者による「2016年『南シナ海紛争とアジア太平洋地域の平和』」(2016年『南海爭議與亞太區域和
平』」)と題する国際シンポジウムを開催し、来賓として蔡英文総統が臨席。
日本からは前拓殖大学総長の渡辺利夫・本会会長が日中関係(第1部)、アメリカからはヴァン
ダービルト大学名誉教授のジェームス・E・ アワー氏が米中関係(第2部)、台湾からは董立文・
中央警察大学教授)、顔建發・健行科技大学教授)、蔡明彦・中興大学教授らが台湾と中国の関係
をテーマにそれぞれ基調講演し、同会副理事長の李明峻氏がホスト役をつとめた(第3部)。
また、同会名誉理事長の羅福全氏がホスト役で進めた第4部のシンポジウムでは、柯承亨・元国
防副大臣、林廷輝・遠景基金会副執行長、蔡明憲・元国防大臣が登壇するなど、そうそうたるメン
バーが集結したシンポジウムだったようだ。
陳重光・理事長の開会挨拶に引き続き、蔡英文総統が来賓挨拶を述べ、昨日の台湾国際放送はそ
の内容を下記のように伝えている。
<私は総統就任後、ただちに訪問団を率い、国交樹立国を訪問、新たな外交戦略を展開し、堅実な
外交、互恵関係を築いた。そして、こうした外遊を通じて、台湾の2300万の人々の民主、自由、人
権に対する堅持、強い思いを全世界の人々に伝えるとともに、その他の国家と実質的な関係を築い
た。
台湾の民主の成功はアジアの模範だ。そして、台湾海峡両岸の『現状維持』は台湾の人々の選択
であり、私個人の選択でない」と強調。今年5月の総統就任演説では、中国大陸に対し最大限の善
意を示した。>
渡辺会長は午前9時30分から始まった第1部で基調講演していて、許世楷・元台北駐日経済文化代
表処代表がホスト役をつとめたが、許大使はその前に、蔡英文総統に続いて基調講演し、蔡英文総
統の掲げる「現状維持」は台湾独立を意味するとし、中華民国は1949年にすでに滅んでおり、憲法
は台湾国民によって制定されなければならないなどと指摘したという。中央通信社が伝えているの
で、下記にご紹介したい。
渡辺会長は2012年に海上自衛隊で護衛艦隊司令官などを歴任した金田秀昭・岡崎研究所理事とと
もにパネリストとして招かれていて、2度目となる。基調講演の詳しい内容が分かり次第、本誌で
もご紹介したい。
ちなみに、この前年の2011年は下野していた安倍晋三・前総理が元総務大臣の菅義偉氏を伴って
招かれ、基調講演で現在展開しているアベノミクスとほぼ同じ内容を述べるとともに、この時点で
「日本と台湾はともに共通の価値観を持つ重要なパートナー」と述べていた。
中国大陸との現状維持、「台湾独立」を意味=元駐日代表
【中央通信社:2016年10月8日】
(台北 8日 中央社)陳水扁政権(2000〜08年)などで台北駐日経済文化代表処の代表(大使に
相当)を務めた許世楷氏は8日、台北市内で開かれた南シナ海問題とアジア太平洋地域の平和に関
する国際シンポジウムで講演し、蔡英文総統の対中国大陸政策などについて語った。
許氏は、蔡総統が対中国大陸政策で「現状維持」を掲げ、「一つの中国」の原則を前提とする
「92年コンセンサス」を受け入れないことは、台湾の人々の願いに沿うものだと称賛。これは「台
湾は中国の一部ではなく、併合しない」を意味するとした上で、論理的に推理することによって導
き出される答えは、「台湾独立」だとの考えを示した。
台湾独立運動の中心人物としても知られる許氏。この日の講演ではさらに、中華民国は1949年に
すでに滅んでおり、(陳政権が行った)台湾名義での国連加盟申請は事実に基づくものだと主張。
中華民国憲法についても、「台湾憲法ではなく、台湾にも適さない。憲法は台湾国民によって制定
されなければならない」とした。
シンポジウムには蔡総統もゲストとして登壇し、両岸(台湾と中国大陸)関係について、5月20
日に行われた自身の就任演説で「非常に大きな善意」を示したと強調。また、台湾側は圧力には屈
せず、かつての対立路線に逆戻りしようとも思っていないと語り、大陸側に改めて対話を呼びかけ
た。
就任演説で蔡総統は、両岸双方が92年コンセンサスを確認したとされる1992年の会談を、歴史的
事実として「尊重する」と述べたが、同コンセンサスや「一つの中国」については言及していな
い。
(呂欣ケイ/編集:杉野浩司)