2010年3月7日開催「民族問題を通じてアジアの未来を考える」に寄せたメッセージ
(株)日本文化チャンネル桜 二千人委員会 栃木県支部主催 三民族合同講演会「民族問題を通じてアジアの未来を考える」
ウイグル協会より
当協会の会長イリハムも講演させて頂く予定でしたが、交通機関の遅れにより参加できませんでした。ご関係者の皆様、ご参加者の皆様には大変ご迷惑をお掛けし、申しわけありませんでした。当日協会役員より、会長からのメッセージを読み上げさせて頂きました。
メッセージ
日本文化チャンネル桜二千人委員会栃木県支部の皆様、水島社長、ダライ・ラマ法王日本代表部のツェワン事務局長、日本李登輝友の会の林建良先生、勉強会に参加された皆様、こんにちは。日本ウイグル協会のイリハムです。
2月終わりから世界ウイグル会議の常務会議に参加する為にドイツに来ております。
本来であれば今日の集会に間に合う予定であったのですが、天気が悪くなった為に、飛行機の出発する時間が遅くなり、乗り継ぎに間に合いませんでした。
申し訳ございません。
以前よりスケジュールに入れていた集会に参加することができず、残念な気持ちでいっぱいです。
数ヶ月前より準備されていたチャンネル桜二千人委員会栃木県支部の皆様には大変ご迷惑をおかけしましたこと心よりお詫び申し上げます。
誠に申し訳ございません。
今回の講演会は「中国に侵食される世界」というテーマでございますが、我々ウイグル民族が中国政府に支配されてから60年間、どのような弾圧を受けてきたかを知ることによっても、これから中国がアジアに対して行うであろうことの理解につながることと思います。
1949年まで、東トルキスタンの北部地域だけではありましたが、私たちウイグル民族は、自分達の政府と自分達の軍隊による、ほぼ完全な自治が維持されていました。
第二次大戦後の国共内戦に勝った中国共産党政府は、東トルキスタン政府に対して、今後についての交渉しようと呼びかけ、当時の指導者であった、アフメドジャン・カスミ主席らを北京に呼びました。
このときに政府指導者らが交渉のために飛行機に乗って移動しましたが、その途中で飛行機事故が発生し、彼らは全て亡くなってしまいました。
しかし実際には、中国共産党に東トルキスタン地域を支配させようというソ連の意向があり、彼らはソ連領内に連れ去られ殺害されたと言われています。
政治指導者らが居なくなってしまったことで、各地で武装抵抗はあったものの、さしたる抵抗もできないまま、東トルキスタンの土地は人民解放軍によって占領され、中国の一部として飲み込まれてしまいました。
1950年代からは、資源の開発、工業や農業の発展、辺境の防衛のため、という理由で東トルキスタン地域への漢人の大量の移住が政策として行われました。
この時に「新疆生産建設兵団」という、人民解放軍の退役軍人で、ほとんど漢人から構成される、軍隊と企業とが一体となった組織が重要な役割を果たしました。
いまでも新疆生産建設兵団は300万人くらいはいるとみられており、有事の際には直ちに戦力となる存在です。
さらに、彼らは最も肥沃な土地、貴重な水源を支配して、莫大な富を築いています。
この「生産建設兵団」以外の漢人の人口は、既にウイグル人と同じ程度の800万人はいると言われています。
1949年の時点で20万人程度であったのですから、どれだけのスピードで増えているか分かって頂けると思います。
90年代後半からは「西部大開発」の名のもとに、政府が企業や漢人の移住を煽り、たとえば進出する企業には融資や課税の面で優遇したり、移住する漢人には「辺境手当」という手当を支給するというやり方を取っています。
この漢人の移住は、最初は油田地域や牧草地の広がる北部地域、また南部であれば新興工業都市などに多かったのですが、次第に南部や辺境地にまで広がり始めています。
政府は漢人を大量に東トルキスタンに移住させるだけではなく、更に東トルキスタンに住むウイグル人の若者達を大量に中国沿岸部などに強制移住させています。
この政策は、2006年から始まりましたが、最初は若い未婚の女性を、それから若い男性も移住させるようになりました。
