駐日代表は謝長廷氏が続投し駐米代表は蕭美琴・国家安全会議諮問委員で調整

 蔡英文・総統の2期目の総統就任式を5月20日に控え、台湾の内閣は14日に総辞職した。総統が任命する行政院長はすでに総辞職前の5月8日に蘇貞昌氏の留任を蔡総統が伝え、他の閣僚は20日までに発表される予定だ。

 一方、在外公館の代表(大使)人事にも着手されていて、産経新聞は5月18日の1面で、駐日代表は謝長廷氏が続投し、駐米代表は蕭美琴・国家安全会議諮問委員で最終調整に入っていると報じている。他紙の報道では見当たらなかったので、産経のスクープだろう。下記にその記事を紹介したい。

 謝長廷氏は新聞や雑誌への寄稿本数は歴代大使の中で群を抜いている。2016年6月9日の代表赴任からあまり日が経っていない8月2日、世界日報に「南シナ海の平和には対等な話し合いを」を寄稿したのを嚆矢に、今年の5月14日にも産経新聞に「台湾のWHO参加 支持を」を寄稿い、この4年間で19本にも及ぶ。

 また、福島県及びその周辺4県からの農産品や食品の輸入を禁止した蔡英文政権の政策に対しても、日本側が要望していた科学的根拠に基づいて規制緩和することに理解を示し、「科学的根拠と理性的な話し合いは世界標準であり、遵守しない者は報復を受けるだろう」と述べ、蔡英文政権に真っ向から早期解禁を要望していた。

 さらに「台湾と日本の良好な関係を次の世代に伝えていくためにも礎が必要だ」として、日本が「日台交流基本法」を制定することを望み「任期中にできるだけ私の手で解決したい」と意欲を示していた。

 日本に深い理解を示し、台湾の自主性を強調した羅福全代表(2000年〜2004年)や許世楷代表(2004年〜2008年)に続く台湾大使と言っていいだろう。李登輝元総統の信頼も厚い。

—————————————————————————————–台湾・駐日代表 異例の続投 駐米は蔡氏側近女性【産経新聞:2020年5月18日】

 【台北=矢板明夫】台湾の蔡英文総統は5月20日の2期目の就任式を前に、在外公館の代表(大使に相当)人事に着手した。台湾当局の関係者によると、駐日代表の謝長廷(しゃ・ちょうてい)氏(73)を続投させる一方、駐米代表に蔡氏の側近で総統の諮問機関「国家安全会議」諮問委員の蕭美琴(しょう・びきん)氏(48)を充てることで最終調整に入った。世界保健機関(WHO)の総会参加問題などで国際社会の台湾への関心が高まる中、主要国外交をさらに強化する狙いがある。

 台湾の民主化以降の駐日代表は、総統の任期に合わせ1期4年で交代するのが一般的で、続投は異例。謝氏は行政院長(首相)経験者で、2016年に日本に赴任して以降、47都道府県を回り、日本の政、官、財界との関係構築に尽力。安倍晋三首相は今年に入り、国会で2回にわたり台湾のWHO総会へのオブザーバー参加に支持を表明した。首相の支持表明は謝氏の水面下での努力によるものと高く評価され、「日台関係の最もいい時期に謝氏を変えるべきではない」との声が与党、民主進歩党内で高まっているという。

 謝氏の続投が決まれば、日本が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟に向け、日本側に強く働きかけるとみられる。ただ、謝氏は「次世代の対日外交の人材を育てなければならない」と蔡氏に強調したといい、続投しても途中で若手と交代する可能性もあるという。

 一方、次期駐米代表に最有力となった蕭氏は、就任が決まれば台湾初の女性駐米代表となる。台湾人の父親と米国人の母親を持ち、英語が堪能。若い時から民進党内で対米外交担当のスタッフを務め、米国内に豊富な人脈がある。これまで立法委員(国会議員)を4期務めた。今年1月の選挙にも出馬したが落選し、4月に「国家安全会議」の諮問委員に就任した。蔡氏の親友としても知られる。

 トランプ大統領は就任直前の16年12月に蔡氏と電話協議を行った。米トランプ政権は近年、台湾を重視する姿勢を明確にしており、台湾側としては今後、蔡氏とトランプ氏の間で一層、緊密な関係を築きたい考えだ。台湾当局の関係者によれば、蔡氏は2期目の任期中に現職の米大統領との直接会談を実現することを目標にしているという。自らの親友を米国に派遣し、パイプ役になってもらいたいとの期待があるという。

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