【阿彰の台湾写真紀行】 粿(クエ)/粄(パン)

【阿彰の台湾写真紀行】No. 14 粿(kóe:クエ)/
粄(pán:パン)

 粿(kóe:クエ)とは台湾ホーロー語や中国閩南語の言い方であり、客家語では粄(pán:パン)と呼ぶ。これは粘り気が多い糯米(もちごめ)や、粘り気が少ない粳米(うるちまい)などの穀物を研いで水に浸し、柔らかくし、それを捏ねたり、ついたりして餅状にした食品の総称だ。中に餡を入れ、型に詰めて、かたどったものもある。使われた材料によって甜粿(tiⁿ-kóe:ティークエ)、鹹甜粿(kiâm-kóe:キャムクエ)、鹹甜粿(kiâm-tiⁿ-kóe:キャムティークエ)、菜頭粿(chhài-thâu-kóe:ツァイタウクエ)、草仔粿(chháu-á-kóe:ツァウアクエ)、鼠麴粿(chhí-khak-kóe:チィカックエ)、紅龜粿(âng-ku-kóe:アンクゥクエ)、芋粿(
ō͘-kóe:オォクエ)など、各種の呼び方の粿(kóe:クエ)がある。作るのに手間と時間がかかるので、元々は日常食べる主食ではなく、祖先や神様を祭る時に特別に作るお供え物であった。ただし、現代では日常的に菜市仔(chhài-chhī-á:ツァイチィアー=伝統的な朝市、野菜市場)や専門店などで売っていたり、食堂や屋台でも食べられる粿(kóe:クエ)もあり、普段のおやつとして楽しむ人も多い。

 かつて、台湾の民間の生活習慣では、神様や祖先を祭る時やお祝い事の時に、いろいろな願いを表す粿(kóe:クエ)を自分で作って、神様や祖先を敬った。例えば、紅龜粿(âng-ku-kóe:アンクゥクエ)は、餡を入れ、型に詰めて亀の甲羅に似せて作った赤い餅菓子だが、亀のように長寿であることを願っている。また、菜頭粿(chhài-thâu-kóe:ツァイタウクエ=大根もち)は“幸先がいい”という意味の台湾ホーロー語と発音が似ているので、よい運勢がやってくることを願っている(後述)。粿(kóe:クエ)で野菜類の餡を包むことで、財産、金銀、宝物に恵まれるという願をかけたり、發粿(hoat-kóe:ホァックエ)と呼ばれる蒸しパンは、蒸し上がると、上面部分が花が咲くように大きく開くが、その様子からお金が儲かることを願ったりもする。

 粿(kóe:クエ)は台湾人の信仰や生活と密接な関係があるので、粿(kóe:クエ)に関係することわざもある。例えば、昔はお米を炊いたり、粿(kóe:クエ)を蒸したりする時には、竈(かまど)と薪(まき)を使ったが、粿(kóe:クエ)を蒸す時、風通しや火の勢いを調整するために、まだ燃えきっていない薪(まき)や燃えかすを取り出し、竈(かまど)のそばに置いた。もし、竈(かまど)の上の粿(kóe:クエ)ばかりに気をとられたり、待ちきれず、慌てて粿(kóe:クエ)を手に取って食べたりすると、まだ完全に火が消えていない薪(まき)を踏みつけて、足に火傷を負うこともあった。それで「目賙看佇粿,跤踏著火(Ba̍k-chiu
khòaⁿ tī kóe, kha ta̍h tio̍h
hóe.)」と言って、目の前の利益や誘惑に気をとらわれないで、安全に気をくばって、自分の身を守れと戒めている。

 また、蒸してから2、3日食べなかったり、或いは食べ残して、時間が経ってしまった粿(kóe:クエ)の保存期限を伸ばすために、再度蒸し直すことを台湾ホーロー語で「餾(liū)」と言う。それで「三日無餾,爬上樹(Saⁿ-ji̍t
bô liū, peh-chiūⁿ
chhiū.)」と言って、学習した知識を忘れないために復習することを奨励する時にこの表現が使われている。「爬上樹(peh-chiūⁿ
chhiū)」は、リスやサルなどが木に上ることで、学習した知識の比喩でもある。それで、復習しない(無餾)と三日経たないうちに、リスやサルが木の上にさっと上り、いなくなってしまうように全部忘れてしまうということを表している。