この目的について中国共産党は、貧しいウイグル人への仕事の斡旋であると言っていますが、それなら資源が豊かな東トルキスタンの中にある会社に就職させてくれれば良いのに、何故わざわざ遠い地域の仕事を与えるのでしょうか。
この移住が強制であるということは、それぞれの地域で「何人を出稼ぎに出すように」とノルマが課せられていることからも、それを拒否して逃げたウイグル人らは罰せられていることからも分かります。
実際に強制移住させられたウイグル人は、安価な労働力として奴隷のように酷使されており、女性であれば売春を強要されることもあるのです。
また、1979年から始まった「一人っ子政策」の影響で、男性ばかりが多くなった漢人に、ウイグル人の女性をあてがうためでもあると考えられ、実際に強制移住させられるウイグル人の若者達は、女性と男性とで全く別々の地域に送られています。
この数は既に40万人に達するといわれており、800万人といわれるウイグル人から若者だけ40万人も奪われたら、民族の存亡は危機的状況を迎えることは確実ではないかと思います。
このように、漢人の大量移住と同時平行でウイグル人の強制連行が行われていることは、民族同化政策以外の何者でもないと思います。これ以外にも、民族の根幹となる歴史や文化、言語などに対しての制限もどんどんと強化されてきています。
学校教育からウイグル語が追放されはじめています。
最初は大学など高等教育から始まり、年を追うごとに徐々に低年齢化し、現在では幼稚園から中国語教育が行われています。
地域住民の集まりなども政府の管理下に置かれてます。
収穫祭など伝統的な地域の集まりを「マシュラップ」といいますが、これも政府の許可なしに開くことができなくなりました。
宗教活動も中国政府18歳未満の者や学生、公務員などはモスクに入ることが禁止されています。
さらには、学校や学生寮、公務員なら職場での宗教的な行為は禁止されています。
祭日を祝うこと、部屋で祈ること、宗教的な衣装をまとうこと、ひげを生やすことなどは禁止され、違反している者がいないかを教師らが見回っています。
断食月には、このときだけ弁当が用意され、食べてからでなければ授業や職場に入れないようにされています。
宗教的・地域的なつながりを失った若者達はモラルを失います。
さらに会社なども内地からきた漢人ばかりが採用され、ウイグル人は大学を出ても9割は就職できないという、深刻な経済的な差別があり、ウイグルの若者達は希望を失っています。
この結果、ドラッグに走ってエイズに罹るなど、深刻な社会問題となっています。
また、中国の核実験は全て東トルキスタンのタクラマカン砂漠で行われました。
住民が住んでいるすぐそばで数メガトンの規模の核実験を何度も行い、数十万人規模の放射能による犠牲者を出しています。
昨年7月5日にはウルムチでウイグル人によるデモが行われましたが、武装警察などによって激しく鎮圧されました。
鎮圧部隊はデモ隊を追い詰め、水平射撃を行って大勢の者を射殺しました。
またデモに参加したとして大勢の者が逮捕され、既に数千人のウイグル人が政府によって殺されたと見られています。
しかし7月7日に行われた漢人によるウイグル人への報復行動のときには、武装警察や軍によるこのような鎮圧はありませんでした。
催涙弾を放って解散させた程度であったといいます。
おととしのチベットのラサや、東トルキスタンのウルムチでは、どちらも平和的なデモ隊が激しい弾圧を受けましたが、他の省で起きる漢人のデモのときには全く違った対応が取られています。
中華人民共和国憲法の第4条には、諸民族が平等であり、差別や抑圧を禁止すると書かれています。
しかし中国政府自身が率先して憲法違反を犯していて、少数民族を差別し、抑圧しているのです。
東トルキスタンの問題はウイグル人だけで解決することは非常に難しいでしょう。
国際的な圧力が不可欠であり、そのためにもチベット、台湾、モンゴルとの連帯、そして日本の皆様からの支援が必要です。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
ヘルシンキ空港より。
世界ウイグル会議日本全権代表、日本ウイグル協会会長、イリハム・マハムテイ。