多いかもしれない。その他に、台中に白冷圳(はくれいしゅう)をつくった磯田謙雄(いそ
だ・のりお)技師や屏東に地下ダムの二峰圳(にほうしゅう)をつくった鳥居信平(とりい・
のぶへい)技師にもまた、台湾の人々は感謝と尊敬の念を忘れていない。
その鳥居信平が植えたマホガニーが大きく育ち、その誕生を祝うとともに鳥居の功績に感謝する
イベントを9月11日に屏東県来義郷で開くという。中央通信社が伝えているので下記に紹介した
い。
マホガニーといえば、高級家具や高級楽器などに使用される木材として知られるが、記事からは
どういう経緯で鳥居が植樹したのかは分からない。しかし、鳥居が植えたマホガニーの誕生を祝う
ことを通じて鳥居の功績を讃えるという。このような讃え方をするのは、あまり聞かない。それだ
け、台湾の人々が鳥居への感謝の念が深いということだろう。
地下ダムの二峰圳が完成したのは1923年(大正12年)5月。1923年といえば、李登輝元総統
が生まれた年だ。1月15日、台北州淡水郡三芝庄(現在の台北県三芝郷)埔坪村に、警察官の父・
李金龍と母・江錦の次男として生を享けている。
もしマホガニーが二峰圳完成を記念して植えられていたなら、李登輝元総統と同い年となる
から92年前ということになる。そのマホガニーの老木の誕生日をお祝いするのだという。
ちなみに、鳥居信平が二峰圳建設に取り組んだ軌跡を追った作品が、平野久美子氏の『水の
奇跡を呼んだ男─日本初の環境型ダムを台湾につくった鳥居信平』(産経新聞出版、2009年6月
刊)だ。
また、奇美実業創業者の許文龍氏は、台湾のインフラ整備に貢献したそういう日本人の胸像を制
作していることはよく知られている。許文龍氏は、後藤新平、八田與一、新渡戸稲造、羽鳥又男、
新井耕吉郎、浜野弥四郎、磯永吉、末永仁、そして鳥居信平の9人の胸像をつくってその功績を讃
えている。台湾電力の松木幹一郎は許氏の制作ではないが、資金面で支援している。詳しくはまど
か出版編『日本人、台湾を拓く』(まどか出版、2013年1月刊)をご参照いただきたい。
ダム建設で台湾に貢献した日本人技師に感謝 屏東県でイベント
【中央通信社:2015年9月6日】
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201509060004.aspx
写真:鳥居信平が植えたマホガニーの大樹
(台北 6日 中央社)日本統治時代に南部・屏東県来義郷に地下ダム「二峰圳」を建造した
日本人水利技師・鳥居信平氏(1883〜1946)の貢献に感謝を伝えようと、同郷で11日、鳥居氏が植
えたマホガニーの老木の誕生日を祝うイベントが行われる。
イベントは長年にわたって地域の人々の成長と生活を見つめてきた老木の誕生日を祝うことで、
若い世代に命の大切さやその土地の記憶を知ってもらおうと同県の文化処が企画。6月には日本統
治時代に整備された台湾鉄路・潮州駅前の三角公園でも実施された。
ダム竣工時に鳥居氏が植えた木のうち、1本は台風によって倒れてしまったが、残る1本の老木は
今も青々とした葉を茂らせている。1923(大正12)年に完成したダムは90年以上経過した現在でも
現役で使用されており、地元の生活に欠かせない存在となっている。
イベントでは、地元小学生による演奏などが行われるほか、老木にまつわる話も披露されるとい
う。
(編集:杉野浩司)