勢に転じたかに見える。
「媚中」と批判されるのを恐れ、中国に対してはっきり意見をぶつけるポーズを
巧妙に見せるのが近年の媚中派の特徴だが、実は丹羽氏もその類なのか。
「中国の嫌がることは言わない(やらない)」が良好な日中関係を維持するため
の鉄則だ。なぜならそのように考えるのが中国の「大国」意識と言うものだから
だ。いまある「戦略的互恵関係」も、靖国神社問題における日本の中国への妥協
(屈服)があって初めて成り立ったことを忘れてはならない。
そこでその鉄則に基づき、丹羽氏もつい、あのようなことを言ってしまったのだ
ろう。
■温家宝の前における国谷裕子キャスターの「媚中」を彷彿
来日した温家宝首相が六月一日、自ら望んでNHK「クローズアップ現代」に出
演し、キャスターの国谷裕子氏からインタビューを受けた際、中国の軍拡が話題
となった。当然だろう。日本国民が最も関心を持つのがこれだから、それを聞か
ないわけにはいかない。
ところが「中国の軍事費の増強、海軍力の強化が見られるが、日本では懸念の声
が強まっている」と切り出す国谷氏は、「そのー」と躊躇いがちだった。
媚中派である彼女にとり、「中国の嫌がること」を聞くのは、相当勇気がいるこ
とのようだったが、丹羽氏もまたこの国谷氏と同じ心理状態に陥っているのでは
ないだろうか。
ちなみに温家宝氏は国谷氏の前で、「私たちが軍事力を発展させる唯一の目的は
自衛」「中国はこれからも平和的発展を堅持して行く。いかなる国に対しても、
永遠に脅威になることはない」と、お決まりの政治宣伝を展開して見せた。
まさに余裕綽々。これが萎縮する「小国」の前での「大国」の態度と言うものだ
ろう。
このような国に赴任した丹羽氏が「大国としての言動の重みをもう少し自覚し、
行動するよう」などと向こうの政府に求めることができるかどうかははなはだ疑
問である。
■中国への依存論者が従属論者に陥る可能性
「日本経済に中国は欠かせない」が信条の丹羽氏。こうした対中国依存推進論者
は往々にして対中国従属論者に陥る可能性が高い。
前例がある。かつて伊藤忠の同僚だった藤野文晤氏は中国総代表当時の〇五年、
「日本人は中華世界の一員となる覚悟が必要である。こちらが中国人にならなき
ゃね」と「文芸春秋」に書いていた。
四月に中国東海艦隊が沖縄本島付近を通過し、あるいは海自艦を威嚇するなどし
て日本側に抗議をさせたが、当時中国紙「国際先駆導報」(新華社)は「日本は
中国の軍艦が頻繁に外に出ることに慣れるべきだ」と、いかにも「大国」らしく
説教をしてきた。
このまま行けば丹羽氏もまた、「大国」への従属に「慣れ」てしまうのではない
か。早くも中国の軍拡に理解を示すほどだから、その可能性は誰も否定できまい
。
そもそもこの新大使は、媚中派の代表と言える菅直人首相が白羽の矢を立てたも
のである。