米は中朝に原則貫け  櫻井 よしこ(ジャーナリスト)

【産経新聞「美しき勁き国へ」:2018年6月4日】

 シンガポールでのアジア安全保障会議で米中が激しく対立した。ジェームズ・マティス米国防長官は自由と開放性を特徴とする米国のインド太平洋戦略に、中国が真っ向から挑戦しているとして、南シナ海の軍事利用を非難した。

 中国はフィリピンなどから奪った人工島に対艦ミサイル、対地・対空ミサイル、電波妨害設備などを配備し、パラセル諸島のウッディー島には「轟6K」など複数の爆撃機を離着陸させた。南シナ海初の最新鋭爆撃機の演習は、恫喝(どうかつ)と強制に他ならないなどとしてマティス氏は環太平洋合同演習(リムパック)への中国人民解放軍の招待を取り消した理由とした。

 米国における対中観は厳しさを増している。昨年12月の「米国家安全保障戦略」、今年1月の「国家防衛戦略」、2月の「核態勢見直し」と続いた米政府の国防報告に一貫するのは、中国の脅威の強調だ。同時期に発表された米通商代表部(USTR)の年次報告書も同様で、米企業の最先端技術や知的財産の移転を強要する中国のWTO加盟を支持したのは間違いだったとまで書いた。

 習近平国家主席には第二次大戦後の国際秩序や国際法の解釈を中国式に変える「革命的意図」があると、米外交問題評議会アジア研究部長、エリザベス・エコノミー氏は警告する。米国を主軸とする自由・民主主義の勢力と、中国を主軸とする自由なき専制独裁政治勢力の間で価値観の闘いが始まっているのである。その中でトランプ政権は中国とのせめぎ合いの中にある。昨年12月の国防権限法(総額6920億ドル、約79兆円の国防予算)が一例だ。

 同法は当初、台湾支援として高雄など複数の港への米海軍の定期的寄港や、台湾の潜水艦建造や機雷を含む水中戦力開発への技術協力などを盛り込んでいた。中国の反対によって取り下げられたが、米台の戦略的協力関係の強化を想定した内容は残された。トランプ政権は台湾の潜水艦自主建造計画に米国製部品供給の商談も許可した。

 パラオへの1億2400万ドル(約136億円)の援助は同法で定められた。中国が想定する第2列島線上の重要戦略拠点がパラオで、中国は長年狙いを定めてきた。西アフリカのサントメ・プリンシペやパナマ、ドミニカ共和国などが次々に台湾と断交する中で、パラオが台湾との国交を守り続けているのは日米両国の援助が背景にある。

 台湾防衛の姿勢を強めるトランプ政権は3月、台湾旅行法を成立させて米台高官の相互訪問を可能にしたが、同法は米議会の対中警戒感の強さを反映して、なんと上院が全会一致で可決した。南シナ海では米海軍の航行の自由作戦も行われている。自由や民主主義という普遍的価値観や原則にのっとった戦略を取る限り、米国は揺るぎなさを示す。

 強い懸念がつきまとうのが北朝鮮外交だ。金正恩朝鮮労働党委員長が「朝鮮半島の非核化」と朝鮮戦争の「休戦協定の平和協定への変更」を並行協議しようとしているのは明らかだ。そのうえで北朝鮮は、前者がいかに複雑で時間がかかるかを強調したのであろう。マイク・ポンペオ米国務長官もドナルド・トランプ大統領も、6月3日時点で非核化のプロセスは長期化するとの見方を示している。つまり非核化実現の前に休戦協定が平和協定に変更される可能性があるということだ。

 国際協定の変更は不可逆で、北朝鮮の非核化の約束はいつでも可逆である。平和が達成されたという建前では、事実上の国連軍である在韓米軍は大幅な縮小もしくは撤退へと進まざるを得ない。そのとき、完全非核化が未達成ならば、トランプ外交は過去の事例と同じく、失敗に終わる可能性大である。

 日本にとっては安全保障上も拉致問題の解決上も現在よりずっと厳しい状況となる。在韓米軍の縮小のみならず、国連軍の名の下で協力しているオーストラリア軍、カナダ軍、英国軍の朝鮮半島、ひいては日本への関与も難しくなる。自衛隊が行っている東シナ海での監視活動にこれら3カ国の軍が参加しているが、それが可能なのは朝鮮国連軍と日本が地位協定を結んでいるからであり、休戦協定がなくなれば難しくなる。

 狡猾(こうかつ)で強気なこの種の交渉を北朝鮮が推進できるのは、中国が背後で支えているからだ。北朝鮮が中国のコントロールの範囲内にいる限り、現状がズルズルと続くことは、中国にとって不都合なことではない。現にトランプ氏が、中国との貿易交渉では北朝鮮問題を気にしていると告白したように、中国は北朝鮮問題を対米交渉に利用可能だ。

 だからこそ、トランプ氏は国防総省や通商代表部の報告書を貫く原則論に倣って、米国の掲げる価値観、原理原則の旗を降ろしてはならないのではないか。それは北朝鮮に対してはジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の路線を基本にし、中国にその大前提を明確に伝えるということだ。

 私たちは岐路に立っている。完全非核化を比較的短期間で達成し、拉致が解決されれば、日本は喜んで協力する。それまでは一切協力できないという原則をいかに守れるか。英知を結集して事に当たるべきときだ。にもかかわらず、立憲民主党など野党は小野寺五典防衛相や麻生太郎財務相の国際会議への出席に反対した。「モリカケ日報問題」だけを見ていて、この厳しい国際情勢に対応できると考えているのか。


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