25年前のギングリッチ議長とペロシ議長の訪台比較  矢板 明夫(産経新聞台北支局長)

25年前のギングリッチ議長とペロシ議長の訪台比較  矢板 明夫(産経新聞台北支局長)

 米国の下院議長は副大統領に次ぐ大統領職継承順位第2位。今回のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問は、李登輝総統時代の1997年4月2日のニュート・ギングリッチ下院議長以来、25年ぶりだという。

 当時、中国を訪問したギングリッチ下院議長がアメリカは台湾海峡の戦争に介入すると明言すると、中国は「台湾に侵攻する用意はない。だからアメリカは台湾の防衛を助ける必要もない」と答えたというから、今回のペロシ議長訪台の様相とはかなり異なる。

 昨夜のBSフジのプライムニュースに、訪台した鈴木馨祐・衆議院議員や石破茂・衆議院議員とともに生出演(オンライン)していた産経新聞の矢板明夫・台北支局長が今朝の産経新聞にその違いを探る記事を掲載している。

—————————————————————————————–米下院議長訪台 25年前と状況一変 中台の軍事対立先鋭化【産経新聞:2022年8月3日】https://www.sankei.com/article/20220802-WXLJU2P5XRKRDMP4UBQ5GNVD2Y/

 【台北=矢板明夫】アジア歴訪中のペロシ米下院議長(民主党)が2日夜、台湾を訪問した。米国の正副大統領に次ぐ要職の下院議長として1997年のギングリッチ氏(共和党)以来、25年ぶりの台湾訪問となる。今後の米中台関係に大きな影響を及ぼすことは必至だ。

 台湾の国際問題評論家、宋承恩氏は「今の国際情勢は1997年当時と全く違っており、ペロシ氏の訪台は25年前に比べ、国際社会へのインパクトがはるかに大きく、両岸(中台)の軍事的対立を先鋭化させる可能性もある」と指摘した。

 宋氏によると、25年前のギングリッチ氏の場合は、訪台前に中国を訪れており、江沢民国家主席(当時)ら中国側の要人と会談している。その前年の96年に台湾で初の総統直接選挙が行われ、中国は選挙を妨害するために大規模なミサイル演習を行い、いわゆる第3次台湾海峡危機が起きていた。97年のギングリッチ氏の中国・台湾歴訪は、台湾海峡両岸の緊張緩和を促す側面があり、中国は表面では抗議したものの、事実上容認していた。

 しかし、今回のペロシ氏の場合、中国の猛反対を振り切っての台湾訪問であり、他の国が台湾との交流の前例とする可能性もある。そうなれば、中国が長年実施してきた「国際社会で台湾を孤立させる」という政策が根本から崩れかねない。

 軍事評論家の黄澎孝氏は「中国と米国の経済力と軍事力の差があまりなくなっていることも25年前と大きく異なっている」と指摘した。黄氏によれば、97年当時の米国の国内総生産(GDP)は中国の約9倍もあり、年間の軍事予算は約20倍だった。

 しかし、その後、中国は急成長を遂げ、昨年の米国のGDPは中国の1・3倍、軍事予算も3倍弱になっている。「台湾海峡付近での米中の軍事力が均衡しつつあり、緊張感は以前と比べて高まっている」と黄氏は警鐘を鳴らす。

 今後、中国軍が台湾海峡付近で大規模な軍事演習を実施する可能性がある。台湾側の軍関係者が最も懸念しているのは、中国軍が台湾海峡の「中間線」を完全に無視することである。

 中間線とは台湾海峡の中央に引かれた直線で、事実上の停戦ラインともいわれる。法的根拠はないが、双方の軍はこの線を越えないように長年自粛してきた経緯があった。中国の軍用機は近年、中間線を越えることが増えてきている。

 台湾側が警戒しているのは、ペロシ氏訪台の報復として、中国軍が、中間線を無視して活動範囲を台湾側に拡大することだ。ある軍関係者は「そうなれば、偶発的な軍事衝突の可能性が高くなる」と話している。

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