1976年より続く一人の日本軍人のために行われる慰霊祭 ≪2012年レポート≫

昨年9月20日から23日、本会は「日台シンポと廣枝慰霊祭ツアー」を行い、廣枝音右衛門
(ひろえだ・おとうえもん)の慰霊祭に参列した。

 廣枝音右衛門は海軍巡査隊の大隊長として、大東亜戦争末期に部下であった台湾籍日本
兵命を自らの死をもって救った人物。

 1976(昭和51)年9月26日、廣枝音右衛門に命を救われた劉維添(りゅう・いてん)氏ら
部下だった方々が台湾の苗栗県南庄郷の山腹にある仏教寺院、獅頭山勧化堂に廣枝をお祀
りして供養する英魂安置式を行い、それから毎年欠かさず慰霊祭を執り行っている。

 劉維添氏の慰霊祭をお手伝いしているのが、台湾に移住し、日本企業のアジア進出支援
コンサルティングなどを手掛け、台湾の日本語世代との交流も深い渡邊崇之(わたなべ・
たかゆき)氏であり、氏の運営する「LinkBiz台湾」のスタッフだ。

 昨年の慰霊祭の模様を「LinkBiz台湾」のホームページ「ビジネスコラム」欄で、たくさ
んの写真とともにレポートしているので下記に紹介したい。

◆ 2012年廣枝音右衛門氏慰霊祭ツアーレポート
  http://linkbiz.tw/hiroedashireport

 なお、廣枝音右衛門のお墓と遺徳顕彰碑は茨城県取手市内にある。本会茨城県支部が支
部設立後の活動の第一弾として参拝し、そのレポートを茨城県支部担当の室和代(むろ・
かずよ)さんが本会機関誌「日台共栄」(2012年7月号)に発表している。


1976年より続く台湾中部で一人の日本軍人の為に行われる慰霊祭

 去る2012年9月22日(土)、台湾12景に選ばれる風光明媚な獅頭山の勧化堂にて故廣枝音右
衛門警部の慰霊祭が行われました。

◆日本人の慰霊祭が台湾で行われる背景

 遡ること1945年2月23日午後3時頃、台湾人日本兵を率いてマニラの守備についていた廣
枝音右衛門大隊長が次の言葉とともに自決されました。

「お前達は台湾から来た者だ。家には妻子父母兄弟が待っているだろう。連れて帰れない
のが残念だが、お前達だけでも、生けるところまで行け。俺は日本人だから責任はこの隊
長が持つ。」

 故廣枝氏は、この自決により自ら責任を取る形で、部下である台湾人の命を救い、彼ら
を台湾に帰したのでした。

 そして現在、故廣枝氏によって命を救われた台湾人有志が集まり、1976年に初めて慰霊
祭が開催されました。

 主催者の一人劉維添さんは以来一度も欠かすことなく毎年この時期に慰霊祭を開催され
ていらっしゃいます。

 6年前には戦友は皆お亡くなりになり、生存者は劉さんお一人になってしまったそうです
が、それでも劉さんはお一人で慰霊祭を行われたということでした。

◆主催者である劉さんと弊社代表渡邊の出会い

 戦友がなくなられ、劉さん唯一人で取り仕切った慰霊祭の直後に弊社代表である渡邊が
獅頭山を訪れました。

 劉さんがお一人でも慰霊祭を続けられていることを知った渡邊は、その事にとても感動
したそうです。

 その翌年の慰霊祭から、知り合いを連れて、台北より慰霊祭に参加してきました。

 最初は有志3人でレンタカーを借りての参加でしたが、年を重ねるごとに共感して参加し
ていただく人数が増え、レンタカーがミニバスになり、昨年からは42人乗りの大型バスを
準備するという規模になりました。

 今年の参加者は年齢が2歳から90歳まで、台湾の各地からはもちろん、日本からも駆けつ
けて頂きました。昨年より多い総勢40名での慰霊祭参加となりました。

◆多種多彩な参加者たち

 在台日本語学習サークル「友愛会」の皆さん。日本語で思いを歌にする短歌サークル
「台湾歌壇」の皆さん。「日本李登輝友の会」からは多くの方が、日本より駆け付けてく
れました。LinkBizからの呼びかけでも、たくさんの方に参加して頂きました。

