台湾外交部の呉釗燮部長は9月27日、沼田代表に外交分野の貢献者に贈る褒章「特種外交奨章」を授与したという。また、呉部長は同日、外交部のツイッターに日本語で下記のようにツイートして名残を惜しんだ。
<沼田幹夫大使は台湾の友人であり、私の友人でもある。大使任期内で台日関係の促進に多大な貢献があり、離任するには名残惜しい。特種外交褒章を授与できたこと光栄に思う。我が良き友よ、時々戻っておいでよ!JW>(編集部註:JWはジョセフ・ウー)
近年、日本台湾交流協会台北事務所の代表の任期は2年から3年で、3年を超えたのは内田勝久代表(2002年2月〜2005年5月)と池田維代表(2005年7月〜2008年7月)の二人しかいない。5年を超えたのは沼田代表だけだ。
任期ばかりでなく、率直に意見も吐露した。それは、5県産食品の輸入禁止措置問題に端的に現れている。
昨年夏、国民党が5県産食品の輸入禁止措置継続について賛否を問う公民投票の実施を目指した署名活動を始めたことを受け、7月24日、「私は失望を禁じ得ません」と表明し「科学的な根拠が示されないまま,こうした輸入規制措置が継続されることは,日本と台湾の友好関係にヒビを入れるものになる」というメッセージを発表して自制を求めた。
しかし、その求めに反して公民投票の実施が決まり、沼田代表は10月9日、改めて「失望を禁じ得ません」とするメッセージを発表し、「食品の輸入規制措置の是非は,本来、科学的・専門的な見地から冷静に判断されるべきものです。これが、政争の具とされ、ついには台湾の皆様全体をも巻き込んでしまいました。今,私に課されているのは,今回のこの国民党による一連の行動がこれまで大切に育んできた日本と台湾の友好関係にひびを入れることを何とか食い止めることです」とつづっていた。
沼田代表のこの率直な物言いを煙たがる台湾の要人もいたと仄聞するが、呉部長がツイートしたように「離任するには名残惜しい」と思っている方が大半なのではないだろうか。
本会の日本李登輝学校台湾研修団でも、近年はほとんど毎回、講師として日台関係の現状などを解説いただき、「役員・支部長訪台団」などでも気軽にお会いいただいてきた。
日台関係の最前線で苦労されてきたことに深い感謝の念を捧げつつ、下記に中央通信社の記事をご紹介したい。
◆外交部ツイッター:9月27日 https://twitter.com/MOFA_Taiwan/status/1177563373287829505
◆沼田幹夫代表の略歴:日本台湾交流協会台北事務所 https://www.koryu.or.jp/about/taipei/message/representative-career/
—————————————————————————————–外交部、離任控えた日本の駐台代表を表彰 関係強化に貢献【中央通信社:2019年9月28日】http://japan.cna.com.tw/news/apol/201909280003.aspx
(台北 28日 中央社)日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会台北事務所の沼田幹夫代表(大使に相当)が来月中旬に離任するのを受け、呉ショウ燮外交部長(外相)は27日、外交分野の貢献者に贈る褒章「特種外交奨章」を沼田氏に授与した。(ショウ=金へんにりっとう)
2014年7月に着任した沼田氏。任期中に日台間で締結された取り決めや協力覚書は経済や漁業、防災、教育など20項目に及ぶ。17年1月には同協会の名称を従来の「交流協会」から現行の「日本台湾交流協会」に改称した。
呉氏は、中国の外交圧力に直面する台湾の現況に言及。その中で沼田氏がフェイスブックで台湾の外交関係に関心を寄せたり、世界保健機関(WHO)などの国際機関への台湾の参加を支持する立場を表明したりしてきたと述べ、台湾が最も助けを欲している時、速やかに行動してくれたことに感謝した。その上で、このようなプラスの力が受け継がれ、台日関係がさらに深化することに期待を示した。
沼田氏は、日台友好の精神を持ち続けるよう同協会職員らを励まし、自身も引き続き日本で日台関係の発展をサポートすると約束した。
呉氏は同日夜、外交部のツイッターに授与式の写真を投稿。「特種外交褒章を授与できたこと光栄に思う。我が良き友よ、時々戻っておいでよ!」と日本語のコメントを添えて沼田氏との別れを惜しんだ。
(侯姿瑩/編集:塚越西穂)