正義」を挙げ、「同じ原則で、原住民問題に向き合う。この島にやってきた順番を忘れてはならな
い。新政権は謝罪の態度で原住民に関連する問題に向き合い、歴史観の再建、段階的な自治の推
進、言語と文化の復活、生活支援の強化に取り組む」と表明した。
原住民族の日の8月1日には政府を代表して原住民に謝罪し、今後、総統府内に「原住民族歴史的
正義および移行期の正義委員会」が設けられると伝えられた。
これだけでも十分驚かされたが、8月3日には総統府前で抗議を行うデモ隊の前に姿を現し、参加
者の声に耳を傾けたという報道にはさらに驚かされた。
通常ならセキュリティの面からしても、一国の元首がデモ隊の前に姿を現すことは考えにくい。
ましてや、デモ隊と話し、「今後の取り組みは原住民族基本法に基づき進めるが、必要があれば新
たな法律をつくると約束」した上に、「デモ隊から受け取った『歴史正義』と書かれた旗を総統府
のオフィスに飾り、その様子を写した写真を自身のフェイスブックに投稿」までしたという。
約束を違えずに実行しようとする蔡総統の誠実さが手に取るように伝わってくる。この蔡総統の
姿勢は、李登輝元総統が1990年3月、野百合学生運動の代表者約60人を総統府内に招き入れて話に
耳を傾け、万年議会の解散や国是会議の開催などを約束したことを思い出させる。中央通信社の記
事を紹介したい。
蔡総統、総統府前で先住民デモ隊と対話 今月中にも集落訪問へ
【中央通信社:2016月8月5日】
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201608050003.aspx
(台北 5日 中央社)原住民(先住民)族の日の1日に、原住民に対する不平等な扱いについて謝
罪した蔡英文総統は3日午後、総統府(台北市)前で抗議を行うデモ隊の前に姿を現し、参加者の
声に耳を傾けた。
デモ隊は同日午前に開いた記者会見で、1日の式典は心のこもった謝罪ではなく、原住民が統治
者に謁見する儀式にしか見えなかったと批判。原住民問題の解決などのために総統府に設置される
委員会の実行力にも疑問を呈した。
また、参加者の一部は、原住民の声を蔡総統に届けようと、約1カ月前に南部・屏東県の恒春を
出発。政府などに土地を収奪された各地の集落を徒歩で訪問し、総統府前に到着したという。
自身も原住民の血を引き、中華民国(台湾)の総統として初めて原住民に謝罪した蔡総統。デモ
の参加者で、5月の総統就任祝賀式にも出演した原住民歌手、巴奈・庫穂さんが涙ながらに「我々
はずっと騙されてきた」と訴えた際には、「私はあなたを騙していない」と返した。
さらに、蔡総統は「私にもう少し時間をください」「いつでも私に会いに来て」などと巴奈さん
に語りかけたほか、デモ隊に対しても、今後の取り組みは原住民族基本法に基づき進めるが、必要
があれば新たな法律をつくると約束した。
同日夜には、デモ隊から受け取った「歴史正義」と書かれた旗を総統府のオフィスに飾り、その
様子を写した写真を自身のフェイスブックに投稿。コメントで「ともに多様で平等な国をつくろ
う」と国民に呼びかけた。
国家安全会議の姚人多諮問委員によると、蔡総統は早ければ再来週にも原住民の集落を訪問し、
意見を聞くという。
(葉素萍/編集:杉野浩司)