【産経・古森義久のあめりかノート】危うい安倍⾸相の対中観

【産経・古森義久のあめりかノート】危うい安倍⾸相の対中観

2019.10.13 産経新聞より

 ワシントンから安倍晋三⾸相の中国に対する⾔明を読む
と、なんとも奇異に映る。危険さえも感じる。⾸相⾃⾝が⽇
本の安全保障の基軸だと宣⾔する同盟相⼿の超党派の対中姿
勢とは正反対であり、トランプ政権の対中政策を否定するよ
うな観さえあるからだ。

 安倍⾸相は4⽇の所信表明演説で中国との「あらゆるレベ
ルでの交流の拡⼤」を強調した。⽶国では逆に中国の無法な
対外攻勢を抑え、対中交流をあらゆる⾯で画期的に縮⼩する
ようになったのだ。だが⽶国と⽐較しなくても安倍⾸相の⾔
明には無理が多すぎる。⾸相の対中融和姿勢は1⽉の施政⽅
針演説での「⽇中関係は完全に正常な軌道に戻った」という
⾔明の延⻑だろう。

 だが⽇本領⼟の尖閣諸島の⽇本領海に武装艦艇を恒常的に侵⼊させ、同諸島の武⼒奪取の構え
さえみせる中国との関係がなぜ「正常」なのか。

 中国は⽇⽶同盟に反対し、⽇本のミサイル防衛など⽶国との安保協⼒はすべて抑えようとす
る。⼤軍拡による⽇本への軍事脅威も明⽩である。国内では「抗⽇」の名の下に戦時の⽇本軍の
「残虐」だけを拡⼤して教える年来の反⽇教育を変えていない。習近平政権は⽇本の「侵略」の
歴史としての盧溝橋事件や南京事件の記念を国家最⾼レベルの⾏事に引き上げたままである。

 中国は国内で活動する⽇本企業にも知的所有権や合弁の扱いなど⽶国が⾮難する不透明な慣⾏
を変えていない。まして最近では新疆ウイグル⾃治区や⾹港での⼈権抑圧を顕著にしてきた。安
倍⾸相が演説で熱をこめた⼈権尊重への明⽩な背反である。そんな相⼿との関係がなぜ「正常」
なのか。

 習近平政権は⽇本には微笑をみせ始めた。国内でも反⽇と映る活動を抑え出した。トランプ政
権から全⾯対決を迫られ、⽇本との対⽴を減らして、⽇⽶離間をも狙うという戦術である。その
証拠に前記のような⽇本への敵性ある政策の根幹はなにも変えていない。

 安倍政権が中国に対して唱える「競合から協⼒へ」という標語や中国の「⼀帯⼀路」構想への
間接協⼒はトランプ政権の政策とは正反対である。同政権は中国を⽶国主導の既成の国際秩序を
崩そうとする危険な挑戦者と位置づけ、「協⼒から競合へ」と主張する。「⼀帯⼀路」も習政権
の覇権的な野望として排する。

 トランプ政権は今⽉にはウイグル⺠族の弾圧にかかわる中国政府⾼官の訪⽶を拒む措置を発表
した。安倍政権の「交流拡⼤」とは完全な逆⾏である。

 安倍政権のこうした対中融和姿勢にはトランプ政権の関係者からすでに抗議が発せられた。同
政権の国務省引き継ぎの中核となったクリスチアン・フィトン⽒は最近の論⽂で警告していた。

 「⽶国が中国の無法な膨張を抑える対決姿勢を強めたときに⽇本が中国に融和的な接近をする
ことは⽇⽶同盟やトランプ政権への⼤きな害となる」

 現在は⽶研究機関「ナショナル・インタレスト・センター」上級研究員のフィトン⽒はこう述
べて、このままだと「安倍⾸相はトランプ⼤統領の友⼈ではなくなる」とか「⽶国は⽇本製⾃動
⾞への関税を⾼める」という最悪シナリオをも⽰すのだった。(ワシントン駐在客員特派員)


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