親日台湾の窮状  三宅 教雄(本会常務理事・元海上保安大学校長)

【機関誌『日台共栄』4月号:台湾と私(30)】

 私は台湾に生まれ育ち、中学一年の時、終戦により日本に引揚げて今日に至っている。
従って、台湾は生まれ故郷であると同時に、少年時代の楽しい思い出も数多く詰まってい
るところなので、思い入れは人一倍強いように思う。それだけに先の東日本大震災で台湾
が200億円超の義捐金をいち早く贈ってくれたと聞いた時には、有り難くて涙の出る思いが
した。

 台湾の人々が親日的なのはなにも今に始まったことではないが、何故かくも好意的なの
だろう。それは中国大陸を追われて台湾に流入した中国人が横暴の限りを尽くしたお蔭
で、日本統治時代の方が余程良かったと思ったであろうことは想像に難くないが、加えて
李登輝総統時代(1988年〜2000年)に推進した民主化政策が大きく寄与していると思われ
る。

 中でも、中学の歴史教育が台湾の歴史を教えるのではなく中国の歴史であったのを、19
97年から『認識台湾(歴史編)』に改めたことが大きい。約3分の1に及ぶ日本統治時代の
記述は、客観的史実に基づいた事例を詳しく紹介しながら肯定的に説明しているため、日
本を見る目が変わったのである。

 それに引き比べ、我が国の台湾に対する認識は極めて低いと言わざるを得ない。老人は
ともかく、若い人達の間にはかつて日本の領土であったことすら知らない人がいると言う
から驚きである。過去50年に亘り領有してその発展に努めた歴史を学び、少しは認識を深
めて欲しいと思う。また、これから述べる事柄が台湾を知る上でいささかでもお役に立て
ば、望外の喜びである。

 1945年に大東亜戦争が終結すると、中華民国国民党軍は連合国の一員として台湾に進駐
し、日本軍の武装を解除するとともに占領統治を開始した。その後、国共内戦に敗れた中
華民国政府は台湾に逃れ、そのまま居座り統治を続けている。

 一方、1949年に建国した中華人民共和国は国連の場においても、中国を代表する唯一の
正統政府と認められ「一つの中国」政策を進める中で「台湾は中国の不可分の領土の一
部」と位置づけ、統一を迫っているのである。

 しかし、これは正しくない。台湾は過去一度も中華人民共和国の領土になったことはな
いのに、何をもって「不可分の領土の一部」と言えるのだろうか。それに、サンフランシ
スコ講和条約では「日本は台湾を放棄する」としているが、その帰属先には一切触れてい
ない。つまり「帰属先は未定」なのであり、勝手に自国の領土とは言えないはずである。

 だが、それでも中華人民共和国は台湾に独立に繫がるような動きがあると、武力行使を
仄めかして恫喝するから手に負えない。

 では、統一される道を選べばどうなるのか。中華人民共和国は喜ぶかもしれないが、民
主主義社会が共産主義社会に呑み込まれてうまく行く訳がないし、それに新疆ウイグル自
治区やチベット自治区の悲惨な現状を見せつけられているから、とても同意できる話では
ない。

 従って、台湾の住民は独立も望まなければ、統一も望まないとする現状維持派が圧倒的
に多い。ただ問題なのは、目覚しく経済発展する中華人民共和国に惹かれて、これ以上の
対中傾斜が進めば、知らぬ間に呑み込まれてしまう危険性なきにしもあらずで、この点大
いに危惧されるところである。

 我が国にとって台湾は、地政学的にも安全保障上も運命共同体である。

 声を大にして理不尽な情況下にある台湾の窮状を国際社会に訴え、独立国台湾の実現を
期待したいと私は思う。


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