2013.4.10 産経新聞
気象庁は9日、中国大陸から飛来する黄砂が10日にも、全国の広い範囲で観測される恐れがあると発表した。黄砂が日本列島をすっぽりと覆うのは今年初めてという。
同庁によると、黄砂は10日午前には列島全域に飛来。西日本のほか、東北の一部や南西諸島など、濃いところで視界が10〜7キロに悪化する可能性がある。
今回の黄砂は、中国大陸内陸部のゴビ砂漠で強風によって巻き上げられた砂とみられる。黄砂が日本列島を包み込むケースは「年に数回ある」(同庁担当者)が、今年はこれまでなかった。
視界が10キロ未満になると風景がぼんやりとかすみ、5キロ未満になると車や洗濯物への付着が目立ち始めるといい、同庁は「予測より飛来量が多くなることもあり、最新の情報を確認するようにしてほしい」としている。
また、健康被害が心配される中国発の微小粒子状物質「PM2・5」は、黄砂と結びつくことで、より遠くまで飛来しやすくなるメカニズムが働くという。一部自治体は呼吸器疾患を持つ人にマスク着用を促している。
PM2・5は、大気中に漂う微粒子のうち直径2・5マイクロメートル以下と特に小さいもの。環境省によると、風に乗って黄砂が運ばれる途上で、大気汚染物質である硫黄酸化物や窒素酸化物が、中国の大都市を通過する黄砂に付着する可能性があるという。
東京農工大の畠山史郎教授(大気化学)は「こうした大気汚染物質はガス状だが、黄砂の粒の表面にまとわりつき、黄砂の成分と反応してPM2・5と同じような成分が黄砂の表面に生じることで、ガス状の状態よりも遠くまで運ばれやすくなる」と解説する。
また、この時期はスギやヒノキの花粉が飛ぶ季節とも重なる。花粉と大気汚染物質が相互作用してアレルギーが悪化するとの指摘もあるという。
環境省はPM2・5の健康への悪影響を防ぐため、濃度が1日平均で1立方メートル当たり70マイクログラムを超えると予想される日に、都道府県が住民へ外出自粛を呼びかけるなどの暫定指針を2月に決定。各自治体は基準を超えた場合、ホームページなどで注意喚起している。
専門家は「黄砂の飛来する日に外出を控えるなどの対策が有効だ」と説明。環境省や気象庁が提供する情報で黄砂の飛来時期を把握することを勧めている。