 また、LinkBizの台湾特派員で「台湾茶の山ばなし」のコラムニストである市島氏も昨年
同様ご子息とともに、苗栗縣から直接参加されました。

 台北出発組は大型バスで朝8時に台北駅を出発し、竹南駅にて南部からの参加者を加え、
一路獅頭山へ。

 皆さん参加に至った背景や所属は異なれど、慰霊祭に対して感じる気持ちは同じ。自己
紹介であっという間に距離が近づきます。

◆バス内での突然の報告

 バスの中での弊社代表渡邊の突然の発表に皆騒然とします。

 実は、主催者である劉維添氏が今朝、心臓発作により病院に運ばれたのこと。

 劉さんは、このままでは皆に迷惑がかかるとの責任感から、懸命に力を振り絞って、自
ら電話連絡をくれたそうです。

 主催者不在の慰霊祭となり、皆に戸惑いが広がります。

 しかし、すぐに劉さんのためにも自分達で慰霊祭を行おうという気持ちが自然と広がり
ました。

 慰霊祭に参加するという立場から、慰霊祭を主催するという立場への変化は皆の結束を
強めたように思います。

◆台湾の12景勝地にも数えられている獅頭山へ登山開始

 二時間半ほどバスでゆられて獅頭山に到着しました。

 獅頭山の駐車場から山の階段はちょっとした登山です。上り10分ほどで慰霊祭会場であ
る勧化堂に到着します。

 学生や子供は元気に登っていきます。普段仕事が忙しくて運動していない中高年はゆっ
くりと。足の悪い参加者は従業員用のエレベータで上がります。

 身体にじわっと汗を感じた頃に勧化堂へ到着です。

◆獅頭山住職さんによる読経のもと、慰霊祭が始まる

 まずは皆で、故廣枝氏のお位牌を参拝します。

 弊社代表の渡邊より簡単な説明がありました。

 コラムにあるように持ち帰ってきた砂などを紹介し、そして、故廣枝氏のお名前の隣に
刻まれた奥様の名前のエピソードを紹介しました。

 いつもは劉さんから廣枝警部へ今年の慰霊祭開催の報告がなされますが、今年は劉さん
がいらっしゃらないために、皆心の中で報告します。

 そして、各団体の代表者が線香を捧げます。

 住職さんによる読経に耳を傾けながら、一同全員手を合わせて拝みました。

◆勧化堂併設のレストランで精進料理をいただく

 慰霊祭が終わると、併設しているレストランでお寺の精進料理をいただきました。今年
は2階に特別席をとっていただき、ゆったりとしたスペースで食事が始まります。あっとい
う間に、テーブルに乗り切らないほどの料理が出てきます。

 精進料理ってもっと味気のないものだと思っていましたが、全然違います。とってもお
いしくて、皆の交流も進みます。

◆バスで南庄へ移動

 勧化堂前で集合写真をとり、バスで10分ほど先にある南庄という街に移動しました。

 日本統治時代、第4代総督であった乃木総督とゆかりのある「乃木坂」に登り、観光地化
されている当時の郵便局を観光します。

 土曜日である当日は多くの観光客でにぎわっていました。郵便局の向かいにはとても立
派な日本時代の邸宅が残っています。

 そしてその家では、抹茶のかき氷を販売しており、これが行列を作っています。実はこ
の日本邸宅、劉さんの奥様の実家なのだそうです。

 毎年参加者は劉さんの「顔パス」で一緒にお宅へお邪魔させてもらっています。とって
も素晴らしい庭園があり、まんなかの日本時代からある松の下で記念撮影。

 それからは皆で、かき氷を食べたり、老街といわれる古くからの商店街を探索したり。

 一方、劉さんは大事には至らず、今はご自宅で養生されているとのこと。

 渡邊が早速劉さんのご自宅にお見舞いに行くと、今はだいぶ落ち着かれているとのこ
と。ご無事であったとの連絡に一同胸をなでおろします。

 皆さんにぜひご挨拶を、という劉さんのご厚意に甘えて、皆でご自宅にお邪魔すること
になりました。

◆劉維添さんのご自宅にて体験談に耳を傾ける

 故廣枝氏の慰霊祭に参加することが目的とはいえ、唯一の生き残りで廣枝氏を直接に知
る劉さんと会って当時の体験を聞けるとなれば、皆心が躍ります。そんな皆の気持ちが伝
わったのか、劉さん、とっても元気な姿を見せてくれました。

 そして劉さんから故廣枝氏のお人柄などをお話頂き、感動の一時となりました。

 最後に劉さんが叫ぶようにおっしゃられた

「来年は元気になって慰霊祭で皆さんに直接お話したいと思います。ですからどうか私を
死なせないでください。」

という言葉は、皆の心に強烈に残り、皆がまた来ますと心に誓ったのでした。

◆一路台北へ

 劉さんに見送られながら一同はバスに乗車して一路台北へと帰路につきました。

 途中、竹南駅で南部からの参加者とお別れです。南部から参加のお子様3人はちょっと疲
れたのかバス中では熟睡でした。

 子供の頃からこのような経験をしていれば、日台にとって、とても貴重な人材になるこ
と間違いありません。

◆帰路も興奮冷めやらず

 帰路のバスの中では参加者の皆さんに感想を発表して頂きました。

「この事実をもっと若い人たちに伝えるべきだ。来年は台湾人の友人を連れてきます。」
「もっともっと広めていきたい。まずは、身近な人、自分の夫に今日の体験を伝えま
す。」「慰霊祭が続くかぎり参加します」「また来年も必ず行きます。」「日本でももっ
と声をかけます。」

 そして友愛会代表の張さんのご提案で劉さんの「私を死なせないでください。」という
言葉にお答えし、是非劉さんにお手紙を書こうということを皆で約束しあって、当日は解
散となりました。

◆最後に、LinkBiz事務局より

 帰路のバス中では参加者の皆さんよりたくさんのねぎらいの言葉を頂き、本当にありが
とうございました。

 僅かながらですが、日台の文化的、精神的なつながりに貢献できたことをうれしく思い
ます。引き続き来年以降もこの企画を継続し、皆様のお役に立てるよう努力してまいりま
す。

 以上、現地ツアーレポートでした。


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