(前号からの続きです)
里帰り出産した妻と、生後2ヶ月の長男を台湾の自宅まで連れてきて、台湾・台北市内の東端エリアで子育てを始めました。
時には粉ミルクの品不足に泣き、時には哺乳室(ベビールーム)の少なさと設備に泣き、毎日が苦労の連続でした。ああ、日本で子育てをしていれば……
そんな気持ちが頭をよぎることもありましたが、それを吹き飛ばすかのような、台湾の人々の「優しさ」に触れ、私たち夫婦はそのことによって何度も救われました。
台湾は、老若男女すべての世代、「赤ちゃん」や「子ども」が大好きなお土地柄です。
これは、子どもたちを社会全体で一緒に育てていこうという習慣が根付いているからだそうで、台湾に生活していると、そのことを肌身で感じる経験がいくつもありました。
例えば以前、妻が妊婦だった時にも書きました通り、電車の中に妊婦(お腹が大きい人限定)、子ども連れの親、抱っこ紐で赤ちゃんを抱えた人が乗ってくると、100%の確率で席を譲られます。
はい、100%です。絶対に譲られます。たぬき寝入りする人もいなければ、無視する人もいません。
誰かしら譲ってくれますし、場合によっては立っている人が子連れの親に気付かず座っている人へ声をかけ、立たせることはいつも見られる光景です。もちろん、文句をいう人なんていませんでした。
そして、さらにすごいのは、子どもをあやす確率。これは男だろうと、女だろうと関係なく、さらにお年寄りだろうと大学生だろうと中学生だろうと関係なく、子どもをあやす(面白い顔をする)ことが多いです。
日本だと、男子学生が、電車やバスで見かけた赤ちゃんにベロベロバーをする確率は低いと思いますが、台湾ではこれがしょっちゅうありました。子どもに話しかけてくるおじさん、遠い席から子どもに変顔するお兄さん、泣き止まない息子をあやすおばさん、手を振ってくる若いお姉さん、台湾人の子ども好きは想像以上なんです!
だから、電車やバスの中で子どもが大声で泣き出しても、嫌な顔をする人はいません。みんなで必死にあやしてくれたり、あやさないまでも鳴き声が聞こえていないかのように普通にしている人ばかりです。
これはベビーカーの利用についても同様でした。MRTをしょっちゅう使っていた我々は、混んでいる時間帯に乗ったとき、乗客はスペースをすぐに空けてくれ、さらに親が座る用の席も譲ってくれました。これがほとんど毎回なんです。
山手線や埼京線のようなラッシュがないということもありますが、とはいえ、土日のMRT板南線は忠孝復興駅から帰る際、例え激混みでも席は譲ってもらえました。もちろん、謝謝(シェーシェ)というお礼の言葉は毎回忘れずに言いましたよ。
そんな子ども大好き台湾で、息子を生後2ヶ月から1歳3ヶ月まで育てましたが、とても助かりました……。
うちの息子に近い将来、お前は私たちと台湾の優しい人々によって育てられたんだよ、と言ってやりたいと思います。
だって、本当のことですから。この月齢を、台湾で育てることができて良かったなぁと今でも本気で思っています。
台湾の子育て体験は、他にも色々なエピソードがありました。それはまた次号以降で書きたいと思います!
(怒涛の台湾育児ライフは次号へつづく)