謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表(駐日台湾大使に相当)は以前から「東北地方産食品に対する台湾への輸入禁止の是非を問う公民投票を発起していることなどが、台日関係を破壊するものであることは、言わなくても明らかです」(8月21日)という見解を明らかにし、公民投票にかけること自体を問題視していた。
この事案が成立し、河野太郎外相がWTOへの提訴も辞さないと表明したことに対して、「台湾が科学的根拠に基づいてではなく地域によって輸入を制限している」ことが問題なのだから「提訴されれば台湾にとって不利となる」とも述べていた。
12月19日、陳時中・衛生福利部長も立法院の質疑応答で「現行の規制措置は科学的根拠という点で説得力に欠ける」「日本の反応は正常だ」と答弁したという。
下記にその記事を紹介するが、本誌でも「政治判断と民意の乖離はどこの国でもありうる。少なくとも日本の5県産品の輸入禁止問題は、民意を問う公聴会などは開かなくてもよかったのではないか。蔡英文総統が政治判断すべきだったのではないかという疑問が残る」と指摘した。
この疑問とともに、公民投票にかけられるテーマにも問題を残していると思われる。
今回の公民投票の事案の一つに「台湾の名称で、あらゆる国際競技大会や2020年東京五輪に出場参加することに同意するか否か」もあったが、台湾政府の判断だけでこの事案は解決できない。最終的な決定権を国際オリンピック委員会が握っているからだ。
5県産品の輸入禁止や台湾名称などのテーマが公民投票の対象としてふさわしいのか、疑問は残る。公民投票法の見直しが必要なようだ。
————————————————————————————-食品禁輸継続で日本がWTO提訴も 台湾の保健相、悲観的な見方【中央通信社:2018年12月20日】
(台北 20日 中央社)台湾で先月下旬、福島など日本5県産食品の禁輸継続についての賛否を問う国民投票が賛成多数で成立したのを受け、日本は世界貿易機関(WTO)への提訴も排除しない姿勢を示している。陳時中・衛生福利部長(保健相)は19日、現行の規制措置は科学的根拠という点で説得力に欠けると述べ、日本が本当に訴訟を起こせば台湾が敗訴する可能性があるとの見方を示した。
立法院(国会)社会福利及び衛生環境委員会での質疑応答で発言した。日本の反応は正常だと理解を示しつつ、台湾としては国民投票の結果を受け、経済貿易分野で日本と意思疎通を続けなければならないと述べた。
台湾は2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で生産、製造された食品の輸入を禁止している。先月24日に投開票された国民投票は、禁輸継続賛成約779万票、反対約223万票で可決された。この結果を受け、日本の河野太郎外相はWTOへの提訴も排除しないと述べたほか、環太平洋経済連携協定(TPP11)への台湾の参加に悪影響が出る可能性も示唆している。
(劉冠廷/編集:塚越西穂)