 さて、今回は先ず、芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)から紹介しよう。

 芋粿(ō͘-kóe:オォクエ/客家語では芋粄:vu-pán:ヴゥパン)は、タロイモとインディカ米や糯米(もちごめ)などで作られた、台湾や中国広東省潮汕地区や福建省の福州から閩南地区にかけての伝統的な軽食で、元々は主に中元普渡(tiong-goân
phó͘-tō͘=旧暦の7月に祖先や無縁仏の霊魂を供養する行事)の時に食べられたものである。台湾ホーロー語、中国閩南語では護と芋の発音が似ていることから、子孫を守るという願いが込められている。

 芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)は、菜市仔(chhài-chhī-á:ツァイチィアー=伝統的な朝市、野菜市場)や専門店などで、割と大きな直方体の固まりで売っていることが多い。販売されている時の形状は、後に紹介する菜頭粿(chhài-thâu-kóe:ツァイタウクエ=大根もち)も同じである。食べる時に食べやすい大きさ、幅にスライスしたり、細かく切り分けて、蒸し直したり、焼いたり、他の食材と一緒に炒めたり、煮たりして食べる。蒸したものや焼いたものを直接食べる時、濃い味が好みの人は豆油膏(tāu-iû-ko:タウイウコー=甘いとろみ醤油)などをかけて食べる。作り方や中に入れる具は、出身地やエスニックの違い、また個人の好みなどにより若干差があるが、だいたいの手順を簡単に説明すると、以下の通りである。

①インディカ米を4時間以上水に浸けておく。その後、ミキサーなどで磨り潰し、インディカ米と水を均等に混ぜ合わせ液状にしておく。

②中に入れる具として使う干しエビとシイタケを洗い、水に浸けて柔らかくしておく。柔らかくなってから細かく切り、細かく切ったネギなどと一緒に、香りを立たせるように炒める。

③香りが立った干しエビやシイタケ、ネギの中に、千切りにしたタロイモを加え、続けて炒めて、塩、胡椒で味を整える。

④そこへ液状のインディカ米を入れ、弱火にして混ぜ合わせ、糊状に成り始めたら火を止める。その後、水分を吸収し完全に糊状になるまで続けてかき混ぜる。

⑤この糊状の、タロイモとインディカ米を混ぜ合わせたものを炊飯器や蒸し器などで蒸し上げる。

 形状は違うのだが、芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)の一種で、芋粿蹺
(芋粿巧とも書かれる:ō͘-kóe-khiau:オォクエキャウ)と呼ばれるものがある。芋粿蹺
(ō͘-kóe-khiau:オォクエキャウ)は、台湾人が拜拜(pài-pài:パイパイ=道教や仏教の神様や祖先を拝むこと)する時に使う道具である桮(poe:ポエ=二つで一組のポエを投げて神様や祖先に意見を伺う。この行為を跋桮:poa̍h-poe:ポアッポエと言う)の形(少し欠けた半月のような形)に似せて成形された小型のものだ。直接食べてもいいが、時間が経ったものは、蒸し直したり、フライパンやトースターで軽く焼いてから食べる。桮(poe:ポエ)の形でなく、小さな直方体に成形されたものは、鍋料理の具や揚げ物の具にすることもある。屋台や食堂では、むしろ鍋料理の具や揚げ物の具として使う直方体のものが多い。桮(poe:ポエ)の形に似たものは、市場や専門店で買って、自宅に持ち帰ってから食べるのが一般的である。作り方はだいたい以下のような手順。

