この記事では「台湾メディアは、警備に米海兵隊が派遣されると報じており、中国当局が事実上の在外公館への格上げだとして反発する可能性がある」とも伝えている。
実はAITの警備を海兵隊が担うことについては、すでに昨年2月、スティーブン・ヤング元AIT台北事務所長が明らかにしている。キン・モイ所長より3代前のスティーブン元所長は、米国のシンクタンク「Global Taiwan Institute(GTI)」が開催したトランプ大統領の対台湾政策に関するシンポジウムの席上、AITのビルには海兵隊が配備され、これは米国による台湾重視の具体的な象徴だと述べていた。
日本の台湾との窓口機関の「日本台湾交流協会」が民間機関であるように、米国もAITを民間機関としていたが、新庁舎を開くに当たって、米国の在外公館と同じく海兵隊がその警備の任を担当することにしたという。
海兵隊は議会の承認を受けずに大統領命令で出撃できることから、高い機動性を持つと言われている。
ちなみに、AIT台北事務所には2005年8月から現役の陸軍大佐が派遣されていて、軍服こそ着用していないものの、米台間の安全保障における密接な連絡を強化する役割を果たしている。
米国がAIT台北事務所に現役将校を派遣し、海兵隊による警備を決定したことは、安全保障問題における台湾の重要度が増している何よりの証左と言える。
キン・モイ所長が強調したように、海兵隊による警備はまさに事実上の在外公館への格上げに他ならず、「米台関係の重要な里程標」、すなわち米国が台湾との関係強化を象徴するマイルストーン(一里塚)であり、今後も米台関係を伸展させるという宣言でもある。AIT台北事務所には海兵隊が警備するばかりでなく、数百人規模で常駐するという情報もある。
米国の新在台湾事務所が6月に落成 警備に「海兵隊派遣」に中国反発も【産経新聞:2018年5月21日】
https://www.sankei.com/world/news/180521/wor1805210032-n1.html写真:21日、台北の米国在台協会(AIT)で、新庁舎の落成式典について発表する台北事務所の キン・モイ所長(田中靖人撮影)
【台北=田中靖人】米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)台北事務所のキン・モイ所長(駐台大使に相当)は21日、新庁舎の落成式を6月12日に行うと発表した。式典には蔡英文総統も出席する予定で、モイ氏は「米台関係の重要な里程標だ」と強調した。
台湾メディアは、警備に米海兵隊が派遣されると報じており、中国当局が事実上の在外公館への格上げだとして反発する可能性がある。モイ氏は「全ての海外施設には保安基準があり、AITも変わらない」と述べるにとどめた。
また、式典には高官の相互訪問を定めた台湾旅行法の成立を受け、米政府から誰が出席するかが注目されている。モイ氏は「台湾の良き友人」とだけ述べ、明言を避けた。
新庁舎は、AITが台北市北部に2009年から約2億5千万ドル(約280億円)をかけて建設していた。