馬政権と与党間外交を−離任する台湾駐日代表 許世楷氏

昨日の本誌で、明日7月10日に離任される許世楷代表は、午前11時30分に駐日代表処
を出発し、午後2時15分発、中華航空CI−017便にて帰国の予定で、明日は午後12時〜
13時30分に、成田国際空港第2ターミナル4階A3貴賓室で、各界の方々との送別を予
定していることをお伝えした。

 一方、昨日の産経新聞に最後のインタビューとなる記事が掲載されましたのでご紹介
したい。

 許代表は、国交のない台湾との交流継続について与党間外交の必要性を説き、次期台
湾駐日代表には「台湾の外交問題をいつでも日本側に的確に説明できるチャンネル作り」
を求めるなど、自らの体験に基づく見解を表明。

 また、馬英九政権の中国への急接近に警鐘を鳴らし、「中国とは異なる民主化と自由
化という価値観は、国際社会で生き残るための台湾の大きな資源だ」と、台湾でも安倍
政権が唱えた価値観外交を重視しつつ、民主化を促進することの重要性を訴えている。

 大使経験者でなければ提示できない大事なポイントだろう。

 お時間のある方は明日11時30分に白金の台湾駐日代表処、あるいは成田でお見送りで
きますので、ぜひお出掛け下さい。                  (編集部)


馬政権と与党間外交を−離任する台湾駐日代表 許世楷氏
【7月8日 産経新聞】

 任期を終えて10日に離日する台北駐日経済文化代表処の許世楷代表(台湾の駐日大使
に相当)は7日、産経新聞のインタビューに応じ、「国交なき日本ながら多くの人の協力
で(台湾人への査証=ビザ=免除など)実現できた外交成果が多く、悔いはない」と述
べ、関係者に謝意を表した。

 6月に尖閣諸島沖で日本の巡視船と接触した台湾の遊漁船が沈没、台湾側が強く反発
した事件については「台湾と日本は“兄弟げんか”しても社会的価値観を共有しており、
国交を結ぶ以上の間柄に発展できる」と強調。日台双方に継続して理性的な対応を取る
よう求めた。

 尖閣沖の事故で、劉兆玄行政院長(首相)が「(日本との)開戦の可能性も排除しな
い」と発言するなど台湾は反発を強めた。しかし許氏は、「日本側が謝罪して70〜80%
解決した。敵国でなければ100%を求めずとも良しとしなければ。夫婦関係と同じ。戦
争を避けることこそが外交」と述べ、婉曲(えんきょく)な表現ながらも、開戦まで言
及した発言を戒めた。

 また、馬英九政権時代の日台関係では、「自由民主党の幹事長が党務として訪台し、
(馬英九政権を支える)中国国民党と直接意見交換する与党間の外交があれば、日台関
係の安定化にプラスだ」と話した。台湾と中国の交流窓口機関が9年ぶりに対話再開に
こぎ着け、台湾が対中関係改善に動いているが、「対中関係に限らず、台湾の外交問題
をいつでも日本側に的確に説明できるチャンネル作り」が必要という。

 また許氏は、「民主化には進展と後退がある。選挙があり言論の自由が保障される今
日の台湾に失望していない。40年前の台湾ならすぐ銃殺だ」と強調。「経済発展も大事
だが、中国とは異なる民主化と自由化という価値観は、国際社会で生き残るための台湾
の大きな資源だ」と述べて、対中急接近に警戒感を示すとともに、台湾のさらなる民主
化進展の重要性も訴えた。

 後任の駐日代表人事については、「ここ1、2週間で決まる気配はない。長期的に(代
表職が)務まる人物を馬総統は慎重に考えているのだろう」と話した。

 許氏は、「帰国後は一市民として、(台北ではなく出身地の)台中や彰化で地域のさ
らなる民主化促進に貢献したい」と話した。(河崎真澄)

                     ◇

許世楷(コー・セカイ)台湾大卒業後、東大大学院で法学博士。津田塾大教授。日本で
の台湾独立運動で国民党政権にパスポートを没収されブラックリスト入り。その後、李
登輝総統時代の民主化で1992年に帰台。台湾憲政研究センター委員長などを経て2004年
7月に現職。74歳。台湾彰化市生まれ。



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