苗栗県内の中学校が4月下旬、中国企業から「給食費の補助」という名目で60万台湾元(約210万円)の寄付を受けたという。しかし、鄭聚然という国民党県議が議会でこの寄付行為を庇い「統一工作など関係ない。(相手が中国であっても)金をくれる者を親と見なす」と発言したと報じている。
この発言を聞きつけた蔡英文総統は、5月31日のフェイスブックで「我不能認同(私は同意できない)」として、中国による統一工作の意図は非常に明確だと厳しく非難した。それを伝える中央通信社の記事を下記に紹介したい。
中国は、台湾統一工作として台湾人同士の離間と反目を目論んでいる。金銭買収もその一環だろう。国民党県議の発言や民進党と国民党の対立激化を誰がほくそ笑んでいるのかは、3歳の童子にも分かることだ。
その他にも、本誌で伝えたように、総統選の予備選を舞台に、民進党支持者の間で、蔡英文支持派と頼清徳支持派がSNSなどで誹謗中傷を繰り返すという事態が起こっている。SNSの投稿者が意図的に両陣営を反目させるような内容を投稿している可能性を否定できない。それにまんまと乗せられて相手方を中傷すれば、「思う壺」と嗤うのは、誰か。
学校側は中国企業に寄付金を返還したという。国民党県議の発言と学校側の対応のいずれが正しい選択だったのか。贅言は要すまい。
—————————————————————————————–蔡総統、親中発言の国民党県議を批判 「台湾の民主は買収できない」【中央通信社:2019年6月1日】
http://japan.cna.com.tw/news/achi/201906010002.aspx写真:苗栗県議会で発言する国民党の鄭聚然県議=資料写真
(台北 1日 中央社)北部・苗栗県の国民党県議が「統一工作など関係ない。(相手が中国であっても)金をくれる者を親と見なす」と発言したことが物議を醸している。蔡英文総統は5月31日、自身のフェイスブックに「賛同できない」とするコメントを投稿し、台湾の民主主義は決して金銭で買収できるものではないと強調した。
発端となったのは、同県内の中学校が4月下旬、中国企業から給食費の補助という名目で60万台湾元(約210万円)の寄付を受けたことだった。中国による統一工作の一環だと問題視され、学校側は寄付金を返還した。
国民党に所属する鄭聚然県議は、5月中旬の県議会でこの件に言及。統一工作かどうかよりも「生徒たちのためになればそれでいい」と自身の見解を述べるうちに問題発言に至った。蔡総統は投稿で、直接選挙で選ばれた議員の言葉であることに不満を表明した。
蔡総統はまた、中国の国政助言機関、全国政治協商会議の汪洋主席が5月10日、両岸(台湾と中国)のメディア関係者を集めて「平和的統一、一国二制度の実現のためにはメディアの努力が必要」と述べたことにも触れた。北京当局が台湾で統一工作を進めようとする意図は非常に明らかだと指摘した上で、これらに反対し、中華民国台湾の主権と尊厳を堅守する自身の立場は明確だとつづり、ともに台湾を守ろうと呼び掛けた。
(游凱翔/編集:塚越西穂)