台湾の泉裕泰・日本台湾交流協会台北事務所代表(駐台湾大使に相当)は11月6日に離任する。後任は、前ペルー大使の片山和之氏。
離任間際は忙しい。10月30日には蔡英文総統から国家や社会に優れた貢献をした外国人などに贈られる「大綬景星勲章」の授与式に出席。翌11月1日は、陳菊・監察院長や游錫●・立法院長、鄭文燦・行政院副院長、蘇嘉全・台湾日本関係協会会長をはじめ、日台の関係者約250名が出席して離任レセプションが行われた。(●=方方の下に土)
その合間を縫って、中央通信社の単独インタビューに応じた泉代表は「最大の心残りは、李登輝元総統との対面を実現できなかったこと」で、「悔やまれるもう一つのことは、安倍晋三元首相の急逝」だと答えている。
本誌10月28日号で、昨年7月31日、李登輝基金会主催の学術フォーラムにて行った泉大使の烈烈たる基調講演の講演録全文を紹介したが、「台湾のことを思う若者を育てる種をまいた李元総統の偉大さ」とは「李登輝元総統が、その政治人生をかけて力を注いだ『台湾アイデンティティ』の強化」と喝破した。同感だ。
その李登輝元総統に会えなかったのが最大の心残りだという。
また、「最大の願いは環太平洋経済連携協定(TPP)への台湾の加入を手助けすること」で、それが日本の任務であり、台湾を励ますことになるという。
これまた同感するところで、台湾の国際的空間を広げ、中国の威圧を遠ざけるためには最大の励ましになる。微力ながら、本会も台湾のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加盟のために力を尽くしたい。
—————————————————————————————–泉駐台代表、最大の願いは「台湾のTPP加入を手助けすること」 離任を前に【中央通信社:2023年11月1日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202311010009
(台北中央社)日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会の泉裕泰台北事務所代表(大使に相当)は1日、離任を前に中央社の単独インタビューに応じた。日本が担うべき任務は「台湾を励まし、エールを送ること」だとの考えを示し、「最大の願いは環太平洋経済連携協定(TPP)への台湾の加入を手助けすること」だと述べた。
2019年11月に着任した泉氏は4年の任期を終え、今月6日に離任予定。台湾は退職前の最後の赴任地になるという。
在任中に新型コロナウイルス禍を経験した泉氏は、台湾の「マスク外交」が最も心に残っていると語る。台湾の人々は自分たちがまだマスクを並んで買わないといけない時であったにもかかわらず、日本にマスク200万枚を寄贈してくれたと振り返り、「感動した。これこそが人道主義に立った文明外交」だとたたえた。また、日本や各国が台湾にワクチンを寄贈したことにも触れ、これこそが蔡英文(さいえいぶん)総統の言う「善の循環」だとした上で「日本には台湾のような隣人がいて本当に良かったとしか言えない」と話した。
泉氏は、外交は華麗なショーでなく、実務的で生活に即したものだと語る。外交の最終的な目的は相手側の人々に自分たちの国を好きになってもらうことだとし、日本と台湾には正式な外交関係はないものの、良好な関係を守り、積極的に発展させていく必要があるとの立場を示した。
自民党の政治家の中には、台湾を応援することに使命感を抱いている人も多いという。台湾のTPP加入を支援することは「われわれの仕事。われわれがやらなければ、誰がやるのか」と訴えた。
最大の心残りは、李登輝(りとうき)元総統との対面を実現できなかったことだと明かす。悔やまれるもう一つのことは、安倍晋三元首相の急逝だという。泉氏は、李氏と安倍氏はこの世を去ったものの、両氏の精神はすでに日台の友好関係に多くの美しい花を咲かせたとし、これらの花は今後もずっと咲き誇っていくことだろうと期待を寄せた。
(黄雅詩/編集:名切千絵)
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