①干しシイタケと干しエビを水に浸けて戻す。柔らかくなった干しシイタケを千切りにし、干しエビを細かく切っておく。干しシイタケと干しエビの戻し汁はとっておく。

②タロイモを洗って、皮を剥いて二等分に分ける。その一方を細かい形に切り分けて、もう一方のを千切り状にする。

③高温の油で香りを出すように干しシイタケと干しエビをさっと炒める。その後、鍋にタロイモの細切れと千切り、調味料を入れて、弱火で均等にかき混ぜながら炒める。香りが立ってきたら火を止めて、しばらく放置して冷ます。

④糯米粉とインディカ米粉を鍋の中に入れ、干しシイタケと干しエビの戻し汁、さらに水を加え、米粉の固まりにする。

⑤手に少量の食用油を塗り、米粉の固まりを115~120gずつ取り分け、それぞれを桮(poe)の形に成形する。それらをベーキングペーパーか粽(ちまき)を包む葉の上に置き、表面に少量の油を塗っておく。

⑥蒸し鍋の中に入れ、強火で20~25分間蒸す。

⑦蒸し上がった芋粿蹺を取り出し、表面に少量の油とお湯を混ぜたものを塗ってから放置して冷ます。

 芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)や芋粿蹺
(芋粿巧:ō͘-kóe-khiau:オォクエキャウ)は、食堂や屋台でそのまま料理として提供されることはあまりないのだが、食堂料理、屋台料理として定着している芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)の一種に油粿(iû-kóe:イウクエ)と呼ばれるものがある。小型で円形状の芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)を低温の油で軽く揚げた料理だ。作り方はだいたい以下の通り。

①白飯をミキサーで水と混ぜ合わせ、米漿(白飯を液状にしたもの)にしておく。

②容器にインディカ米粉、サツマイモ粉、手順①で作った米漿、水、砂糖、塩、白胡椒、そしてタロイモを角切りしたものを入れ、均等に混ぜ合わせて、粿漿(餅状になる前の液体)にしておく。

③鍋を火にかけ熱した後、油を少量敷く。手順②の粿漿を鍋に入れ、かき回しながら炒めて、固まって粿(凝固して餅状になったもの)になったら火を止める。

④両手に手袋をはめ、表面にラードを塗り、粿を掴み取り、大きな塊にする。それをクッキングシートを敷いた蒸篭(せいろ)に入れ、蒸し鍋に移して、タロイモが透明になるまで蒸す。粿が蒸しあがったら取り出して、放置して冷ます。

⑤お碗におろしニンニク、醤油、果糖、水と香味油を入れ、均等にかき混ぜて、タレを作っておく。

⑥食べる時、先に鍋に適量のラードを入れ、熱しておく。その中に蒸し上がった粿を入れて、ラードの中に浸しながら、柔らかく、透明になるまで軽く揚げる。

⑦取り出して、白胡椒をふりかけ、タレと細かく刻んだ芫荽(iân-sui:エンスイ=コリアンダー)をかける。

 芋粿(ō͘-kóe:オォクエ)に形状がよく似たものに大根もちがある。台湾の市場や専門店などではたいてい一緒に売られている。食べやすいように厚さ1センチほどにスライスして、軽く焼いたものは朝食店の定番メニューの一つにもなっている。大根もちは台湾では、台湾ホーロー語で菜頭粿(chhài-thâu-kóe:ツァイタウクエ)
、台湾客家語では菜頭粄(chhòi-theu-pân:ツォイテウパン=海陸方言)や蘿蔔粄(lò-phe̍t-pán:ローペッパン=四縣方言)と呼ばれている。

 大根もちは粵式茶樓(中国茶を飲みながら點心を食べる広東式のレストラン)でもよく見かけるが、広東人にとって新年を迎えるにあたって、必ず準備しておく正月用の食べ物の一つである。中国広東地域以外に台湾やシンガポール及びマレーシアなどでもポピュラーな點心(軽食、おやつ類)である。英語ではよくFried
Radish
cakeと訳される。台湾ホーロー語や中国閩南語の菜頭粿(chhài-thâu-kóe=大根もち)の菜頭(chhài-thâu:大根)と好彩頭(hó-chhái-thâu:幸先がいい、いい兆候)の彩頭(chhái-thâu)は、声調と呼ばれる音調は違うものの、発音が同じことで縁起を担いでいる。また大根の旬は11~2月、つまり、ちょうど年末から正月にかけてが生産量の多い時期なので、経済効果と利益に最もマッチした野菜だと考えられている。だから、台湾人や閩南人の間では正月時期に飾り物としてよく大根の模型や絵が使われる。大根もちの作り方も出身地やエスニックの違い、個人の好みなどによって違うが、だいたい以下のような手順だ。

