【潮音寺】英霊弔う寺 存亡の危機

【潮音寺】英霊弔う寺 存亡の危機
英霊弔う寺 存亡の危機 台湾南端部に建立「潮音寺」

2009.10.26 産経新聞

 先の大戦で、多くの日本船が撃沈されたフィリピン・台湾間のバシー海峡に今も眠る戦友の霊を弔うため、旧日本兵や遺族が私財をなげうち、1981年に台湾南端部に建立した「潮音寺(ちょうおんじ)」が現地の不動産売買トラブルに巻き込まれ、存亡の危機に立たされている。同寺には現在も年間200〜300人の遺族らが慰霊に訪れており、日台の関係者は対応に頭を痛めている。(喜多由浩)

 「潮音寺」は、バシー海峡を望む景勝地・猫鼻頭(マオビトウ)の丘に立つ仏教寺院。昭和19年8月、フィリピン・マニラへ向かう輸送船「玉津丸」に乗船していて米潜水艦に撃沈され、12日間の漂流の末、九死に一生を得た静岡市の中嶋秀次(ひでじ)さん(88)が数千万円の私財を投じ、遺族の募金と合わせた資金で建立された。

 中嶋さんは、「約5千人が乗船していた玉津丸で助かったのは10人に満たなかった。救命イカダにしがみつき、わずかに残った食料と水を分け合って救援を待ったが、戦友は日ごとに減るばかり。最期に私に『水をくれ』と言いながら死んでいった戦友の顔が忘れられない。何としてでも、彼らの霊を弔いたかった」と振り返る。

 米軍に制海権を握られた戦争末期、南方へ向かう日本の艦船はことごとく沈められ、バシー海峡沿岸にはおびただしい数の日本兵の遺体が漂着した。艦船数は大型船だけで200隻以上、フィリピンや台湾周辺の海底で眠る英霊は約20万人に及ぶという。やがて潮音寺は慰霊の拠点となり、遺族らによる慰霊祭も毎年開かれている。

 ところが今年8月、中嶋さんのもとに突然、「(潮音寺の)土地が第三者に転売されてしまった。買い手は寺をつぶしてホテルを建てたいと言っている」という連絡が入った。驚いた中嶋さんが調べたところ、信頼した現地の人物に任せていた土地の登記があいまいになったままで、代替わりした地主の親族が勝手に土地を売ってしまったことが分かった。

 中嶋さんと支援者は問題解決のために、台湾の日本での窓口である台北駐日経済文化代表処に協力を要請。代表処は、現地の自治体を通じて事実関係の調査を行ったが、民事のトラブルに当たるため、むやみに介入することもできない。朱文清広報部長は、「基本的には法律に基づいて当事者同士で話し合ってもらうほかない。いい方向で解決してほしいのはやまやまなのだが…」と話す。

 11月中旬には、中嶋さんと支援者が現地を訪れ、買い手らと直接、協議を行うことになっている。中嶋さんは、「今も海に眠る戦友のために潮音寺をなくすわけにはいかない。そのことをぜひ理解していただきたい」と訴えている。

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