海軍大学のトシ・ヨシハラ教授へのインタビュー記事が掲載された。
中国は「日本に対し軍事、非軍事の両面での威嚇や圧力を長期にかけ続ける消耗戦で日
本の尖閣堅持の意思や能力を減らしていくことが狙いだ」との指摘は正鵠を射ている。い
ささか遅れたが、重要な指摘なのでご紹介したい。
日本が取るべき対策は、中期的には集団的自衛権を行使できるようにすることであり、
短期的には台湾との漁業協定を早急に締結することだろう。隙あらば日米、日台を離間さ
せようとする中国の狙いを忘れてはならない。
中国の狙いは尖閣の主権、施政権 米有識者
【産経新聞:2012年10月24日】
【ワシントン=古森義久】中国の海洋戦略を専門に研究する米国海軍大学のトシ・ヨシ
ハラ教授は23日、産経新聞のインタビューに応じ、中国海軍の最近の東シナ海での大規模
な合同演習について「日本と米国の両方に圧力をかけ、やがては(沖縄県)尖閣諸島の日
本の主権や施政権を侵すことが意図だ」という見解を語った。
中国海軍が国家海洋局や農業省の監視船とともに19日に実施した合同演習の意図につい
てまず同教授は(1)過去20年、強化してきた軍事能力の成果を誇示して日米両国に圧力
をかける(2)公的監視船との合同の演習で軍事、非軍事両面での尖閣諸島奪取の決意を
とくに日本側に伝える(3)日本への圧力をとくに強くして米国からの離反を図り、日米
同盟の絆を弱くする(4)今回の演習に加わった非軍事の監視船の尖閣領海を含む近海へ
の頻繁な侵入への道を開き、日本の尖閣の主権や施政権を侵食していく−ことなどを指摘
した。
中国の軍事意図についてヨシハラ教授は「日本の海上自衛隊だけとの海戦でも中国軍は
ハード、ソフトの装備や、要員の質で劣るため、正面からの軍事攻撃は望んでいないだろ
う」と述べ、その一方、「日本に対し軍事、非軍事の両面での威嚇や圧力を長期にかけ続
ける消耗戦で日本の尖閣堅持の意思や能力を減らしていくことが狙いだ」と強調した。
同教授は米国政府の現在の対応について「日米安保条約が尖閣諸島にも適用されると言
明するだけでは有事の米軍の実際の支援について曖昧さがなお残り、中国側に誤算、日本
側に懸念を生む可能性もある」と述べ、中国が非軍事の監視船などで不意にかなり多数の
工作員を尖閣に上陸させ、日本の主権や施政権を大きく弱めた場合、米軍の軍事介入の確
実性も減るという危険をも指摘した。
ヨシハラ教授は尖閣諸島の戦略的重要性について「日中両国の領有権紛争、さらには石
油資源の紛争を超えて、尖閣の支配は中国の海軍力の太平洋やインド洋への拡大の拠点と
しての重大な戦略的な意味を持つ」とも強調した。
*
ヨシハラ教授は日系米人でジョージタウン大卒、タフツ大で博士号取得、アジア安全保
障や中国海洋戦略を専門とし、ランド研究所や米空軍大学の研究員を経て、現在は海軍大
学の教授兼「中国海洋研究所」研究員。