昨日の「台湾の声」は1月23日付の英紙「デイリー・メール」の記事を紹介し、中国はSARS、エボラウィルスの実験室を2018年1月に武漢に開室していたと伝え、それで腑に落ちた。
記事は続けて、2004年に北京の実験室からSARSウィルスが流出したことを伝えるとともに、「開設に先立つ2017年、米国の生物安全専門家Tim Trevanはネイチャー誌に実験室からのウィルス流出の懸念について警告していた」とも伝え、ウィルス流出の可能性を警告していたと伝えている。
台湾でも日本と同じく3人の感染者を発表しており、台湾籍の男性患者が武漢から来たことを隠匿したとして30万台湾ドル(約110万円)の罰金を科し、中国(香港・マカオを除く)への団体旅行の出発を中止するよう旅行会社に通達し、中国からの団体旅行の受け入れ中止も求めるという厳しい姿勢で臨んでいるものの、感染拡大を受けてWHOが22、23日に各国の専門家を集めて開いた緊急委員会にHA台湾だけが招かれなかった。
「人命にかかわる公衆衛生の深刻な事態に台湾という空白域をこれ以上放置してよいはずがない。拡大阻止に責任がある中国は無用な介入をやめ、WHOも門戸を即刻開いてもらいたい」とする産経新聞の主張は、WHOの精神からいて当り前の措置だ。医療問題に政治的主張を差しはさむべきではないことは、2001年の李登輝元総統来日でも証明ずみだ。
ましてや、武漢の実験室からウィルス流出が今回の原因だった可能性も指摘されている。中国は早急に原因を解明し、台湾をWHOから締め出すような圧力は即刻止めるべきだ。
—————————————————————————————–WHOと台湾 排除続ける場合ではない【産経新聞「主張」:2020年1月25日】
中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症が台湾でも確認され、蔡英文総統は、世界保健機関(WHO)への台湾加盟を認めるよう改めて呼びかけた。
中国が「一つの中国」原則を盾に台湾を締め出し、WHOがそれに屈するいびつな構図が続く。だが人命にかかわる公衆衛生の深刻な事態に台湾という空白域をこれ以上放置してよいはずがない。拡大阻止に責任がある中国は無用な介入をやめ、WHOも門戸を即刻開いてもらいたい。
WHOは22、23日の緊急委員会で「緊急事態宣言」を見送ったが中国本土、本土外で感染者は急増を続ける。WHOと各国・各地域の緊密連携は焦眉の急である。
「台湾は世界的な防疫の最前線だ」と蔡氏が訴える通り、経済規模でマレーシアを上回り、人口2300万人の台湾排除は感染対策の抜け道となる恐れがある。
実際、台湾で73人が死亡した2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際には検体をWHOから入手できず、対応が遅れたと台湾側は訴える。
その後、「一つの中国」を条件付きで認めた中国国民党の馬英九政権(08〜16年)下ではWHO総会にオブザーバー参加が認められた。「一つの中国」原則を認めない民進党の蔡政権発足の翌17年以降、出席は認められていない。
しかし、中台間の人の移動はSARS当時の比ではない。蔡政権が中国向け団体旅行を中止する措置を取ったのは、危機感の表れだが、活発な往来を抑えられるものではなかろう。人的交流が緊密な日本への影響も無視できまい。
中国外務省の報道官は、台湾の参加は「『一つの中国』原則下で行われなければならない」と述べた。参加したいなら同原則を認めよ、という露骨な態度である。
だが、WHO憲章は人種、宗教、政治信条などの差別なしに「すべての人々が最高水準の健康に恵まれる」権利を定める。テドロス事務局長は中国から巨額投資を受けるエチオピアの元保健相だが、政治的理由での台湾排除はこの権利にも反しよう。
台湾での感染を受け米国務省高官は「台湾を排除するのではなく一段と関与させるよう働きかけたい」と述べた。台湾のWHO参加は日本の公衆衛生にも不可欠である。米国とともに強く働きかけるよう安倍晋三政権に求めたい。