白色テロ時代を描く台湾ミステリー映画「返校」が来年7月に日本公開

 よく知られているように、台湾では1949年5月20日から1987年7月15日まで、実に38年の長きに及ぶ戒厳令が敷かれ「白色テロ時代」と呼ばれている。

 未だに真相が明らかにされていない、中国国民党による住民弾圧だった。白色テロでは、14万人におよぶ人々が共産党スパイ「匪諜」の嫌疑をかけられて不当に逮捕されて投獄、4,000人以上が処刑されたという。「白色テロ」の白色とは、憲兵がかぶっていた白いヘルメットに由来する。

 戒厳令が解かれた後も、反政府運動などの思想犯や陰謀罪を処罰する「刑法百条」が残っていたため、当時の李登輝総統は刑法百条を改正して政治犯を釈放し、叛乱罪事件で係争中の事件も免訴した。8月1日には戒厳司令部ともいうべき警備総司令部を廃止し、ようやく人々は白色テロの恐怖から脱することができたと言われる。

 この白色テロ時代を描いた台湾映画「返校」は、台湾で2019年に公開され、同年の台湾映画で1位となる興行収入を上げたという。

 この映画が日本でも上映されることになった。来年7月、東京・TOHOシネマズシャンテほか全国公開されるそうだ。

 台湾の人々の記憶にいまだに棲み続ける「白色テロ」の恐怖。2017年7月に亡くなられた台湾歌壇代表の蔡焜燦氏は写真が苦手だった。写真は後々残るため、顔を特定されることが嫌だったからだという。これも「白色テロ」の嫌な体験からだとおっしゃっていた。

 日本では1947年の2・28事件のことはかなり知られるようになったが、白色テロ時代の台湾は知られているとは言い難い。なぜ李登輝元総統は台湾の民主化を進めたのか、恐らくこの映画で「解」の一端も描き出されているのではないかと思う。ぜひ観てみたい。

◆TOHOシネマズシャンテ日比谷(TEL: 050-6868-5068) https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/081/TNPI2000J01.do

—————————————————————————————–台湾の大ヒットゲームを映画化! “白色テロ時代”を描くダークミステリー「返校」21年7月公開【映画.com:2020年12月5日】https://eiga.com/news/20201205/10/

 2017年に発売された台湾のホラー・ゲームを映画化した「返校(原題)」が、2021年7月に公開されることが決定。エドワード・ヤン監督の傑作「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」でも描写された“白色テロ時代”を背景とするダークミステリーとなっている。

 台湾の大ヒットゲーム「返校 DETENTION」を映画化した本作は、台湾人が忘れてはならない40年にも及んだ負の歴史を正面から描き、第56回金馬奨で主要12部門にノミネート。最優秀新人監督賞を含む最多5部門受賞という快挙を成し遂げている。台湾では、1月に行われた台湾総統選挙にも影響を及ぼしたといわれるほど社会現象を巻き起こしている。日本では、20年10月に劇場公開が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で封切りが延期されていた。

 1962年、蒋介石率いる国民党の独裁政権下の台湾では、市民に相互監視と密告が強制されていた。翠華高校に通う女子高生のファン・レイシンが放課後の教室で眠りから目を覚ますと、何故か学校に誰もいなくなっていた。校内を一人さ迷うファンは、政府から禁じられた本を読む読書会メンバーで、秘かに彼女を慕う男子学生のウェイ・ジョンティンと出会い、協力して学校からの脱出を試みる。しかし、どうしても外に出ることができない。消えた同級生や先生を探す2人は、悪夢のような恐怖にさらされながら、学校で起こった政府による暴力的な迫害事件、その原因を作った密告者の哀しい真相に近づいていく。

 なお、本日12月5日から、映画で描かれている時代の30年後を舞台としたドラマ「返校 DETENTION」が、Netflixで全世界独占配信されている。

 「返校(原題)」は、21年7月から東京・TOHOシネマズシャンテほか全国公開。R15+指定。

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