ワン族の方々4名が日本を訪れた。7日には帰台するという2泊3日のあわただしい日程だっ
たが、6日の記者会見の前に、そろって靖国神社を参拝した。
本誌でお伝えしたように、参拝したのは、華阿財・元牡丹郷郷長、包聖嬌・華阿財夫
人(国立嘉義大学助理講師)、李新輝・元春日郷郷長、洪金蓮・李新輝夫人の4人。それ
と、一緒に来日した本省人の黄敏慧さんが靖国神社を訪れた。
成田空港からホテルに向かう車の中で、華阿財氏と李新輝氏の母方の弟、つまり叔父さ
んがともに高砂義勇隊として志願し戦歿しているという話になった。華阿財氏の「高木薫」
という日本名の叔父はニューギニアで、李新輝氏の「山村一郎」という日本名の叔父はフ
ィリピンで戦死されたということだった。
そこで、靖国神社への参拝を誘ったところ、ぜひ行ってみたいと日本に来る前から思っ
ていたとのこと。初めて参拝するという。
パイワン族の衣裳に身を整えた一行が靖国神社に到着すると、参集殿の2階にある控室
に通された。そこで、正式参拝する前に、叔父さんたちがご祭神としてお祀りされている
かどうかを調べるため、戦死したときの日本名や本籍地、ご遺族のお名前などを調査票に
記した。10日後、靖国神社から調査結果が届いた。
華阿財氏の叔父さんの「高木薫」命は、「高木香」というお名前でお祀りされているこ
とが判明した。戦死されたのは昭和19年11月22日、場所は東部ニューギニアで、階級は海
軍軍属工員、所属部隊は第27特別根拠地隊だったという。
だが、李新輝氏の叔父「山村一郎」命は残念ながら該当しそうなご祭神を見つけられな
かったそうだ。やはり、靖国神社に参拝する予定もなく来日し、突如、参拝が決まったの
で、記憶のままに記していただいたことが判明しなかった原因だろう。また、ご遺族のお
名前や村の名称はパイワン語読みなので、そのカタカナの日本語表記が当時の記録と合致
しない場合があるともいう。
そこで、李新輝氏には「高木香」命の調査結果を参考に、死歿場所、死歿時本籍地、死
歿時御遺族などを改めて確認して送って欲しい旨の手紙をお送りした。返事が届けば、靖
国神社には改めて調査していただくことになっている。
華阿財氏たちは参拝後、記者会見でも、その夜に開いた歓迎会でも「靖国神社で私たち
の先祖にお会いした。大切にお祀りされていることを知り感激した。安心して故郷に帰れ
る」などとこもごも話されていた。
パイワン族の方々が今度はご遺族として、再び靖国神社に参拝の機会が訪れることを願
わずにはいられない。
(メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原 正敬)