東京オリンピックで8月1日現在、日本が金メダル17個、銀が5個、銅が9個の大活躍の一方で、台湾もまた金が2個、銀が4個、銅が4個とオリンピック史上初のメダル獲得数に沸いている。
読売新聞は「バドミントン男子ダブルスで7月31日、台湾ペアが中国ペアを破り、台湾にバドミントンで初の五輪金メダルをもたらした。 蔡英文総統は自身のフェイスブックに『我慢できずに東京に電話をかけた』と記し、歴史的勝利を自ら祝福したことを明かした」と報じている。
香港でも、フェンシング・男子フルーレ個人で7月26日に張家朗選手が香港代表として初の金メダルをとると、香港中心部のショッピングモールには大歓声が沸き起こり「直後の表彰式で中国国歌が演奏されると、歓声は一転してブーイングに変わり、『私たちは香港人だ』のかけ声が響いた」(産経新聞)という。
しかし、香港警察は4日後に「ショッピングモールで率先してブーイングを始めたとする40歳の男性を中国国歌を侮辱した疑いで逮捕した」(産経新聞)そうだ。
台湾と国交を有する南米のパラグアイは7月31日、「中国の国有製薬大手「中国医薬集団」(シノファーム)の新型コロナウイルスワクチンを生産するアラブ首長国連邦(UAE)の企業から、供給契約を打ち切られたと発表した。パラグアイは台湾と外交関係を持つため、中国当局の圧力である可能性が指摘されている」(読売新聞)という事態も起こっている。
オリンピックやコロナ禍でも、台湾や台湾の国交国、香港に圧力をかけ続けているのが中国だが、中国が圧力をかければかけるほど台湾でも香港でも反発は強い。台湾人意識や香港人意識を高める傾向にあるようだ。
—————————————————————————————–香港・台湾に中国圧力の影 中国国歌にブーイング 開会式の「台湾」大反響【産経新聞:2021年8月2日】
【台北=矢板明夫】東京五輪で香港や台湾の選手が金メダルを含む複数のメダルを獲得する活躍をみせている。フェンシング・男子フルーレ個人の張家朗選手は1997年の中国返還後、香港に初めての金メダルをもたらした。台湾もバドミントン男子ダブルス決勝で中国人選手ペアを下して金メダルに輝いた。試合そのものに中国の「圧力」は及ばなかった形だが、勝利への反応や行事には中国の圧力が影を落としている。
香港メディアによると、張選手が勝利した瞬間、試合を大型テレビで生中継していた香港中心部のショッピングモールには大歓声が沸き起こった。しかし、表彰式で香港の旗が掲げられる際に、中国国歌が演奏されると、歓声は一転してブーイングに変わり、「私たちは香港人だ」のかけ声が響いた。香港警察は表彰式から4日後の7月30日、40歳の男性を中国国歌を侮辱した疑いで逮捕した。
昨年、香港国家安全維持法(国安法)が施行されたことから前回の五輪開催時と比べて、中国に不満をもち「香港は中国と違う」と主張する香港人が急増。ブーイングはそうした感情の発露だった。
一方、バドミントン男子ダブルス表彰式で一番高く掲揚されたのは、台湾の旗「青天白日満地紅旗」ではなく、台湾のオリンピック委員会の旗。演奏されたのも一般の台湾人にはなじみがない「国旗歌」だった。
「台湾は中国の一部」と主張する中国が国際社会で影響力を拡大した1970年代以降、台湾は国際大会に正式な国号とする「中華民国」で参加できなくなった。中国は同時に「台湾独立」勢力の台頭を阻止するため、「台湾」の名前での参加も認めていない。台湾は中国や国際五輪委員会(IOC)などと交渉を重ねた結果、84年のロサンゼルス五輪から「チャイニーズ・タイペイ」という名称で五輪に参加するようになったが、「いつか台湾の名称で五輪参加を」というのが、台湾人の悲願だ。
こうした中、開会式の中継で、「チャイニーズ・タイペイ」チームが入場した際、NHKのアナウンサーが「台湾です」と紹介したことは「“自分の名前”呼んでもらえた」など大きな反響を呼んだ。
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