【シトラー誕生】習近平独裁体制を林保華氏が分析

習特勒(シトラー)万歳? 台湾はどうすべきか? 林保華

(2018年2月28日付台湾公義報より翻訳)

*編集部注:著者は習近平を希特勒(ヒトラー)になぞらえて習特勒と呼んでいる。習特勒と希特勒は北京語で同音。

 中国共産党第十九期中央委員会第三回総会(3中全会)で憲法改正案が提出され、習近平の国家主席終身制に道筋が敷かれた。海外では非難の声が一斉に上がっているが、私は爆竹を鳴らしたいくらい喜んでいる。なぜなら「習特勒(シトラー)」がついに姿を現したからだ。

 昨年、第十九回党大会が行われる前に重慶南路(編集部注:台北市重慶南路)の本屋をぶらついていた時、簡体字書籍コーナーで、「希特勒(ヒトラー)」という文字を含む四冊の新刊のタイトルが、ふいに私の目に飛び込んできた。近い将来、これが話題をさらうテーマとなるだろうと、すでに誰かが予見していたのだろう。

 この情況は、かつて文革末期の中国でウィリアム・Ⅼ・シャイラーの『第三帝国の興亡』(編集部注:ナチス・ドイツの誕生から滅亡までを描いた歴史書)が出版された時と似ている。中国国内で出版された同書を読む資格は私にはなく、当時あらゆる手を尽くして何とか借りてきて読み、中国共産党との決別への思いを固くした。

 習近平を「よい人」だと考えているトランプ大統領は、この新しく登場した「ロケットマン」に直面して、大いに感じるものがあるだろう。エルサレムをイスラエルの首都であると認め支持する勇気があるトランプは、今世紀の習特勒(シトラー)に直面してどう対処すべきか。チェンバレンとなるか、それともチャーチルとなるか。

 習特勒(シトラー)の誕生に直面した台湾は、チェコのズデーテン地方、それともポーランドになるのか。もしも列強が習特勒(シトラー)に対して妥協するならば、台湾は中国によって併合され、ズデーテンと化す。あるいはポーランドのように一旦は亡国の憂き目に遭い、多くの民衆が収容所に送られると、列強が参戦し、新台湾として復活するかもしれない。

 憲法改正を発表する直前、中国政府は鄧小平の孫娘の婿である呉小暉を起訴した。呉の安邦保険集団の詐欺問題を利用して、「一石三鳥」を狙ったのである。

 一つ目は終身制を廃止した鄧小平との決別。
 二つ目は他の革命第二世代の既得権益集団に対し妄動を起こすなという警告。
 三つ目は反腐敗という嘘のイメージを作り続けて終身制への民衆の支持をとりつけること。

 そして続いて三月の全国人民大会と政治協商会議の二大会議で「満場一致で可決」という茶番を、我々に見せるつもりである。

 習近平のこの度の挙は自殺行為といえるが、台湾はそれでも真剣に向き合わねばならない。国民党はこれについて何も反応を示さず、中国共産党に対して異論を唱える肝っ玉もない。一方、蔡英文政権が台湾海峡両岸に関する政府担当者に関して重大な人事異動を行ったのは、偶然のことだろうか。新しい局面に対処できるかどうかは、まだ分からない。

 私が関心を抱いているのはメディアの報道である。メディア報道には世論を導く作用があるからだ。台湾のメディア、ことにお茶の間に浸透しているテレビ討論番組は、いつも競い合って蔡政権を批判している。口汚く罵れば罵るほど視聴率が上がる。

 親中派メディアがするなら別に不思議ではないが、台湾派メディアが親中派メディアの視聴率を超えようとして同じことをしているのなら、そんなものは台湾派とはいえない。親中派メディアの中には、今回の中国政府の改憲を習近平による「改革」とまで評しているのもあり、吐き気をもよおす。だが、台湾派メディアもまた、単に騒ぎ立てて、現政権を能なし呼ばわりしているだけだ。

もしも罵ることで高い視聴率を獲得しようというなら、なぜ台湾のメディアは中国共産党に投降した国民党を罵らないのか。なぜ台湾の最大の敵である中国共産党を罵らないのか。「国民党はもう終わりだから罵る必要もない」という人もいる。それならば、なぜ中国共産党を罵らないのか。利益共同体だからなのか、それとも、素材不足のために深く分析し批判することができないのか。
 自分は外国に留学したから国際観があるなどと思わないことだ。また、中国民主化活動家だから中国共産党をよく理解しているなどとも思わないことだ。国民党内にかつてたくさんいた「匪情専家(共匪=中国共産党の実情をよく知る専門家)」はいったいどこへ消え失せたのだ。与党の中国事務部は何をしたのか。台湾が独立建国しようというならば、アメリカと中国という関門を超えなければ、どうにもならない。ただのお遊びに終わるだけである。

作者の林保華氏について
中国重慶生まれ。香港、米国を経て2006年台湾へ移住し台湾籍取得。現在、台湾でジャーナリストとして活躍。


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