日清・日露の戦役や大東亜戦争で活躍した戦艦と台湾は少なからず縁があります。
澎湖島の馬公港で爆沈した連合艦隊初代旗艦の「松島」と、大東亜戦争を戦い抜いて「奇跡の駆逐艦」と呼ばれ、戦後、台湾では「丹陽」の艦名で活躍した「雪風」は特に縁が深いのではないかと思います。
日清戦争の折、東洋一の堅艦と呼ばれた清国の戦艦「鎮遠」と「定遠」の2隻に対抗するためにフランスで建造された軍艦が連合艦隊初代旗艦の「松島」でした。同時に建造された「厳島」と「橋立」とともに「三景艦」と呼ばれたそうです。
「松島」はその後、日露戦争にも参加し、戦後は練習艦として遠洋航海に従事していました。海軍兵学校の少尉候補生を乗せて遠洋航海中の1908年(明治41年)4月30日、台湾・澎湖島の馬公港内で停泊中、午前4時過ぎに火薬庫が突然爆発して瞬時に沈没してしまいました。
殉難者は艦長や副長など乗組員370名中220名以上にも及び、乗り込んでいた少尉候補生も57名中半数以上が殉難、その中には陸軍元帥だった大山巌公の嫡男大山高候補生も含まれていました。
そこで、李登輝学校研修団で澎湖島を訪れた折に松島爆沈の跡を訪れて冥福を祈ったこともあります。また、松島が爆沈して110年という節目の年の2018年9月、本会の辻井正房・副会長は「巡洋艦松島爆沈110年慰霊団」を率いて澎湖島を訪問、日本松島艦沈船記念館にて慰霊祭を行っています。
一方の駆逐艦「雪風」は大東亜戦争中、戦艦「大和」の沖縄水上特攻作戦など16回以上の主要作戦に参加しながら、唯一、終戦まで行き残り、奇跡の駆逐艦と呼ばれました。除籍後、中華民国に賠償艦として引き渡されて「丹陽」と改名、同国海軍の主力艦として活躍しました。
1969年秋、海上自衛隊の練習艦隊が高雄・左営軍港に寄港した折にはその雄姿を確認していましたが、惜しくも1971年 12月に解体されました。現在、「雪風」の舵輪は江田島の旧海軍兵学校教育参考館に、錨はその庭に展示されていて、スクリューは台湾の左営にある海軍軍官学校に展示されているそうです。
前置きが長くなりました。
大日本帝国海軍創設150年という節目の年に当たる本年6月、鉛筆で艦船を描く鉛筆艦船画家の菅野泰紀(すがの・ひろゆき)氏が靖國神社遊就館の本館ギャラリーにおいて大日本帝国海軍揺籃期から斜陽期にかけてのさまざま艦船を描いた作品約50点を展示する「菅野泰紀鉛筆艦船画展 大日本帝国海軍創設150年記念 大観艦式2682─濤声(とうせい)は凱歌(がいか)の残響(ざんきょう)」を開催します。
菅野氏は本会の辻井正房・副会長を団長とする「巡洋艦松島爆沈110年慰霊団」で澎湖島を訪問したときに参加しており、靖國神社では「松島」も「雪風」の作品も展示されるそうです。慰霊団が機縁となって本会にも入会しています。
靖國神社で開催中の7月からは、横須賀の「記念艦三笠」でも、横須賀に所縁の深い帝国海軍艦艇・海上自衛隊艦艇・外国艦艇を描いた作品の展示会「大観艦式2682─濤声は凱歌の残響」を開催するとのことです。
菅野氏が鉛筆で描く艦船は、まさに勇壮の一語に尽きます。カラーではなく、鉛筆で描く白と黒だけの世界にもかかわらず、細密画と言っていいほどの細やかな描写は、光と影をうまく取り入れているせいか、艦船の上に広がる空の色や、波しぶきの色まで思い描くことができます。鎮魂の深い思いが籠る遺影でもあるからでしょうか。
1枚約50センチ×70センチほどの大きさだそうですが、仕上げるまでに3ヵ月もかかるそうです。
軍艦や乗組員たちの奮闘ぶりや気概を絵画に表せるよう心掛け、入手できる限りの撮影資料や記録をたどり、当時の様子を知る方に直接お話を伺うこともあるそうです。
下記に、月刊「致知」のインタビューと、靖國神社と記念艦三笠で開催する「菅野泰紀鉛筆艦船画展 大日本帝国海軍創設150年記念 大観艦式2682─濤声は凱歌の残響─」の案内をご紹介します。
◆大和、瑞鶴、武蔵……鉛筆艦船画家・菅野泰紀が絵画奉納を続ける理由 【月刊「致知」:2020年4月15日】 https://www.chichi.co.jp/web/20200415_sugano_hiroyuki/
菅野泰紀(すがの・ひろゆき)1982年(昭和57年)、岡山県に生まれる。2006年(平成18年)、広島大学文学部卒業後、名古屋大学大学院に進むも家業を継ぐため中退。2010年(同22年)、自身初の鉛筆艦船画作品となる「戦艦 攝津」を制作。2012年、第45回KFSアートコンテスト入選。お茶の宇治園(心斎橋本店)にて初の鉛筆艦船画展を開催。2013年、第15回KFSアートコンテスト選抜展特別賞受賞。靖國神社のみたま祭に揮毫雪洞(ぼんぼり)を奉納、以後、毎年奉納。以降も受賞や展示多数。
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大日本帝国海軍創設150年目の節目にあたり、鉛筆艦船画家 菅野泰紀が12年にわたる活動(自身で描いた鉛筆艦船画を艦内神社の分霊元などへ奉納・寄贈することで、戦いで亡くなられた英霊、艦の魂を慰霊すると共に、艦と神社の絆を後世へ顕彰する活動)の中で描いた作品およそ100点を2つの会場へ集めて展示、鉛筆艦船画による国際大観艦式を開催します。
また、本年はミッドウェイ海戦から80年、戦艦「三笠」就役から120年、日英同盟の締結120年など、様々な節目が重なっていることもあり、遊就館ではミッドウェイ海戦に関わりの深い艦艇、記念艦三笠では三笠と関わりの深い艦艇を選定し展示作品群に加えています。
靖國神社遊就館・記念艦三笠 連携企画 菅野泰紀鉛筆艦船画展大日本帝国海軍創設150年記念 大観艦式2682─濤声は凱歌の残響─
https://m.facebook.com/hiroyuki.sugano.71?_rdr
◆展示会概要
・開催地:靖國神社遊就館 記念艦三笠
・開催年:令和4(2022)年
・期 間:靖國神社遊就館(6月1日〜8月31日)*9月からの展示がなければ延長。 記念艦三笠(7月1日〜9月11日)
・会 場:遊就館 (エスカレーター上がってすぐの通路壁面&旧エントランスホール展示室) 記念館三笠 (右舷側通路壁面掲示板と7番・9番砲室展示室)
・入場料:無料(施設観覧料は必要)
・主 催:アートスタジオ楓(ふう) 〒544-0031 大阪府大阪市生野区鶴橋1-1-36 オリエンタルBLD 1F URL: https://artstudio-fu.com/
・特別協賛:(一社)今井光郎文化道徳歴史教育研究・(株)サンセルモ
・協 賛:(公財)水交会・(公財)モラロジー道徳教育財団・(株)キャリアコンサルティング・ 帝国海軍軍艦慰霊顕彰会
・協 力:靖國神社遊就館・(公財)三笠保存会
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