①インディカ米を水の入った大きな器に入れ、6時間水に浸ける。大根を洗い、皮を剥いて千切りにする。シイタケを水に浸け、柔らかくして千切りにする。エシャレットの皮を剥いて細かく切り刻み、干しエビも水に浸けて柔らかくしておく。

②手順①で水に浸けて柔らかくしたインディカ米と水を一緒にミキサーの中に入れ、かき混ぜ、米漿(液状にした米)にしておく。

③鍋に油を入れ、熱くなったら先にエシャレットを入れ、中火で香りを出すように炒める。その後にシイタケと干しエビも入れて、香りが出るまで炒めておく。

④手順①で用意した大根の千切りを鍋に入れて、中火で炒めながら柔らかくし、水を入れ、沸き上がった後、5分間煮る。その後、調味料を入れ、均等になるまで炒める。

⑤手順②で作った米漿(液状にした米)を手順④の鍋に入れ、弱火でドロドロの糊状になるまでかき混ぜてから火を消して、そのまま放置しておく。

⑥適当な大きさの蒸篭(せいろ)用の敷き布を水の中に浸し、湿らせておく。

⑦湿らせた敷き布を蒸篭(せいろ)の中に敷き、手順⑤で作ったドロドロの糊状のものを蒸篭(せいろ)の八分目まで入れ、表面を平らにならし、蒸し鍋の中に入れ、強めの火で50分間蒸して完成。

 やはり、インディカ米などを溶いて液状にしたものを蒸した伝統的な家庭料理であり、食堂や屋台料理としても定着している、碗粿(óaⁿ-kóe:オワァクエ)と呼ばれているものがある。名称に碗(oáⁿ:オワァ=お碗)の字が使われていることからわかるように、お碗を型にして蒸す食品である。台湾の南部式と北部式とでは外観上の違いがある。南部式は具が中に隠れるように入っているが、北部式は具が碗粿(óaⁿ-kóe:オワァクエ)の上面に置かれている。また、食堂や屋台などではお碗に入れたままの状態でお客さんに提供する店もあれば、お碗から取り出し、皿などに移し替えてから提供する店もある。台北市内の食堂や屋台でも多くが南部式の碗粿(óaⁿ-kóe:オワァクエ)であり、北部式はあまり見かけない。碗粿(óaⁿ-kóe:オワァクエ)の作り方は以下の通り。もちろん、出身地やエスニックの違い、個人の好みなどで若干の違いがある。

①インディカ米粉と片栗粉をぬるま湯で混ぜ合わせる。熱湯を使うと片栗粉が先に固まり過ぎて、インディカ米粉の中に溶け込まなくなるから。

②インディカ米粉と片栗粉が均等に混ざった後で熱湯を注ぎ、糊状になるまで素早くかき混ぜる。

③詰め物、具に使う全ての材料を鍋に入れて、調味料を加えて炒めておく。

④お碗に移し替えた米漿(糊状の液体の米)に炒めておいた具を載せる(具を米漿の中に入れてもよい)。鍋に入れて15~20分間蒸す。

⑤食べる前にタレ(とろみ醤油に、おろしニンニクや砂糖などを混ぜて煮たもの)をかけて完成。

 台湾には他にも色々な種類の粿(kóe:クエ)があるが、他の種類のものは、またの機会に紹介したいと思う。


編集部より:「阿彰の台湾写真紀行」では、台湾在住のデザイナー、『台北美味しい物語』著者である内海彰氏が撮影した写真とエッセイをお届けします。写真は末尾のリンクから取得することができます。またウェブで閲覧できるバックナンバーでは、記事とともに表示されます。


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