この討論会は、1979年に制定されてから4月10日で40年を迎えた米国の「台湾関係法」をテーマに開かれた。
蔡英文総統は元国務副長官のリチャード・アーミテージ氏の挨拶に続いて講演、台湾関係法について「台湾で民主社会が育ち、地域が安定と平和を維持する基礎となってきた」と謝意を表しつつ、日台関係を重視する姿勢を強調するとともに、日本との協力を強化していく意向を表明した。
その映像を総統府が中国語の同時通訳を付して公開し、中国語と英語で講演の全文を紹介している。産経新聞の記事とともに下記に紹介したい。
◆総統府:總統與美國華府三智庫於CSIS舉行視訊會議【4月9日】 https://www.president.gov.tw/NEWS/24262
なお、公開された映像では講演後の質疑応答についても伝えているが、中央通信社がその質疑応答について、下記のように報じている。
<会合での演説終了後、出席者から、日本とはどのような協力・パートナー関係を築きたいかとの質問を受けた際に答えた。
蔡氏は台日米が3月下旬、共同で汚職防止に関する国際ワークショップを開いたことにも言及。今後も似たようなイベントの開催に期待を寄せた。また台湾がグローバルな課題に貢献できるよう、日米など近い理念を持つ国とのパートナー関係推進に意欲を示している。
「台湾関係法」にのっとり、台湾が危険にさらされた場合、その自己防衛に必要な力の確保に米が協力しなければならないことになっているが、米にはそれを実現する力があると思うか、との質問も受けた。
これに対し蔡氏は、中国の戦闘機が3月末台湾海峡の中間線を越え、台湾の南西の空域に侵入したことを取り上げ、両岸(台湾と中国)間の事実上の境界線である中間線を中国が無視していると指摘。これは直接選挙によって発足した台湾の政権が立ち向かうべき試練で、台湾はこれに抵抗しなければならないと訴えた。その方法として新型兵器の自国製造や台湾関係法に基づいた米からの武器購入を続ける方針を示した。>
—————————————————————————————–蔡英文台湾総統、日本との協力強化表明 米でビデオ講演【産経新聞:2019年4月10日】
【ワシントン=黒瀬悦成】台湾の蔡英文総統は9日、インターネット中継を通じて米ワシントンの政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)で講演した。日本との関係について、安倍政権とトランプ米政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、「経済のさらなる繁栄や清廉な統治、地域安全保障の共有などで一緒に取り組める大いなる可能性がある」と述べ、日本との協力を強化していく意向を表明した。
蔡氏は「日本との関係は非常に重要だ」と強調し、インド太平洋での台湾の役割強化に向け、米国に加え日本との関係を重視していく立場を打ち出した。
また、中国が世界保健機関(WHO)の最高意思決定機関である世界保健総会などの国際会合に台湾が参加するのを妨害している問題で「複数の日本政府高官が台湾の参加を認めるよう非常に力強く主張してくれた」とし、日本に「謝意」を表明した。
中国に関しては、台湾への軍事的圧力を強めて地域の平和と安定を脅かしていると指摘し、トランプ政権が最高指導レベルの意思として「台湾の安全は民主主義の防衛にとり死活的に重要だと明確に表明してくれるのを望む」とした。
蔡氏はまた、台湾経済が中国依存から脱却し、中国からの干渉を排除できるかは「台湾が自由で開かれた社会を維持できるかどうかに関わる問題だ」と訴え、米国との貿易協定の締結を改めて要望した。